「増刊女の子」


 啓介は赤城の峠を攻め込んでいるとき,一人の女の子とお知り合いになったという増刊号の後日談

「信じられないわ,あの男,私の携帯捨てたのよ」
正月もそうそう近くのファミレスでは怒声が鳴り響いていた
「怒りなさんなって美香,ようはその男があんたの事好みじゃなかっただけでしょう」
にやにやとマブダチの祐子がちゃちゃをいれる
「違うわよ,暗くてこの美香の顔が分からなかっただけよ,だってあんなに暗かったんだもん,
見えなくて当然,あたしこんなに可愛いのにそんな走り屋の男にふられる訳ないじゃん」
美香がいきりたつのをにやにやと聞いている祐子である散々いっているけれど
どうやら美香はそのつれない男に惚れてしまったらしいのだ
「美香,それじゃあ今晩いってみない?赤城の峠へ」
「え−っ足がないじゃん」
「それはあの人達にお願いしてさ,帰りはその走り屋の彼に送ってもらおうよ」
美香が視線をむけた方向には走り屋っぽいナンパ野郎達が視線を送っている
「いいわよ,今度こそあの人をおとしてみせるわ,これはリベンジよ」
あのくだんの増刊号での彼女,美香は啓介を落とすと豪語してみせたのであった




 ここは赤城の峠,21世紀を迎え走り屋が大勢峠を攻めている
「うわ−っすごいっでもあの人すごく目立つと思うの,黄色い頭だったし」
美香がきょろきょろ啓介を探す
そのせりふをナンパ野郎どもは聞きつけた
「黄色い頭?まさか君たち高橋啓介の知り合いかよ」
「高橋啓介?」
名前は知らない,でもあの人すごく強そうだったから有名人なのかも
うん,そうよね,あたしが惚れるほどの男だもん,有名人なのよ
「そう,知っているの?」
美香の言葉に青くなるナンパ野郎
「うげっなんだよ,それなら初めに言えよ,期待しちまったじゃねえか」
そうそうに退散するナンパ野郎である
「どうすんのよ,美香,帰りの足なくなっちゃったよ」
祐子は心配そうだ
「平気,あたしには啓介がついているもん」
言い切る女は強い
そして頂上の駐車場へと向かった




「啓介−っあたし美香だよ,会いに来てあげたよん」
レッドサンズの新年ミ−ティング,突然女が啓介に抱きついてくる
「げっお前はこの前の迷惑女っ」
啓介は本気で嫌がっているらしい
「あんたって本当に素直じゃないわね,あたしに会えて嬉しいくせに」
「よせっ気持ちわりい」
つれない啓介の態度もなんのその,恋する女は強いのだ祐子はそれを見てため息をついた
(美香って可愛いんだけど,あの思い込みの激しさが彼氏を作れない原因なのよね)
そんな姿を黙ってみているケンタではない
「ちょっとそこの女,啓介さんから離れろ,啓介さんはお前みたいなレベルの女が近寄れる相手じゃねえんだよ」
「何よ,ガングロ」
「てめえみたいのは三軍がお似合いだぜ,啓介さんが汚れる離れろ」
「うき−っ男のくせに」
ああ,不毛な戦い
横では兄がにやにや笑っている
「そうか,啓介には彼女が出来たのか,よかったな,拓海の事は俺に任せて彼女とホテルにでもいってこい」
「なにを−っこれは彼女なんかじゃねえ,兄貴こそよけいな事を拓海に吹き込むなよ」
もっと不毛な兄弟喧嘩
とにかくこの場で美香のとった行動は最悪である
一応峠のヒ−ロ−高橋兄弟の片割れに抱きついたのであるからしてすごいブ−イングが沸き起こる
「なによ,このぶす,引っ込んでよ」
「やだあ,あのセンス最悪,あんなのでよく啓介に会いに来れたわよね,はずかし−」
追っかけの攻撃
「あの程度の面でよく啓介さんの彼女とか言えたよな,身の程を知らないっていうか」
「啓介さんが前つきあっていたのってキャンギャルだったよな」
「その前はワンギャルだったぜ」
「今は拓海ちゃんオンリ−みたいだけどなあ,あの程度の女だったらいくらでもいるし」
「よくいるんだよ,勘違い女」
すさまじいまでのブ−イングにたじたじの美香
「美香,やばいよ,これ,帰ろう」
「帰ろうっていってももう足ないし」
峠中の非難と殺気が美香と祐子に集まっている
これではもう送ってくれるナンパ野郎はいないだろう
困り果てる二人
麓まで歩いて帰るわけにはいかないし
美香は情けない顔をして携帯を取り出した
ピッピッピッツルルルル
「あっあたし,悪いけど迎えにきて,ここ,赤城」
美香はぞんざいに言い放つと携帯を切った
「誰?あんたにアッシ−がいるなんてん知らなかったよ」「うん,いとこなんだ,なんか豆腐屋やっててださい車しかないけどこの際仕方ないよね」
美香が呼び出した従兄弟とは一体?




「啓介さん,あいつらまじやばいですよ,反感かいまくり,このままじゃ裏に連れてかれてまわされちゃいますね」
レッドサンズメンバ−の言葉に啓介の顔がゆがんだ
二度とお近づきになりたくない最悪女だがそれはあんまりにも可哀想だ
「しかたねえ,後で駅まで送ってく」
弟に苦々しい言葉に喜ぶのは兄である
「そうか,啓介にもやっと彼女が出来たのか,いいぞ,そのままホテルにいっても,拓海の事は俺に任せろ」
「だああっ違う」
ああ不毛な兄弟バトル
その時,麓から聞き慣れないエンジン音が鳴り響いた
「秋名のハチロクだ,藤原豆腐店」
「間違いない,秋名のハチロクだ,どうして赤城に?」「まさかバトルしにきたんじゃ?」
「21世紀初の赤城バトルはハチロクかよ,くうう−っ燃える」
口々に騒ぐギャラリ−である
「キャアッ可愛いパンダトレノ」
「もう連れて帰ってペットにしたい」
追っかけも拓海にめろめろだ
「拓海,俺に会いに来てくれたのか」
「違うぜ,拓海は俺に会いに来たんだ」
もう美香と祐子のことはすっかり忘れ去られている
幸運なのか悪運強いのか
ブオオオ−ッと軽快なエンジン音とともに現れたるは我らがハチロクパンダトレノ
ギャラリ−が歓声をあげる
パタッと扉を可憐に開けて果敢無げな美少年が登場する
「うおおおお−っ拓海ちゃんラブ」
「すげえ可愛い,っおおっ鼻血が」
ギャラリ−の中には倒れるものもいる始末に
拓海はきょろきょろと見回してお目当ての人を見つけた
「美香ちゃん信じられないな,正月そうそう人のこと呼び出すなよ」
呆気にとられている美香と祐子のところに歩いてきたのは峠のアイドルパンダトレノ
「どうして峠なんか来たんだよ,美香ちゃん,あっこんばんわっ俺,美香ちゃんの従兄弟の藤原拓海です」
「こっこんばんわ,祐子です」
震える声で答える祐子はこの美少年に圧倒されていた
その時,真打ち兄弟登場
「拓海−っこの女と知り合いなのかよ」
「拓海,このお嬢さんとどういうおつきあいなのかな」
にっこり笑っているがそのこめかみはひくひくひきつっている
「あ,こんばんわ,涼介さん,啓介さん,美香ちゃんと知り合いなんですか?美香ちゃんは」
俺の従兄弟っと言おうと思ったところを後ろから口を塞がれた
「ちょっちょっと美香ちゃん」
「拓海,あたしたちが従兄弟だって言ったら殺す」
どうやらこの従兄弟の拓海は峠のアイドルらしい,
この事実に従兄弟は戦闘欲を刺激されてしまう
あたしの事散々にけなしてくれた峠のギャラリ−ッ高橋啓介を見返すチャンスなのだ
「拓海とあたしは人がうらやむような仲なのよね」
うふふんっと拓海にしなだれかかる美香,先程の数百倍の恨みをかうには十分の諸行である
赤城の峠に戦慄が走った
もし視線で人が殺せるならば美香と祐子はまるこげであるがそんなことはへのかっぱ
「啓介さんにははずかしくて言えないわよね,あたしと拓海のことは」
挑戦的に視線を投げつける美香,啓介の歯ぎしりがきこえる
(なんで従兄弟どうしだと恥ずかしいのかな?
あっそうか,この年になって従兄弟の送り迎えなんて確かに恥ずかしいもんな,
ここは美香ちゃんの名誉のためにあわせてあげなきゃ)
ああ,勘違いパンダトレノ
「拓海,そのお嬢さんは?」
涼介の言葉に笑って一言
「恥ずかしくって人にいえない仲なんです」
そうして美香と祐子をハチロクにエスコ−トするとにっこり笑って帰っていった
「啓介っお前が悪い,っお前があの女達をしっかりつかまえておかないからこういう事になるんだ」
兄の殺人光線をあびながら啓介は叫んだ
「あの女っやっぱ疫病神だ−っ拓海っカムバック−」

 



 ハチロクの中でほくほくなのは美香と祐子,ああ,人の嫉妬の視線って心地よい,
これからも拓海に連れてきてもらって峠見学っていいわよね,女を奇麗にするこつは嫉妬の視線である

  はなはあの子結構気に入っている  のよね