幾度かの夜が過ぎた
自室で拓海は力なく手の動きを止める
「駄目だ」
体中が火照っている
しかし快楽は訪れない
右手の先には反応を示さない雄が握り締められていた
あいつがいけない
あんな事をするから
あんな事を言うから
今までは手淫で満足できていたのにもうそれだけでは物足りない
「ちっくしょう」
悔しさで視線がゆらぐ
鍵を握っているのは高橋涼介だ
あんな事を言うから呪縛に捕われて快楽を得ることが出来ない
涼介はあの時なんと言ったのか
淫行によるショックで呆然としている拓海の衣服を整えながら耳元で囁いた
「汚れた下着のまま帰るんだ,その方が感じるだろう」そして耳朶を甘噛みしながら呪文を囁く
「拓海はもう俺のものだからね,俺の許可無しに自分でここを弄ってはいけないよ」
我慢できなくなったらここへおいで
俺が吸い出してあげる
涼介の言葉が耳にこびりついて離れない
家に帰れば忘れると思っていた拓海だが実際自分で自慰をしようとして愕然とする
自分で触るのに罪悪感を感じるのだ
何故?
いつもやっている行為なのに
自分を慰めようとする度に涼介の言葉が頭に響く
涼介の許可無しに触ってはいけない
「許可ってなんだよ」
命令される筋合いはないと必死で弄るのだが胸に刺さった刺が拓海の快楽を邪魔してくる
もう一週間が過ぎていた
正常な18歳の男子ならば3日に一度は行なう行為が拓海には出来ない
溜まっているという自覚はある
果実の先端から漏れてくるような飢餓感
出したいのにイくことが出来ない
頭の中がそれだけになる
そういう時に思い出されるのは涼介の舌
想像するだけで漏れそうな感覚が体を支配する
「涼介さんのせいだ,涼介さんがあんな事するから俺はおかしくなっちゃったんだ」
拓海は何度も繰り返し呟いた
全て悪いのは涼介である
自分は何も悪くないと
14日ぶりのミ−ティング
拓海は終わった後に話があるからといって部屋に残ったあの時と同じように向き合う二人
ぎりりっと奥歯を噛み締めて拓海が抗議の声を上げた
「あんたがいけないんだ,あんな事言うから,取り消せよ,あの言葉」
「あの言葉って?」
拓海の憤怒を軽くかわして涼介が面白そうに拓海を観察する
拓海の口から言えるわけがない
あんなおぞましくて,汚らわしくて,拓海を縛り付け る呪文を
かああっと怒りと屈辱に全身を染め上げて震える拓海に涼介は近づいた
ソファの横に座ると優しく問いかける
「イけなかったんだろう,もう二週間だ.限界なんだろう?」
そして涼介は淫靡な微笑を浮かべる
「どうして欲しい?拓海の望んだ通りのことをしてあげるよ」
優しい束縛
拓海が動くのを待っている
「・・・あっ」
拓海の唇から吐息が漏れた
隣に座っているだけなのに涼介の体温を痛い程感じる
それだけで二週間の間どんなにがんばっても反応をしめさなかった果実が震えた
「ああっあんたがいけないっ涼介さんがっ」
涼介の視線が選択を迫る
「どうして欲しい?黙っていたら解からないよ」
拓海は屈辱に身を震わせながらゆるゆると足を開いた「・・・触って」
「触るだけ?」
涼介は面白がっている,と拓海は感じたがもう欲望に嘘は付けない
「嘗めて,あっ涼介さん」
「いい子だ」
涼介の華麗な唇が下りてきた
拓海はのけ反ってそれを貪る
獲物は罠にかかった,自分から
to be continue