高橋家をご存じだろうか
関東,いや全国でも長者番付けで常に上位を占める大富豪の一族である
大病院を営む高橋家は代々続く大金持ちなのだ
そんな高橋家には二人の子供がいた
涼介と啓介,大富豪の御曹司,ぼんぼんである
こんな二人は当然大富豪と皆様思うであろう
しかし世の中そんなに甘くはない
親が大富豪だからといって子供がそうだと限らないところが辛い現実である
そう,高橋家の家訓として「働かざるもの食うべからず」というものがあった
高橋家は質実剛健を旨としてきたので子供にも小遣いをやらないのが決まりなのだ
これはそんな一家に生まれた次男の愛と青春の物語である
「えへへっでへへっ可愛いよ−っ俺の拓海−」
次男の部屋でその主が身悶えている
彼の名前は高橋啓介
見た目は金髪に染めた頭をつんつんにおっ立てているこわもてのにいちゃんだ
しかし今はその面影もなくにへにへとベットにつっぷしながら髪だけでなく別のものも立てている
そう,懸命な読者の皆様ならばもうお分かりであろう
啓介は恋をしてしまったのだ
秋名の峠で彼は運命の恋人と出会ってしまった
恋人(予定)の名前は藤原拓海
秋名県立高校に通うぴちぴちの18歳だ
初めて会ったその日から恋の虜になりました
さて,ここで問題がある
高橋啓介と藤原拓海は両方とも男なのだ
だが新世紀,モラルなど無くなったに等しい昨今ではこんなことは大した問題ではない
もっと大きな問題はやはり啓介が貧乏だということであろう
デ−トをするにしても愛の言葉を囁くにしても金というのは重要なポイントとなってくる
別に高橋啓介が散財家という訳ではない
彼は人並みの生活をする大学生であったのだがたった一つ,とても金のかかる趣味を持っていた
車である
大体貧乏人がRX−7なんていうメンテナンスに金のかかる車を買うこと事態間違っている
これについては啓介もちょっと後悔しているのだ
車を買う時に憧れの兄が進めてくれたのがRX−7
啓介は迷わずアンフィニを買った
その時,啓介は知らなかったのだ
RX−7はハイオクが好物だということを
ハイオク,それは金持ちのガソリン
兄は幼い頃からこつこつ貯めた貯金でNTT株を買い,今では金持ちになっている
だからこそ燃費の悪いRX−7にハイオク満タンなどという荒技が出来るのだ
だが,貯金するよりおやつでお小遣いを使ってしまっていた啓介にハイオクはきつかった
ここはそれ,根性と土方のバイトでガソリン代を稼いでいる啓介
これまではそれでよかったのだ
だた,これからは違う
愛しい恋人(予定)の拓海に貧乏はさせられないし貧乏たらしいところも見せたくないのが男のプライド
車の維持費だけでかつかつだった啓介の財布は悲鳴をあげる
拓海を食事に誘いたくとも先立つ軍資金がないのでは話にならない
デ−トには一回最低でも一万はかかるだろう
まだ口説いていないので夢の段階だが将来はホテル代も馬鹿にならないだろうし,指輪も送りたい
二人で夢の軽井沢旅行も啓介の煩悩を刺激する
「あううう−っ貧乏が憎い」
しかしここでくじけては男がすたる
金がなくとも愛がある
そしてこの若い肉体と素晴らしいドラテクを持っている啓介はそれに比べるとはなはだ見劣りのする頭脳で計画を練るのであった
高橋啓介のプロジェクト
まずデ−トの場所は自宅にする
そうすれば金はかからないし高橋家のゴ−ジャスな雰囲気を堪能出来るだろう
そしてム−ドを作る
これには啓介も頭をひねった
女だったらクラシックでもかけながらワインを飲ませればいちころなのだがここでネックとなってくるのは拓海が男だということである
悩んだ末に名案を思いつく
男同士,エッチな雰囲気に持っていけばいいのだ
よくあるではないか
エッチなビデオを見ている間にいやらしい気分になってしまってお互い触りっこをしてしまったとか
(啓介は経験が無いが)
とにかくそういう雰囲気に持っていけばいいのだ
啓介は中学の時になけなしのお小遣いで買った中古のエッチビデオを取り出した
これにはずいぶんとお世話になったものだ
何度も再生を繰り返したのでところどころ画像は悪いがエッチな気分になるのに問題は無いだろう
酒も必殺アイテムである
貧乏な啓介は発泡酒をしこたま買い込んだ
(端麗,辛口)
こうして親と兄のいない週末,啓介は拓海を自宅に呼び出したのであった
「今日は涼介さんいないんですね,どうしたんですか」何も知らない初な拓海
啓介のシャイな心臓は爆発しそうだ
高橋家に呼び出された拓海はてっきりプロジェクトのミ−ティングだと思っていたので怪訝な顔をする
「ああ,大学の用事とかで出かけているぜ,そうだ,拓海,バトルのビデオがあるからそれ見ようぜ」
震える手を押さえながら啓介はビデオをセットした
拓海をリビングのソファに座らせると目の前に端麗を差し出した
「俺,車なんで酒はちょっと」
遠慮する拓海
しまった−,飲酒運転は御法度なのだ
「いいじゃんか,ちょっとだけだからさ」
そう言って強引に拓海に進める啓介の目は血走っている「あ,それじゃあちょっとだけ」
あまりの迫力に恐れをなした拓海は嫌々ながらも発泡酒を受け取った
(よしよし,作戦通りだぜ)
ちびちびと口を付ける拓海を横目で盗み見ながら啓介はほくそ笑んでビデオを再生した
「ああん,いやっもっとお−」
いきなり画面には女の裸体
真っ最中のシ−ンである
「啓介さん,ビデオ間違っていますよ」
妙に冷たい拓海の視線が啓介に突き刺さる
「あれ,変だなあ,間違っちまったか,まあ,いいじゃん,折角だからこれ見ようぜ」
何が折角だか全然わからん
「拓海,こういうの見たことあるか?後学のために見といた方がいいぜ」
後学とはもちろんこれから後の啓介とのエッチという意味である
鼻の穴を膨らませながら汗をにじませている啓介の態度に恐れをなしたのか拓海はそれ以上何もいわずにビデオを鑑賞することになってしまった
画面では男女が愛の営みの真っ最中
(なんで俺,こんなビデオ見ているんだろう)
これは拓海でなくとも誰もが思う疑問であろう
啓介を横目で見てみるとやけに興奮した様子
(啓介さんって変わっているかも)
今時の男子高校生はこのレベルのAVでは興奮しない
だってもっと無修正が出回っているんだもん
だが折角の好意で見せてくれている啓介に悪くて拓海は妙にしらけた気分でビデオを鑑賞していた
はあはあ
横の啓介の息遣いが気になってビデオに集中出来ない拓海である
そんな拓海の手に生暖かい物が触れてきた
もちろんそれは啓介の手
緊張のあまり汗をかきまくっている啓介の手がぎゅっと拓海の可憐な手を握り締める
「なあ,拓海,男同士で触りっこしたことあるか?」
何言っているんだ?と啓介の手を振りほどこうとするが馬鹿力で握り締められて解けない
「気持ちいいらしいぜ,なあ,試してみないか」
啓介としてはごく自然に,ナチュラルにそういう設定に持っていこうとしていれるのだが
「啓介さん,酔っ払ってますね」
たかだか発泡酒で酔うなんて啓介さんってお酒弱いんだなというのが拓海の率直な感想である
「なあ,後学のためにさ,いいだろ」
何がいいのか全然わからん
「なあ,拓海,ちょっとだけ,ちょっとだけだからさ」はあはあ,啓介の息が荒い
ビデオを見て興奮してしまったのか?
こういう人と俺はダブルエ−スなのかと思うとちょっと拓海は情けなかった
「冗談は止めてくださいよ,あっ啓介さんっやだってば」すごい馬鹿力でソファに押し倒される
ひえええ−っ拓海貞操の危機
「止めろってばっ止めろっこのぼけっ」
必死で抵抗する拓海だが啓介の腕力に抵抗を塞がれる
「なっどこ触っているんですかっ止めろって」
「ちょっとだけだからさ,なあ拓海,いいだろ」
ぜえはあぜえはあ
啓介が獲物を狙う獣の目をしている
(やばいっこの人いっちゃってる)
拓海は身の危険を感じた
啓介の汗ばんだ手が拓海の衣服を取り除いてくる
「涼介さんが帰ってきますよ,止めろって」
「助けを呼んでも無駄だ,誰も帰ってこねえよ」
いやらしい啓介の手が拓海の果実を握り締めた
「あっいやっあっ止めろ−」
「気持ちよくさせてやるぜ,拓海」
にぎにぎ,もみもみ
「あっああぁっいやぁ」
「感じているんだろう,拓海のここ,すげえ濡れているもんな.えへへ」
啓介のテクニックに翻弄される拓海
唐突に啓介の指が蕾をまさぐってきた
「やだあっ変態」
「ここさ,男でもすげえ感じるんだぜ」
経験したことがあるのか,ぼけえっという拓海のつっこみは置いておいて
「ひっああぁっ啓介さんっ」
ちゅぷちゅぷ,くちゅくちゅ
汗ばんだ指が拓海の蕾を蹂躙する
果実の先端から溢れ出した蜜を塗り込めるように啓介は指を動かした
「やあぁぁっそこっいやぁ」
啓介の指が一点を貫くと拓海の体が跳ね上がった
「いいんだな,ここがいいんだろっ」
執拗なまでにそこへの攻撃を繰り返す
「ああんっいやあっあんっあんっ」
悶える拓海に啓介は更なる愛撫をほどこした
こっそり兄貴の部屋からくすねてきたロ−ションで蕾をほぐしていく
「もうそろそろいいな」
荒い息が拓海に覆い被さってくる
ひいいい−っ
拓海の声にならない悲鳴が響いた
我武者羅に抵抗する拓海
「やだあ−っ変態だ−っ変態がいる−っ」
まさか啓介は自分のなにを拓海のあれになにしようというのか?
これはもう冗談の範囲を超えている
(とっくに超えているのだが)
「ちょっとだけっ先っちょだけだからさ」
先っちょだけっと繰り返し言いながら啓介は体を推し進めてくる ひえええ−っ先っちょだけでもいやじゃ−
だが拓海の抵抗もむなしく啓介は体を進めてきた
「あっいやだっああん」
「すげえっいいっ拓海っ最高」
ダイレクトに腰を動かす啓介
「うっもう限界」
プシュッ
熱いほとばしりが拓海の中を犯してくる
「あああ−っ」
拓海も蜜をまき散らしていた
合掌
こうして拓海のバ−ジンは啓介に食べられてしまったのであった
「こんの腐れ外道−っ」
意識を戻した拓海のパンチが啓介にヒットする
甘い余韻に浸っていた啓介はベットから転げ落ちた
「なっなんだよっ拓海」
恋人の思いもかけぬ反撃に啓介の目は点になる
「冗談にしても酷すぎる,,もう啓介さんとは絶交だからな」
まじで逆ギレしている拓海
「なっなんでだよっ今俺達愛しあったばかりじゃんか」「寝言は寝ていえばかやろ−っ」
拓海必殺の膝げり
啓介はもんどりうって倒れた
何かが変だ
啓介の計画ではエッチッチな関係になって体を許した拓海は心も許しちゃってフォ−リンラブな筈だ
だが現実は厳しい
「拓海−っなんでだよ−っ愛しているのに−っ」
啓介の悲痛な叫び
「なっ何言っているんだ,そんなこと言ってもごまかされないぞっ」
啓介の言葉に拓海は動揺する
今だっとばかりに啓介が猛攻をしかけた
「愛しているんだっ拓海,俺のマイスイ−トハ−ト」
涙ながらに啓介は愛の告白をする
「初めて会った時からずっと好きだったんだ,愛しているんだ,結婚してくれ−っ」
それはちょっと無理なんじゃないのか
だああっと拓海は脱力した
バ−ジンを奪われて,冗談かと怒ってみたらどうやら啓介は本気らしい
こんな奴とダブルエ−ス
とほほの拓海である
だがもっととほほなのはこんな奴に実は惚れてしまっているということだ
啓介が峠で拓海にフォ−リンラブしたのと同じように拓海も啓介に一目惚れだったのだ
割れ鍋に閉じ蓋
あんな酷いことをされてもなんか憎めないのが悔しい
「拓海も感じたよな,なあ,よかっただろ,ちゃんといったもんな,なあ,あれって俺のこと好きだから感じたんだよな」
必死の形相で口説いてくる啓介がなんか可愛くて笑ってしまう
そんな感情を啓介には読み取らせないように苦労しながら拓海は怒った顔で啓介に宣言した
「責任とってくださいね」
もちろん啓介に異論はない
[男の責任]
「よう,にいちゃん,せいがでるねえ」
知り合いの監督に声をかけられて啓介は笑って答える
「そりゃあもう,愛に金はつきものですから」
監督は意外そうな顔をした
この青年はいつもガソリン代のためにここに来ていたのだが,今回はどうやら違うらしい
「おっにいちゃん,女が出来たのかい,やるねえ」
「へへへ,金貯めて指輪かってやるんですよ,それが男の甲斐性ってもんっすからね」
「おうっがんばれよ」
監督との会話の最中にも啓介はつるはしを休めない
そう,懸命な読者の皆様はもうお分かりであろう
啓介は男の責任をとるためにバイトをしていたのだ
短期間集中で大金が手に入るのは土方のバイトである
「拓海のためならえ−んやこ−ら」
こうして週末,啓介は工事現場のバイトにせいを出す
「いいねえ,にいちゃん,女が出来ると張り合いが違うよな」
顔見知りの土方親父も啓介を応援してくれる
「指輪おくってやるんだってよ,ラブラブだな」
「指輪は給料の三カ月分でなきゃあ,いかんぞ,女はそういうところが目敏いからな,安物はいかん」
「安物送って振られた奴もいるから気をつけろ,やはり世の中金だぞ」
げげげっ啓介はみんなの会話にびびってしまう
給料の三カ月分だとっそれはきつい
ただでさえ週末のこの土方で拓海と会えないのだ
三カ月も週末に会えなかったら拓海との愛が冷めてしまうかもしれない
「いいや,世の中金だ,指輪はダイヤモンドでないと女は怒るぞ」
一人の実感のこもった言いように皆が頷いた
「だがいいこともある,こうして給料三カ月分の指輪なんか送られてみろ,女はめろめろじゃ」
「めろめろ?」啓介が問いかけると土方親父はにやりと笑った
「そうだ,男の甲斐性に女はめろめろになっちまう,それが証拠に今までしてくれなかったことも
指輪を送ったらしてくれるようになったりすることもある,まあ正式にスティディな仲になったっちゅうことだな」
「してくれなかったこと?」
土方親父は声を潜めて教えてくれた
「例えば口でしてくれたり」
うひゃうひゃと笑う親父達
土方は下ネタ大好きであった
「俺はっ俺はやるっ給料三カ月分,拓海の指輪に注ぎ込んで男の責任を果たしてみせるぜ」
うおおおお−っシャベルをもって興奮する啓介
「おうっにいちゃん,応援しているぜ」
「結果は教えろよ」
こうして啓介はすっかり土方になじんでいくのであった
「最近の啓介さんってかっこいいよな」
ほうっとため息をつくのはレッドサンズの中村ケンタ
強烈な啓介マニアである
今日はプロジェクトDのミ−ティング,赤城の峠は大賑わいだ
回りの啓介おっかけギャルもうっとりと啓介を見つめている
近頃,啓介は変わった
前の子供っぽさが抜け落ちてめきめきと男らしさが増していく
こんがりと焼けた肌(土方焼け)
盛り上がった筋肉
胸元もゴ−ルドチェ−ン(パチモン)
啓介からは男臭いフェロモンが放出されている
「きゃ−っ啓介−,素敵−」
「啓介−こっちを向いて−」
そんなおっかけににやりと笑う啓介は男の余裕に満ちている
土方のバイトで日に日に溜まる貯金額が彼に余裕をもたせていた
(この金で拓海とスティディな関係に,そして拓海の可憐なお口で,でへへ)
そんな啓介を遠くからじっと見ている人物がいた
「啓介さん,ちょっと話あるんですけど」
拓海に呼び止められて啓介はうっと鼻血を噴き出しそうになった
ずっと土方のバイトでご無沙汰だったのだ
拓海を見ているだけで海面帯が充血してくる
「おっおうっなんだ」
しかしここは男の余裕を見せるべく,啓介は普通の態度を装いながら拓海と人気の無いところへと向かった
「話ってなんだよ」
拓海っと言い終える前に鳩尾にばきっとものすごい衝撃が走った
「げっげふっ」
もんどりうって倒れる啓介に拓海が冷たく宣言する
「遊びならもう少しスマ−トにやるんだな,見損ないました 啓介さん」
拓海は無茶苦茶怒っているが啓介にはその意味がわからない
「遊びって?」
「俺とのことは遊びだったんでしょう,だから週末忙しいとかいって逃げ回っているし,最近啓介さんが変わったのは他に女が出来たからだってみんな言っているんですよ」
「ごっ誤解だっ拓海」
何か拓海は大きな誤解をしている,
しかしこれには誤解される方も問題があるのだが
「俺は拓海に給料三カ月分の指輪を送って完璧にスティディな関係になってお口でしてもらおうと,ううう−っ別れるなんて言わないでくれ−」
断固別れる決意の拓海を必死でなだめる啓介
そんな馬鹿な,拓海のために土方していたのに指輪を送る前に捨てられてはたまったものではない
「あううう−っ誤解なんだ−ったくみ−ったくみ−っ愛しているんだ−」
必死になって拓海に説明をする啓介
拓海は大きく脱力してしまった
あれから啓介は全然連絡をくれないし,どんどんかっこよくなっていくしでこれは完全に遊ばれていたんだと拓海は落ち込んでいたのだ
それがこの啓介の態度で浮上してくる
(まったく啓介さんはおばかなんだから)
拓海は男なんだから指輪なんて安物でいいのだ
それよりも大切なのは恋人に寂しい思いをさせないことである
だって啓介と拓海はいわば新婚さん,普通ならばいちゃいちゃラブラブの時期にほっておかれた罪は大きい
「なあ,別れるなんて言わないでくれよ−っ拓海−っアイラブユ−」
そんな啓介に拓海はにっこり笑って一言
「旅行に連れてってくれるなら今回のことは許してあげます」
旅行にいって二人で新婚をやり直しするのだ
しかし旅行にいくには金がかかる
「やっぱり世の中金なのか−」
貧乏啓介の悲鳴が赤城の峠に児玉した
ごめん,所詮うちはこの程度