藤原拓海は渋川に住む18歳の男子高校生である、
それがひょんな事から走り屋の世界に巻き込まれ、天下赤城の白い彗星とバトルをしてついでに告白もされて二人は恋人同士となったのであった。
これはそんなバカップルの日常風景である。
昨晩、拓海と涼介は愛の一夜を過ごした。
それはとてもとても濃厚な一夜であった。
あまりの濃さに拓海は三回程気を失った。
まあそれは前回の話,今回は一夜開けたカップルの愛の夜明け
,一緒にコ−ヒ−を飲んでいるところから話は始まる、
朝,目が覚めて拓海は愕然とした。
まるで自分の身体では無いようである,
ぎしぎしときしむ肋骨
ばりばりと鳴っている急性肩凝り
そしてじんじんと痛む肛門
それが昨日の記憶をフルに思い出させてくれる。
カアアアアッ
恥ずかしくなって拓海は毛布に潜り込んだ。
「俺,涼介さんとあんな事やこんな事やっちゃったんだ」
ついでにそんな事や変な事をされてしまって・・・
「・・・あれって変態っぽい」
初な拓海は頭を捻ってしまう。
「でも,涼介さんが変態の訳ないし」
拓海は涼介を尊敬していたのであえてその疑惑には目をつぶった。
「セックスってあんな恥ずかしい事をしなくてはいけないんだ」
拓海は毛布の中で真赤になった。
エッチしちゃったということはこれで名実共にもう涼介と拓海は恋人同士。
拓海は涼介の物で涼介は拓海の物。
「あああ,それも恥ずかしい」
毛布の中でいやんっと恥ずかしがる藤原拓海18歳。
そんな時,絶妙のタイミングで涼介が入ってきた。
そして毛布に包まっている拓海を見てくすりと笑って上から抱きしめてきた。
「おはよう,拓海,朝ご飯の時間だよ」
涼介の甘く優しい子安声が拓海の耳元で囁かれる。
拓海はそこが弱いことを知っていてわざとやっているのだ。
涼介さんの意地悪。
「お姫さま,早くしないとコ−ヒ−が冷めてしまうよ」
涼介はそう言うと拓海を毛布ごと抱え上げた。
「わっ涼介さんっやだっ俺歩けます」
いくら拓海が華奢で可愛くて小さいにしても18歳の男子高校生,これは結構恥ずかしい。
「昨日あれだけ愛しあったのだから歩ける筈ないだろう」 涼介はきっぱりと断言する。
「それに拓海は初めてだったんだからね」
カアアアっと恥ずかしくなって拓海はそのまま涼介の胸に顔を埋めた。
涼介の用意した朝食。
それはヨ−ロッパの高級ホテルばりのすばらしい物である。
カリカリベ−コンにポ−チドエッグ
何種類かのハムとパテとチ−ズ
ヨ−グルトと新鮮なフル−ツ
そしてクロワッサンやらフランスパンやら
トマトジュ−スとオレンジジュ−スとミルクとコ−ヒ−がどれを選んでもいいように揃えられている。
(すいません,筆者の想像力はこの程度)
「すごいです,涼介さん,外国みたい」
感嘆のため息を漏らす拓海。
高橋家所有,八甲田山麓の別荘のバルコニ−で涼介さんと食べるブレックファ−スト
ああ,なんて贅沢なんだろう。
涼介は拓海のためにコ−ヒ−を入れてくれたりパンをとってあげたりといたせりつくせり。
なんてジェントルマンな涼介。
今,この瞬間,拓海はとっても幸せであった。
なごやかな朝食が終わり食後のコ−ヒ−タイム
涼介は拓海と語り合う。
「拓海と俺は昨日の夜結ばれた。という事は二人はもう恋人同士,いや,もう夫婦同然の仲になったのだよ」
真剣な涼介の口調に拓海はこくこくと頷く。
「夫婦といえば一心同体,二人の心は一つ,身体も夜は一つに合体する訳だ」
そんな,涼介さんたら露骨で恥ずかしい,いやん
「だから,拓海には心してもらいたいことがある」
涼介は真剣であった。
どきどき,拓海の心臓は跳ね上がる。
「俺達の間で隠し事や嘘は無しだ。どんな事でも拓海は全て俺に相談してもらいたいんだ」
ああ,なんて懐の広い高橋涼介。
きゅるるんっ拓海の初なハ−トは高鳴ってまた涼うけに惚れ直してしまう。
「分かりました,でも涼介さんも辛い時や苦しい時,俺に相談してください」
俺達は恋人同士なんですから
健気にそう言う拓海が愛しい。
「拓海,愛している」
「涼介さん,俺も」
甘く穏やかな新婚さんの空気が二人を包んだ。
「ああ,俺は今猛烈に幸せだよ,だが一つ残念な事があるとしたら俺は拓海の過去を知らないということだ」
「涼介さん?」
涼介は寂しげにふっと微笑んだ。
「心の狭い男だと笑ってくれ,俺は拓海を18歳,あの運命の秋名峠での出会い以降しか知らない」
「そんな,俺だって涼介さんの昔の事知らないの,悔しいです」
「小さい頃,拓海がどういう子供だったのか,何を考えどういう風に成長したのか知らないというだけで俺はこんなにも動揺してしまう」
「俺もです,でも,でも」
「拓海?」
拓海は恥ずかしそうに俯いた。
「涼介さんはすごくかっこよくて頭が良くて優しいからモテるんだろうなって思うと,モテモテの涼介さんの過去を知ってしまうと俺は嫉妬しちゃいそうです」
でれええええ−んっと涼介の鼻の下が伸びてしまう。「でも,知らなくても嫉妬しちゃうんです,馬鹿ですね,俺って」
でれえええん,目尻も下がってにやけ顔になってしまう涼介。
「愛しているよ,拓海」
「涼介さん,俺も」
べたべた甘い愛のバルコニ−,コ−ヒ−タイムである。
涼介と拓海はその日,一日かけて小さい頃の思い出を話そうと決めた。
二人が出会うまでの事をお互いに語り合って愛を深めるのだ。
だって二人は新婚さん。
隠し事は無しだしお互いに一番分かりあえる伴侶でなければいけないのだから。
愛の語らい,人はこれのことを暴露話とも言う。
「じゃあ,拓海,始めにずっと聞きたかった事を質問してもいいかな」
涼介の問いかけに拓海は胸をはって答えた。
「なんでも質問してください,涼介さん」
「拓海の初めてのエッチはいつの時のことだったの?」 はい?拓海はその質問に固まってしまった。
かああああっと顔が真赤になる拓海,可愛い。
「もうっ涼介さんったら知っているくせに,意地悪」
そうなのだ。
拓海が童貞であったということは昨日しっかりはっきりくっきりと涼介に知られてしまっているのである。
というか確認された。
「ああ,昨日が他人との性行為が初めてだということは分かっているよ,だが俺は拓海の全てが知りたいんだ」 こんな心の狭い男は嫌になっただろう。
涼介が苦悩の表情を見せる。
「そんな,俺は涼介さんが大好きです,涼介さんが俺の事全部知りたいって思ってくれるのが幸せなんです」
「拓海,愛しているよ」
「涼介さん,俺も」
二人は見つめあった。
「それでいつだったんだい?」
「だから昨日が初めてですって」
「いや,聞きたいポイントはそこでは無くて」
涼介はきっぱりはっきり言い切った。
拓海の初めて射精した時はいつ?
どういうシチュエ−ションで?
何に興奮したの?
「後学のために知っておきたいんだ」
涼介はそう説明したが拓海には何の後学のためなのかよく分からなかった。
でもそれは拓海にとってとても恥ずかしい思い出。
人生の思い出したくない記憶ナンバ−1。
「約束しただろう,拓海」
涼介が真剣な顔で聞いてくる。
「興味本位で聞いているんじゃないんだ」
そう言う涼介の小鼻は期待に膨らんでいた。
「俺が小学校4年の時」
それは拓海が10歳のことであった。
拓海は豆腐屋の居間でお昼ご飯を食べていた。
夏だから拓海は半ズボンである。
いや,子供は年中半ズボンなのだが。
とにかく,拓海は一人でご飯を食べていたのだ。
親父は配達に出かけている。
配達という名のマ−ジャンであるからして,当然帰りは夕方になるだろう。
仕方ないなあ,親父の奴。
拓海もそういうのは慣れたもので食パンにオレンジマ−マレ−ドをぬりぬりしてぱくぱく食べていた。
子供だから当然ミルク
それにハムと胡瓜も付けて立派なご飯が出来上がり。 ワンワン
その時である,
藤原豆腐店の小さな,猫の額ほどの庭にお客様がやって来たのだ。
「あっコロだぁ」
それは近所の米屋の飼犬,コロであった。
コロと拓海は大の仲良し。
いつも親父がいるときは家の中に犬をいれてはいけないのだが今日は親父はいなかった。
「コロっハム食べる?」
ぴらぴらとハムを見せるとコロはワンっといって居間に上がってきた。
ワンワン(拓海ちゃん大好き)
コロは嬉しそうにハムをご馳走になる。
拓海も食パンを食べ始めた。
その時である。
わんわん
コロが急にじゃれついてきて拓海は食パンを落としてしまったのだ。
半ズボンの前にべしゃっと落としてしまった食パンは見るも無惨なありさま。
「こらっ俺のご飯どうしてくれるんだよ」
ぷんぷん怒る拓海であるがコロにはそんなことは通じない。
それよりも目の前に大好きなマ−マレ−ドがある,コロにはそれの方が重要であった。
べろんっ
急にコロが拓海の洋服にべしゃっと着いたマ−マレ−ドを嘗め始めたからもう大変。
コロは雑種といっても拓海と同じくらいの大きさなのだ。その犬に全身全霊でなつかれたのだから堪らない。「やだっコロっどこ舐めているんだよ」
おどろいた拓海はコロを引き剥がそうとした。
べろべろ,
コロは大好きなマ−マレ−ドを一心不乱に舐めている。
「やあっあっあんっあんっコロやだぁ」
そんなとこ舐めちゃいや。
でもなんかちょっと変な気持ち。
「コロっもうやだぁ,あんっ変になっちゃう」
拓海の小さな果実はすでにコロのテクニックの虜。
「やあんっあんっああん」
べろんべろん
「あああぁ−っあっあっ」
その時,拓海は初めて射精なるものを体験してしまったのだった。
しかも犬に舐められて・・・
「そうだったのか,拓海にはそんな過去があったんだね」
しきりに涼介は頷いていた。
穴があったら入りたい,拓海は恥ずかしくて死んでしま いそう。
そんな初で可憐な拓海に涼介は更に追い討ちをかける。
「で,拓海,コロとはそれきりだったのかい?そうじゃ無いだろう,一度バタ−犬の舌を知ってしまうと自分では物足りないだろうからね,それとポイントはもう一つ,その時いつもズボンを履いたまま?それとも直に舐められたもとはある?」
高橋涼介,愛しい恋人のためならいかなる分析も辞さない探究者。
「もういやあぁっこんな変態な告白」
涙まじりの拓海だが愛の前には隠し事は通じないのであった。
2001年9月発行のカーマスートラより一部抜粋、とほほ、昔からこんなのばかり書いていました、