「FCの中は秘密がいっぱい」

 拓海がプロジェクトDに入ったのは冬,今はもう春が訪れようとしていた。
 すっかり兄弟にも懐いて一生懸命ドラテクを覚えようとしている拓海に兄弟は緩む頬を押さえられない。
 あまりの可愛らしさに,可憐な拓海に手が出せない兄弟は今の所優しいお兄さんのポジションに落ち着いている。
 もちろん水面下では兄弟の熾烈な争いが続いているがそんな事に気が付くような拓海では無い。
(いい人だな,涼介さん,啓介さん)
 すっかり餌づけされていて兄弟のよこしまな野望にはとんと気が付かなかった。

「いつもすいません,送ってもらっちゃって」
 拓海が啓介にお礼を言うと啓介の鼻がだらっと下がった。
「いいって,俺は役得だと思っているんだから」
 いつも通りプロジェクトの事で高橋邸までいった拓海は啓介のFD RX−7で送ってもらっていた。
 前は涼介に送っていってもらっていたのだが最近大学の方が追い込みで忙しいらしくもっぱら最近では啓介にお願いしている。
「涼介さん,大変みたいですね」
「ああ,兄貴もこの所忙しすぎて車走らせている暇もねえってところか」
「それなのにプロジェクトの方もきちんとこなしていてすごいなあ」
 拓海が感嘆の声を漏らす。
「前送ってもらっていたときも思ったけど涼介さんの運転ってすごいですね,あんまり気持ち良くてついつい眠くなっちゃう」
 普通の人間ならばその涼介の運転技量に驚きおののくところだがそこはさすが拓海というか,うっとり眠くなってしまうらしい。
「俺のFDも乗り心地いいだろっ」
 啓介のライバル心が疼き出す。
「うん,FDもすごく気持ち良いです,このシ−ト見た目は座りにくそうって思ったけど実際はふかふかで足伸ばせるし」
 ふかふか?FDのナビシ−トをそういう表現する奴は滅多にいないと思うが。
「他の車と違うこの音もなれると気にならないし」
 それはひょっとしてロ−タリ−サウンドの事?
「俺,FD大好きです,可愛いし」
 どぷっ
 啓介が勢い良く鼻血を噴き出した。
(FDが好き?好き?好きってことは運転している俺も好きなのか,拓海?)
 啓介が妄想入っている間に何時の間にか秋名銀座の拓海の家に到着した。
「ありがとうございました,啓介さん,お休みなさい」 名残惜しそうな啓介に挨拶して,拓海は家に入っていった。
「拓海,今日も可愛かったな,兄貴が忙しくて拓海の送り迎え出来るようになった俺は幸せ者だぜ」
 気持ちを落ち着けるために煙草をすぱすぱ吸ってから啓介はFDに乗り込んだ。
「お前可愛いってよ,どうする?」
 愛車に向かって語りかけながら啓介は豆腐屋から遠ざかっていった。
 その時,物陰に隠れて一台の車がじっとこのやりとりを聞いていた事も知らずに。

 

 

 大親友のいつきと帰り道にカレ−パンを買い食いしながら拓海はるんるん歩いていた。
「やっぱ俺的には温泉饅頭の方がよかったかな」
「拓海はいつも温泉饅頭だもんな,そんなに好きか−?」
「うん,好き」
 拓海の好物は温泉饅頭とキャラメルコ−ン,そして豆腐である。
「今日は?プロジェクトは」
「休みなんだ,久しぶりにゆっくりできるよ」
 ああ,だから拓海はるんるんなんだ,いつきは納得した。
「でもすげえよな,あの高橋兄弟と互角に張り合うなんて,俺は親友として鼻高々だぜ,くうぅ」
 きょとんとする拓海。
 口元にはカレ−がくっついている。
「そうなの?俺よくわかんないや」
「そうなんだよ,あのレッドサンズのナンバ−1と2がじきじきに教えてくれているんだろ.拓海はますます速くなるよな」
「わかんないよ,俺速くなるとかそういうの,俺が知っている走りをするだけだからさ」
 あっけらかんと言い放つ拓海。
 そこが拓海のすごい所かも知れない。
 全く高橋兄弟も苦労するよな,いつきは大きくため息をついた所で丁度別れ道,
二人はさよならを言った。
「じゃあ明日ね,いつき」
「おう,寝坊するなよ」
 拓海はカレ−パンをくわえながら帰り道を急いだ時,道の端に見慣れた車が止まっているのを発見した。
「あれ,これは涼介さんのFC?」
 ドライバ−の姿は見えないが確かにこれは涼介さんの愛車の筈。
 白い車体にでかでかとレッドサンズのペイント。
 もちろん赤城ナンバ−である。
 拓海は運転席を覗き込んだ。
「涼介さん,いないや,こんなところで何か用事でもあるのかな」
 拓海が不思議に思った時,急にFCのドアが開いた。 ギイイイイッ
 驚いた拓海の手に何か紐のようなものが絡みつく。
「えええっ何これ」
 あっと言う間に車の中に引き摺り込まれる。
 紐だと思っていたのは長く伸びてきたシ−トベルトであった。
 そう気が付くより早く拓海を捕えたFCが発進した。
 あやうし,拓海,捕われの身に。

 

 

 訳がわからずパニックに陥る拓海。
 シ−トベルトを外そうとするが,外れない。
 そんな馬鹿なと思うのだがどうやっても外れない。
「なにこれ,やだっ」
 拓海は身をよじろうとするのだがそれもシ−トベルトに拘束されて思うように出来なかった。
 その時,ステレオから荘厳な音楽が流れた。
 ジャジャジャジャ−ンッ
 ベ−ト−ベンの運命
 これなら拓海も知っている。
 確か中学の授業で聞いたやつ
 ステレオから声が鳴り響いた。
[拓海,落ち着いて,危害は加えないから安心していいよ,心を落ち着けるんだ]
 この子安声は涼介さん?
 涼介は自分の声をカセットに吹き込んでいたのだろうか? 拓海は訳分からずにパニック爆走中。
[拓海,手荒な事をしてすまない,しかし俺はどうしても拓海と二人きりになりたかったんだ]
「涼介さん,これはどういう事?」
[俺は涼介では無い,FC RX−7,白い彗星だ]
「え?どういう事?」
[涼介は俺のドライバ−,俺はFC RX−7]
「涼介さんじゃないの?」
[涼介は俺の雇主だ,拓海は驚くだろうが俺はこの車の魂なのだ,
俺は涼介によってチュ−ニングされ一流の走り屋使用の車に仕立てられた,
そうして高橋涼介に運転され赤城の白い彗星として,カリスマ的存在として君臨する内に自我が芽生えたのだ]
「・・・?」 
[無機物も長い年月主によって育てられると魂が宿るのだ]
 拓海は恐怖におののいた。
「ひょっとしてそれってよくある絵の中の人が動き出すとか人形の髪が伸びるとかっていうあれ?」
 古来日本には大切にしていた物に魂が宿るという伝説があったが,まさかこのFCは?
[そう,長年涼介によって熟成された俺の体は次第にただの車から走り屋使用の車,自我を持つFCに改造されたのだ]
 全然分からないがとにかくこの話しかけているのは今拓海の乗っているFCということらしい。
「なんで,それでなんでFCさんが俺の事?」
[俺の理想のドライビングテクニック,一目見た瞬間から胸の高まりを押さえられなかった。
俺は高橋涼介にしか運転されたことのない車だ。だがどうしてもこの感情を我慢出来ない。
どうしても俺は拓海に運転してもらいたかったのだ。一度でいい,拓海とドライブしたい]
 全然分からないがこのFCは心を持っていて拓海とドライブしたいらしい。
 なんかよく分からないけれど感動する拓海。
「そういう事なら分かりました,俺も男だ,このドライブ受けて立ちます」
[それでこそ秋名のハチロク,俺がも見込んだドライバ−だけの事はある]
 こうして拓海とFCの逃避行が始まったのであった。

 

 

 


 拓海の消息が跡絶えてはや数時間後。
 群馬中の峠が阿鼻叫喚の坩堝と化していた。
「な,なんだぁ,あの正確なドリフトコントロ−ル」
「まるで秋名のハチロクだぜ」
「ま,まてよ,あのステッカ−は,あの白いFCは?」
「高橋涼介,赤城の白い彗星?」
「だが運転しているのは違ったみたいだけどな」
「ちらっとしか見えなかったけれど秋名のハチロクみたいな気がする」
「馬鹿やろう,秋名のハチロクがFC運転するかよ」
「じゃああれは誰なんだ?」

 穏やかな高橋邸の一角。
 そこにものすごい勢いで転がりこんできたのは次男坊の高橋啓介である。
「てえへんだ,兄貴,一大事だ」
 まるで時代劇の世話物のような登場に兄は首をすくめるとフォションのア−ルグレイを差し出した。
「落ち着け,啓介,これでも飲んで気持ちを落ち着けるんだ」
「そんな場合じゃねえって,兄貴のFCは?」
「今は車検に出しているがそれが?」 
 兄からティ−カップを奪い取りごくごくと飲み干すと啓介は一気にまくしたてた。
「そのFCが峠を荒らしまくっているんだ,しかも拓海の運転で」
 涼介が雅な眉を潜めた。
「なに?どういう事だ」
「どうもこうもねえよ,すげえドリフトかましまくっているらしいぜ」
 その時,涼介の携帯が鳴った。
 今FCを車検に出している店からである。
「実はですね,メンテナンスの最中にFCが急になくなってしまってですね,
その,あの,整備工の話だと誰も乗っていないFCが急に動き出したとかで,
いや,その整備工も動揺していてよく話がわからんのですが」
 しどろもどろの店長の言い訳に涼介はらちがあかない電話を切るとおもむろに立ち上がった。
「啓介,車を用意しろ,峠にいくぞ」
「待ってました,兄貴はやっぱそうこなくっちゃ」
 高橋兄弟FDで出陣である。

 

 

 ところ変わって何故かここは有明湾岸道路。
「随分遠くまで来ちゃいましたね,FCさん」
 拓海は東京の夜景に見とれている。
 FCはそんな拓海に見とれていた。
「もうそろそろ帰りませんか,涼介さんも心配していますし」
[離したくない,このまま拓海と世界の果てまでドライブしたいのだが]
「・・・FCさん」
 困った顔をする拓海。
[どうして俺は人間に生まれてこなかったのかな,
もし人間であれば俺は拓海を抱きしめて絶対に幸せにしてあげる自信があるのに,
俺は車であるこの身が恨めしい]
「でも,FCさんが車だったからこそ俺達出会えたんじゃないですか,もし涼介さんがFCさんを運転していなかったら俺達こうしてドライブしていないし」
 拓海の慰めがFCの心を癒してくれる。
 FCはシ−トベルトで拓海を強く抱きしめた。
[拓海,最後のお願いだ,俺は拓海が欲しい]
「ちょっちょっと待った−?」
 拓海の悲鳴が狭い車内に響いた。
[だって俺男だし,FCさん車だし,そんなの無理]
「関係無い,そんな事は,俺は拓海を愛しているんだ」
「待って,無理だってば,いやっそんな馬鹿な」
 ナビシ−トのシ−トベルトが絶対不可能な筈の距離である拓海の肢体に伸びてきた。
 足の付け根に金具があたってくる。
「いや,ひいっやめて」
 どういう仕組みか分からないがFCはシ−トベルトの金具を器用に使って拓海のズボンの前を開かせた。
「あ,いや,そこは駄目」
 冷たい金具が直にあたる感触に拓海が竦み上がる。
 先端を金属が這い回って知らずの内に拓海が喘ぎ声を出し始めていた。
 通風孔から白いコ−ドが無数に這い出してくる。
 一体どういう仕組みなのだ,この車は?
 FCも興奮してきたらしくエンジンを鳴らし始めた。 辺りに響くロ−タリ−サウンド。
「あ,そこいじっちゃいや,あん」
 FCのいたるところから伸びてくるコ−ドが生きているかのように拓海のしなやかな体に絡みつく。
「ひいっあっそこっ気持ちいいよぉ」
 一本のコ−ドが先端から尿道に入りこんできて軽く揺すられると拓海の理性が崩壊した。
「あ,いい,そこもっとぉ」
 シ−トからは荒々しいロ−タリ−サウンドが拓海のおしりを蹂躙する。
 後ろの蕾にもオイルで濡らされたコ−ドが何本か入り込んできて前立腺をさすってきた。
「もうイっちゃう,もうっあああん」
 一際大きく突き入れられて拓海の白い蜜がFCの車内に弾け飛んだ。

 

 

「こんなの酷いよ.FCさんの馬鹿」
[でも感じていたんだろう,よかったよ,拓海]
 泣きじゃくる拓海をシ−トで柔らかく包んであげるFCは幸せに満ち足りていた。
 人間の男なんかよりよほど大切にして感じさせてあげたという自負がFCをより一層成長させていた。
 その時である。
 外がやたら騒がしくなり遠くから聞き覚えのあるエンジン音が鳴り響いた。
[この音は?FD,RX−7]
 FCの緊張が拓海にも伝わる。
「もしかしたら啓介さんが?」
 出ました高橋兄弟。拓海を追って有明に登場。
「拓海,これは一体どういう事なんだ?」
「拓海−,お前兄貴のFCで何やってんだよ?」
 兄弟は代る代る質問をしながらFDから飛び降りてきた。
「涼介さん,啓介さん,これには事情が」
 拓海も急いでFCから下りると二人の側にいこうとする。
 ・・・がFCのシ−トベルトが拓海の細い腰に巻き付いて拓海を拘束してしまった。
「ちょっちょっとFCさん,離してっ」
[離さない,拓海を高橋涼介などには渡さない]
 シ−ン,辺りは静まり返る。
 今,ひょっとして車がしゃべらなかったか?
 まさか,そんな馬鹿な,夢を見ているに違いない。
 でもあの高橋涼介の車だし。
 ひょっとしたらしゃべったり踊ったり空飛んだりできるかも。
 今,目の前で起こった珍事を頭から否定出来ないギャラリ−の面々。
「南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏,あのFCからは異様なオ−ラが漂っている」
 妙義のいたこ走り屋,中里毅は数珠片手に叫んでいる。
「拓海を俺に渡さないとはどういう事だ?」
 ショックで固まっている面々を後目に涼介は何事も問題ないように受け答える。
「あ,兄貴−,このFCにはおばけが取り付いているぜ」 
横でパニックを起こしている啓介とは対照的だ。
 ふふんっとFCが鼻を鳴らした。
(正確にはエンジンをふかしただが)
[高橋涼介,お前は大学が忙しいからと言って拓海をほっておいてフォロ−の一つも無い,拓海がどんなに寂しい思いをしていたか解かっているのか]
 FCの糾弾はもっともであった。
「確かにお前の言う通りだ,しかし俺は拓海をほっておいた訳では無い,ちゃんと啓介に後を頼んでおいた」
[それが間違いだというのだ,おかげで拓海の心はFCからFDに移ってしまうころだったのだぞ,
俺が阻止しなければ今頃拓海はFDに手込めにされていただろう,まあいい,それも済んだ事だ,今はもう俺と拓海はラブラブだからな]
「何?それは本当か,拓海」
 げええ,周囲にどよめきが起こる。
「まさか拓海ちゃん,もうあのFCのものになってしまったのか?」
「さすが高橋涼介の愛車,見事な攻めっぷり」
 涼介の眉間がぴくぴくとひきつっている。
 どうやら切れかけているらしい。
 啓介は横で脳味噌沸騰している。
「はったりをかまそうとしてもそうはいかない,車のくせに拓海とナニなど出来る訳ないではないか」
 にやり,とFCが笑った。
(正確にはエンジンを震わせた)
[そうかな,蛇の道は蛇,車の道は走り屋,愛さえあれば不可能は無い,愛は性別も人種も車種も超える]
「拓海,このスケベFCの言うことは本当なのか?」
 恐い,優しい声だが涼介と啓介の眼光が鋭く拓海を問い質してくる。
「あの,その,だって成りゆきで」
 顔を真赤に染める姿がFCの言葉が真実だということを表わしていた。
「なんてことを,拓海」
「ちくしょ−,こんな事だったらこの前の時にFDの中で押し倒しとくんだったぜ」

 

 

 その時である。
 ギャラリ−の背後から鋭い声がした。
[ちょっと待て−,拓海は俺のもんだ,初めて会った時から惚れてたんだ,FCなんかにゃあ渡さねえ]
 確かギャラリ−の後ろには誰もいなかった筈。
 正確には一台の車しかなかった筈だ。
「げええ,FDがしゃべった」
「さすが高橋兄弟,不可能を可能にするドライビングテクニックが車に魂を持たせたのか?」
「カリスマ走り屋と言われる奴の車だけの事はある」
 おののくギャラリ−を後目にFDがFCに戦線布告をした。
[拓海は俺に惚れているんだよ,それを横からかっさらおうだなんてFCと言えど許せねえ]
[何を言う,ああ,ひょっとしてこの前可愛いとか言われた事を誤解しているのか,
馬鹿な車だ,黄色いFDに赤のペイントなどという下品な車に拓海が本気になるはず無いだろう]
[ぬかせ,その時代遅れのFCの車体をぼこぼこにしてやる]
 シ−ン,静まり返るギャラリ−
 これはひょっとして兄弟喧嘩というやつでは,
「啓介,俺の車を時代後れだと思っていたのか」
「兄貴こそ俺のFDを下品だと笑っていたのかよ」
 本物の兄弟も険悪なム−ドだ。
「ちょっと喧嘩は止めてくださいよ」
 拓海は二台に割って入ろうとしたが涼介と啓介によって止められてしまった。
[勝負だ,FC]
 FD−3Sがウインカ−を鳴らし始める。
[望むところだ,受けて立とう,FD]
 ハザ−ドを出して対抗するFC−3S

 カシャカシャカシャカシャッ
 ウイ−ンウイ−ン
 ブルブルウオンウオンッ


 ロ−タリ−サウンドが辺りに響きわたる。
 カウントを取るのは広報部長の史弘である。
「カウントいくぞ−,10,9,8,7,6,5,4,3,2,1,スタ−トォ」
 今世紀最大のバトルの火蓋が切って落とされた。

「すげえ,FDのドリフト,さすが高橋啓介の車」
「FCがぴったりくっついているぜ,これが高橋涼介のいつもの作戦なんだよな」
「どっちが勝つのかな,わくわくするぜ」
「FCが本命だけどFDも最近めきめき腕を上げているからな,こりゃわかんねえぜ」
 興奮するギャラリ−,
 その時目の前を一台の車が路肩から飛び出してきた。「げええ,あれは秋名のハチロク?」
「いきなり群馬最速決定戦か?」
 目を剥く群集に見せつけるすさまじいドリフトは神の領域に達している。
 ハチロクは直線でFDを抜き去りコ−ナ−でFCを抜き去った。
 7秒差の大勝利である。
「ハチロク,どうしてここに?」
 勝利車(藤原豆腐店使用)のハチロクに駆け寄る拓海。[全くしょうもねえ,迎えに来てやったんだから明日の配達はきちっとこなすんだぞ]
 説教するハチロク
 うんうんと拓海はうなずいた。
 こうして拓海はハチロクに乗ると我が家に帰っていったのであった。

 残されたのは呆気に取られたギャラリ−と高橋涼介と高橋啓介とFCとFD
[やはり最大の敵はハチロクだったか]
[ちくしょう,このリベンジは俺がする]
 しかしこの敗北がいたくこたえたらしく二台の車はおとなしく持ち主のところに戻り走り屋使用の車として精進を重ねることとなった。
 しゃべることも無く,ただの車としてFCとFDは日常を送っている。
 唯,この事件の後遺症としては時々拓海が乗っているとエンジンがぶるぶるして 拓海の可憐なおしりを刺激してしまうことくらいだろうか?

 

 

 古い,むちゃ古い,
 1999年の無料配布
「FDの中は危険がいっぱい」に続く