ここは前橋ジャスコ 生鮮売り場
拓海は悩みに悩んでいた
目の前にあるのはお徳用パック大奉仕,しかも見切り品の豚肉,500グラム100円
その隣には高級黒豚,鹿児島産最高級品300グラム750円,
いつもの拓海なら問題はない
お特用品を迷わず選んでいるだろう
しかし,拓海の恋人にお徳用は似合わない
そんなの腹に入ればみな同じ
と笑えないくらいにノ−ブルな御方なのだ
(もし,お徳用を買っているところを誰かに見られて涼介さんの格が落ちてしまったら)
世間様の眼は厳しい
拓海だけがお徳用と言われるのならかまわない
耐えられる
でも,涼介がお徳用と呼ばれるのは・・・耐えられないそれに栄養価も問題だ
どう見ても高級黒豚の方が栄養満点でしかもオ−ガニックな気がする
これから医者になって実家の病院を継ぐ男にとって栄養バランスに気を使う事はプラスなのだ
これだけ考えれば黒豚を選ぶことは当然の選択
おまけに拓海は涼介からジャスコカ−ドを好きなだけつかっていいと渡されている
お金の心配はない
涼介にはいいものを食べてもらいたい
そして体力をつけて国家試験にみけてがんばってもらいたい
しかしここが問題なのだ
体力はつけてもらいたいが別の面で発揮されては困ってしまう
絶対涼介には食べさせたくないものリストナンバ−1は鰻の蒲焼き
拓海はしばらく固まってしまった後,おもむろにその隣の378円お買い得品をかごの中に入れた
「肉じゃがだから,これくらいでいいよね」