「はじめの一歩」

 

 

それは次の遠征先の下見にいったときの話である
その日、珍しいことに何時も啓介の恋路を邪魔する兄が大学の用事でいなかった、
啓介と拓海、二人きありの始めてのデート
啓介は興奮した
興奮した啓介は絶好調で峠の下見を終えた、
朝から出かけたのでもう昼時
食事タイムである
啓介は年上の太っ腹なところを見せて拓海にうなぎを奢ってやることにした
(別に精力をつけるためではない、念のため)



田舎の料理屋、ほかほかの鰻を目の前にして拓海は固まっている
啓介はちょっと心配になった
「あんまり鰻好きじゃねえのか?」
 唐突な啓介の問いかけにきょとんとなる拓海。
「鰻なんか何年ぶりかなんで、緊張しちゃって」
拓海の家は貧乏であった
 大切そうに口に運び、かみ締めもぐもぐさせている拓海は幸せそうだ。
「焼肉は?もし好きだったらいい店しってるぜ」
「つれていってくれるんですか?」
 瞳を輝かせて拓海が嬉しそうな顔をする。
 良い感じだぜっくううっ啓介は今こそ告白のチャンスだと息巻いた。
「プロジェクトDのことだけじゃなくさ,こうやって一緒に食べに行ったり映画見に行ったりドライブにいったりしようぜ」
 その後にホテルいって甘い時間もオプションでついてくるぜ。
「でも,俺貧乏だから・・」
「いいって,俺達の中じゃねえか」
拓海は食べ物に弱かった
そして奢りにとても弱かった、
 奢ってやるよという啓介に拓海は極上の笑顔を向ける、
 その天使の微笑みにうっとりしてしまう啓介。
「拓海にはうまいものいっぱい食ってほしいからな」
 今のスレンダ−なボディもいいけれどもう少しふっくらしていたほうが抱き心地がよろしい。
 そして啓介は出来るだけさりげなくさりげなく告白をしたのだった。
「俺,拓海の事が好きだし」
「俺も好きですよ,啓介さんのこと」 
 啓介とは別の意味でだろうがとりあえず両思い?
「こっこっ今度の週末はすき焼きはどうだ?いい店しっているんだ,それにいいバ−もあるからいこうぜ,大人の世界をおしえてやるぜ」 
 いきりたつ啓介,その野望に気が付かない拓海はいい人だなぁっと啓介の事を見直した。
 こうして啓介と拓海のグルメ会,お付き合いが始まったのであった。

 後日,啓介はこの日を告白記念日だというが拓海はそんな覚えはないといってこれでもまた喧嘩になるのであったがそれはまた別の話。