「86brothers]
*プロジェクトDのバトルの晩
秋山渉の苛々はマックスである。
本当はギャラリ−に行きたいのだがそれは禁止されているのでこうして家でじっと待っているしかない。
(以前こっそりギャラリ−にいってとても怒られたのだ,3日も口を聞いてくれなかった)
目の前の灰皿には山盛りの吸殻
時計はすでに12時近い
「遅すぎる,やっぱり迎えにいこう」
秋山渉がそう行って出かけるためにオ−バ−を手にとった時,玄関が開きのんきな声が帰ってきた。
「ただいま−渉にぃ」
そう言いながら突っ立っている渉に抱きついてくる。
「お前なぁ,遅かったじゃないか」
渉は目の前の愛しい子供をぎゅうぎゅう抱きしめながら説教をたれた。
「あんまり遅かったから心配したぞ,迎えにいこうかと思ったんだからな」
「ごめんなさい」
「プロジェクトDに入ることはお前めにもなると思ったから許可したんだ,だがこんなに遅くなるなら問題だな」
「ごめんなさい,渉にぃ,今度から気をつけます」
そう言いながら子供は渉にちゅうっとキスをした。
「そんな事で機嫌をとろうとしても駄目だぞ」
「うん,俺今日も勝ったよ」
嬉しそうに報告する子供はとても可愛い。
渉はふわふわ栗色の髪を撫でてあげながら誉めた。
「当たり前だ,拓海は藤原文太の息子でこの秋山渉の弟なんだからな,負けるわけが無いだろう」
渉は弟の可愛い頬にちゅうっとキスしてやりながら断言した。
もう懸命な皆様はお気付きだろう。そうなのだ。
埼玉で名の知れた走り屋,秋山渉23歳
そして今が旬の秋名のハチロク 藤原拓海18歳
実はこの二人,本当に血のつながった兄弟である。
では何故名前が違うのか。
簡単である。
藤原の両親が離婚をして渉は秋山の母へ,拓海は藤原の父へ引き取られたのだ。
昔からこの兄弟は仲が良かった。
両親が嫉妬するくらいに仲が良い兄弟だった。
両親が離婚した時には泣いて離れるのを嫌がったくらいなのだ。
それでも離婚したら疎遠になるかと周囲は思ったのだが 想像を裏切って兄弟は仲良くあり続けた。
しかしこの兄弟,例え名前が違っても,埼玉と群馬と別れて,帰って絆は深くなったような気がする。
拓海は18歳になってもばりばりのお兄ちゃん子
渉なんて23になっても弟が一番可愛いと素面でのたまう弟馬鹿になってしまったのだ。
渉が一人暮しを始めた時なんてすごかった。
拓海が毎日毎日遊びに来るし入り浸る。
「だから彼女の一人も出来ないのよね」
そう言うのは渉の義理の妹,和美ちゃんの談だ。
もう半分同棲状態のラブラブ兄弟なこの二人。
だが最近そのラブラブ度の雲行きが怪しい。
「やっぱりプロジェクトは反対するんだったな」
12時過ぎ,バトルの結果を報告するためマンションへやってきた弟を見て渉はため息をついた。
「なんで?俺ちゃんと勝っているよ」
きょとんとする拓海は壮絶可愛い。
そう,可愛いから問題なのだ。
「今日,遅くなったのもバトルだけが原因じゃないんだろう」
ソファに座っている渉の横でカフェオレを飲みながら拓海が小さく頷いた。
「うん,高橋兄弟さんに誘われた」
そうなのだ,そこが問題なのだ。
プロジェクトはとっても楽しいし面白い。
拓海のためにもなっていると思う。
しかし,しかしだな。
「オレは兄として不純同姓交友を許す訳にはいかん」
渉は吠えた。
「大丈夫,オレ全部断っているもん」
今日もファミレスでお茶をしていこうとかうるさかったけれどちゃんとお断りしたのだ。
「大体あの兄弟,とってももてるんだよ,オレなんか相手にするわけないもんね」
そう言う拓海だが実はとってももてる。
高橋兄弟を筆頭に,日光の須藤や妙義の中里やら,その他もろもろ
弟は走り屋のアイドルなのだ。
「高橋兄弟さん,面白いんだよ,オレ男なのにデ−トしたいとか付き合いたいとか言うんだもん」
兄弟の真剣なアプロ−チに拓海が気がついていないのが救いだ。
渉は大きくため息をついた。
そんな渉の顔を覗き込みながら拓海はにっこりと笑う。
「それに,他の御付き合いするより渉にぃと一緒にいた方が楽しい」
渉の機嫌は少し浮上した。
「オレ,決めてるんだ,御付き合いするなら渉にぃよりも男前な人って」
でもそんな人いる訳ないもんね。
「だからオレ,いつまでもブラコンって言われるんだよ」 拓海は理不尽な八つ当たりをしながら渉にきゅうっと抱きついた。
「渉にぃのせいだからね」
責任とってね,と小さい声で言う弟を渉はぎゅうっと抱きしめながらキスをした。
「了解」
全く,何時まで立っても渉に彼女が出来ないのはこの弟のせいである。
続く,いや−,ばりばりブラコン86 兄弟と高橋兄弟の戦いをかきたかったのですがタイムリミット,次回また書きたいですの