[ウエストラブラブゲ−ト]

 赤城山,
プロジェクトDのチ−ムオ−ナ−である高橋涼介は久しぶりに親友である史弘とホ−ムコ−スに来ていた
「いい風だな,ひんやりしていて」
くつろいだ涼介の言葉に史弘は頷く
「これくらいの気候が一番いいよな」
そして史紘はちらりと涼介を見た
「随分久しぶりだよな,Dの活動以外でお前が峠に誘うなんて」
何か聞きたいことがあって呼び出したんだろう,
暗に史弘が詮索を入れる
「ちょっとした気分転換さ,ここんとこいっぱいいっぱいだからな」
涼介の言葉に史弘は頭痛を覚えた
そうなのだ この頭脳明晰眉目秀麗才色兼備のチ−ムオ−ナ−様は今ぞっこんめろめろいっぱいいっぱいなのである
 ダブルエ−スの片割れ,藤原拓海に
「あまり無理はしないでくれよ」
未成年相手に,と史弘は願う
「Dと医学部と藤原拓海の両立がどれくらい大変な事かが俺達には想像出来ないけれど」
藤原拓海という少年は関東,いや全国走り屋のカリスマパンダアイドル
しかも天然のぼけ少年藤原拓海は涼介の切ない恋心と猛攻アタックに気がつきはしない
回り中誰もが気がついていても当の本人には全く思いは届いていないのだ
Dと医学部を両立しながら拓海に不毛な恋のアタックを仕掛けている涼介の苦労を思うと史弘は涙がちょちょきれそうだった
「お前が睡眠時間をギリギリまで削っていることはみんな心配しているんだぞ」
涼介が睡眠時間を削って拓海のスト−カ−をしていることは有名であった
「別に俺だけじゃないだろ」
涼介が悔しそうに呟く
史弘は痛んできた胃を押さえた
そうなのだ,涼介だけでなく弟の啓介も,メンバ−連中も,そしてバトルをした対戦相手もみんなスト−カ−とかしているのだ
「無理をしているのはお前やチ−ムのみんなも同じだから」
みんな同じように拓海スト−カ−なのだ
仕事や大学の合間に拓海にプレゼントを渡したりデ−トに誘ったり苦労している
涼介がいくらハ−ドな医学部だからといってそれに甘えていたら拓海は手に入らない
「Dはまだ始まったばかりだけどな,俺が思い描いている恋は順調に展開している」
涼介がうっとりと昨日のことを思い出した
 昨日のミ−ティングの時,拓海は涼介の運転を勉強するためにナビシ−トに乗ってくれたのだ
その時の悔しそうな啓介と他のメンバ−の表情は涼介のプライドを満足させてくれた
「やはり拓海を俺を特別だと思ってくれているんだ」
涼介を見る度に頬を染めてうっとりする拓海は壮絶に可愛い。
涼介がハンドルを操るたびにすごいすごいと喜んでくれて,手まで叩いてくれたのだ
もうこれで拓海は涼介の虜
FCのナビを知ってしまったら他の車になど乗れないだろう
「優秀なチ−ムオ−ナ−とエ−スだからこそだ」
あの瞬間,涼介と拓海は確かに心を通わせていた
狭いFCの密室,涼介には拓海の気持ちが痛いほどよく分かる
「俺もだよ,拓海」
ふふふっと思いだし笑いをする涼介
「これからはもっとハ−ドなスケジュ−ルになるけれどよろしくたのむな」
きっとこれから拓海と涼介の仲は急速に発展してミ−ティングの後,ラブラブデ−トとか遠征でのホテルは涼介拓海の二人部屋になるのだろう
そして次の日,拓海は妙に気怠げな,しかし凶悪に色っぽい表情でメンバ−を惑わせるに違いない
「拓海の体がどこまでついてこれるかそれが心配だ」
お−いっ帰ってこいよ−っとイっちゃっている涼介に呼びかける史弘
「なんだよ−,止めてくれよ,そんな言い方,藤原はまだ未成年なんだぞ」
史紘が必死で涼介を押し止める
「俺達はみんな楽しくてしかたないんだからさ,藤原拓海のおっかけが,松本なんか仕事は趣味で拓海親衛隊が本業だっていっているくらいだ」
だから壊さないでくれ,俺達のアイドルを
プロジェクトD終了と同時にチ−ムオ−ナ−と電撃結婚なんて洒落にならない
(例としては秋元康とおにゃんこの高井麻巳子)
涼介がにやりと笑った
嫌な笑い方だ
史弘はしきりに痛む胃を押さえた
「D卒業までなんて悠長なことはしていられないな」
「まっまさかっ涼介」
「走り屋初のママドルエ−スドライバ−というのもいいかもしれない」
妄想いっちゃっている涼介
「りょっ涼介っ藤原拓海は男だ,いくらなんでもママドルは無理だろう」
にやりと笑う涼介
「俺がなんのために医学部に入ったと思う?」
まっまさかっ冗談だろうっいやっ冗談ではないっ涼介はこういう冗談を言う奴ではないことは史弘が一番よく知っていた
 胃がますますきりきりと痛んでくる
史弘は腹を抱えてうずくまった
「どうしたんだ?お前」
「訳わかんねえんだ,急に腹が痛くなってきて
わりいけど,涼介,俺のことは気にしないで走ってきていいぞ」
少し休んでいれば楽になると思うからっといいながらも史弘は脂汗を流して苦しんでいる
「馬鹿いってんだ 痛いのはどのあたりだ?」
どんな風に痛いのか言ってみろっと言いながら涼介は触診を始めた
「酷い痛みだよ,背中まで締め付けられるような」
史紘の顔はもう土毛色であった
「まずいな,腹壁板状硬で筋性防御がある,陣痛が始まったんだ」
「・・・え?」
涼介の言葉の意味が分からない史弘
「陣痛だ,もうすぐ生まれるぞ」
涼介の顔は真剣だった
「俺は男だぞ」
史弘も釣られて真剣に答える
「実は拓海の前にお前で実験しておいたんだ」
「・・・なにをだ?」
腹が猛烈に痛い,だが今の史弘はそんなことにかまっていられない
「だがお前も水臭いな,相手は誰なんだ?」
「だからなんの話なんだ−?」
史弘の問いかけに涼介は答える
「これはなるべく早く運んだ方がいいな」
冷静な涼介の声
それが今の史紘には恐ろしい
涼介は史弘をFCに乗せた
「赤城道路をいっきに下ったところが群大病院だ,我慢してろよ,ちょっとゆするぞ」
いきなり全開走行ダウンヒル
「あんぎゃああ−−−ッッ」
史弘の悲鳴が赤城に木精した

[ウエストラブラブダウンヒル]に続く