「これが女の心意気」

 

 

最近高橋啓介に恋人が出来たらしい
お相手は峠で知り合った走り屋という噂
高橋啓介にぞっこん惚れ込んでいて啓介の方もまんざらではない
走り屋のくせになかなか可愛くてストライクゾ−ン
ドラテクもなかなかの腕前
なによりもロ−タリ−好きなその相手
「あ−あ,やっぱ金持ちと顔のいい奴には勝てないのかよ」
なんてなげきも白々しく響くぐらいにお似合いなのだ


 啓介君と恭子ちゃんは


「馬鹿,啓介さんなんて嫌いだ」
ここは秋名銀座の一角
ある有名豆腐屋の二階である
その部屋の主,藤原拓海は悲しみにくれていた
パンダを悩ます原因は最近のホットニュ−ス
啓介恋愛発覚事件しかない
「馬鹿,俺の事好きだっていったのに」
枕をぼふぼふ叩きながら拓海は悪態をついた
このパンダクッションも啓介からのプレゼント
よくよく見ると拓海の部屋は啓介からのプレゼントでてんこもり 啓介からのが一番多いがよく見ると涼介からのもまじっている
(啓介のは質より量であるが涼介は質重視の一点集中型プレゼントだ)
それに混じって秋山渉や小柏カイのやら,何故かエンペラ−からの貢ぎ物もそろっている
みんなに人気のパンダなのである
が,今のポイントはそういうことでは無い
「馬鹿,啓介さんの馬鹿−」
実はここだけの話
高橋啓介と藤原拓海はお付き合いしているのだ
ダブルエ−スでライバルだったこの二人
何時の間にかラブラブフォ−リンラブ
なんてことはありえない

「好きだ−っ結婚してくれ−」
「だから俺は男なんだって」
「そんなに可愛いのに本当に男なのか−っ俺に確認させえくれ−」
「やめろ−っ変態−っ」
「男でも構わない,愛さえあれば」
「愛なんてない−っやあっどこ触ってるの−っやあぁ」
「たくみ−っアイラブユ−」

 

 

こうしてどこかズレてるパンダ拓海と獣の欲望高橋啓介は恋人同士になったのであった
しかし意志の疎通もないままにこういう関係になってしまったのだからお互いにお互いの思いに自信が持てなくて,ちょっとのことでぐらぐらしてしまう
おまけに今回は啓介の浮気発覚
お相手は最近ヤンマガデビュ−をはたした走り屋少女の恭子ちゃん
彼女は大のロ−タリ−マニア
そして啓介を運命のダ−リン,ロ−タリ−に乗った王子様と呼んでいる
人呼んでロ−タリ−プリンス啓介
彼女は他のミ−ハ−おっかけとは違いきちんと走り屋としての腕と度胸と輝くばかりの若さを持っていた
素直で可愛い峠の美少女
これにおちない走り屋はいない
と皆様は思うだろう
当然彼女はアイドルに,
ところがぎっちょん群馬にはおそるべしアイドルが存在したのだ
プロジェクトDにはダブルエ−スの片割れ
ピンクのパンダアイドルがすでにいる
パンダの魅力に取り付かれた走り屋はそんじょそこらの美少女なんぞ見向きもしない
では何故啓介と恭子ちゃんは噂になってしまうのであろうか
まず,啓介はパンダマニアからダブルエ−スの特権でパンダ独り占めの恨みを買っていた
パンダマニアにとって邪魔な啓介が女の子とくっついてくれるのは大賛成
ここぞとばかりに啓介と恭子ちゃんの噂を流しまくったプロジェクトDのメンバ−もそれに参加する
啓介がまっとうな恋愛にいってしまえばライバルが一人減る
それに最近,啓介と拓海はダブルエ−スで仲良すぎ
拓海不可侵条約のメンバ−はこれ以上拓海と啓介の接近を許すわけにはいかないのだ
プロジェクトDのメンバ−は好意的に恭子ちゃんを迎えたのであった
お墨付きを頂いた恭子ちゃんの猛烈アタックはすさまじかった
啓介のパンダの虜になっていなかったら落ちていただろうこと間違いなし
そんな時のことである
迫ってくる恭子ちゃんに苦笑いしながら,啓介はあることを思いついた
(ひょっとしたらこの状況は利用できるかも)
実はここだけの話
啓介と拓海はまだBまでしかいっていないのだ
俗に言う清い関係
高校生じゃあるまいに,というが拓海はまだ高校生
啓介はやる気満々なのだが拓海が最後の一線を許してくれない
そりゃあ男同士なんだから抵抗があるのもわかる
あそこにナニをいれちゃうなんて恐いだろうし,啓介のナニは人一倍大きくて馬並みだから拓海の可愛い尻尾が裂けてしまう危険もある
それが分かるから啓介は必死になけなしの理性を総動員して触りっこで我慢していたのだ
(でも拓海が嫉妬してくれたら)
でへへっと啓介の顔がゆるみまくり
嫉妬,それは大人へのスパイス
恋愛に嫉妬は不可欠
嫉妬することで相手への思いを再確認する
そうしてそれは恋愛を更に奥深いものにするのだ
嫉妬のスパイスが大人の扉を開いてくれるかもしれない(初めての夜はどこがいいかな)
群馬の観光パンフレットを見てにやにやする啓介
やっぱ初めては二人で旅行して自然にそういう関係になるのが一番
終わった後に余韻を楽しみながら温泉にひたるのも群馬者のデ−トの楽しみだ
(温泉かあ,くうう)
湯煙の中,パンダの尻尾がゆらゆら
啓介のナニもゆらゆら
「うっ鼻血が,いかんいかん」
妄想にひたりながら啓介はパンフレットを検討するのであった

 

 

 

 そして最初の拓海の苦悩へと戻る
拓海は悩んでいた
啓介に強引に求愛されてつがいの関係になってしまった事に拓海は疑問をもっていた
「やっぱ男同士なのに不自然だよね」
どうも何かが違うんじゃないかと考える暇もなく押し倒されて尻尾撫でられた流されてしまった
もちろん拓海は啓介が好きだ
だが自分は伝統ある秋名の藤原豆腐店の跡取り
男同士でホモるというのには抵抗がある
「別に恋人じゃなくてもライバルで十分だし」
そう,ポイントはそこ
わざわざ男同士で茨の道を歩かなくてもいいのでは
「よし,別れよう」
そしてお友達に戻るのだ
これが今の拓海には最善の道に思えた
パンダの頭脳はまだお子様で恋愛にうといのだ
 あやうし啓介,作戦は完全に裏目にでているぞ

 

 

 啓介と恭子の仲は急速に発展していった
「王子さま−っお弁当作ってきたの,恭子の手作り」
いそいそと出される弁当を見せつけるように啓介は受け取る
「ありがとよ,いっつも悪いな」
キラリンッ白い歯は走り屋の身だしなみ
(啓介がヘビ−スモ−カ−なのにつっこみを入れてはいけない)
弁当を受け取りながらこっそり横目で拓海の反応を観察する
(嫉妬してくれているかな,でへへ)
ジェラシ−に身悶える拓海を想像すると啓介の股間もエレクトしてしまう
だがしかし,そこには
「美味しいだろう,俺の手作りなんだよ」
「はい,涼介さんはなんでも出来るんですね」
ノオオ−ッなんでそこで兄の手作り弁当を食べている拓海がいるのだ?
(拓海−っお前は俺の恋人なんだから兄貴の弁当なんて食うなよ)
つっこみを入れる啓介だが自分は恭子ちゃんの弁当を食べているのでおちがつかない
ぶるぶると震える啓介に恭子ちゃんがすかさずお茶を差し出してくれる
(くおおおお−っ俺は不幸だ)
がしがしと弁当を飲み込むと啓介は次の作戦に出た
「お礼に俺のFDのナビに乗ってみるか?」
「きゃああ−っ恭子感激」
にやりっこれならさすがの拓海もジェラシ−の虜
啓介が横目で伺うがあれ?拓海がいない
「藤原なら涼介さんのFCに乗せてもらっているぜ」
気の毒そうに教えてくれる松本
(ぐおおおお−っ拓海の奴−っ浮気しやがって)
拓海をジェラシ−の渦に巻き込むつもりが自分が嫉妬の嵐ど真中
(これはお仕置が必要だな)
あくまで自分勝手な啓介であった

 

 

 深夜,拓海は啓介に呼び出された
「話がある」
有無をいわさぬその態度,拓海は緊張に毛が逆立ってしまう
(とうとうやってきた,別れの予感)
呼び出しの内容は別れ話に違いない
きゅううん
拓海の可憐な心臓がきゅうっと締め付けられる
男同士だから仕方がないんだっと思い聞かせてもやっぱり拓海は啓介が好きなのだ
別れの予感を自覚するとパンダのハ−トは切なくなってしまう
なんといっても啓介は初めてマ−キングされた相手なのだ
例えそれがBまでだったとしても肌を許した最初の相手だけに別れは辛い
(でも,それが啓介さんのためなんだから)
拓海は健気に尻尾を震わせた
 啓介のFDの音が秋名銀座に鳴り響く
文太に見つからないようにこっそりと家を出た拓海は無理矢理に押し込まれた
啓介は無茶苦茶怒っている
ああ,やっぱり別れの気配
緊張している拓海を乗せてFDは目的地へと向かった

 

 


 秋名ファッションホテル 暁御殿
なんか悪趣味な名前である
拓海は強引にホテルに連れて込まれて啓介と向き合った
「お前どういうつもりだよ,兄貴のFCなんかに乗りやがって,ホテルに連れ込まれちまうぞ」
いや,連れ込んだのは啓介さんなんですけど,というつっこみも入れられないような険悪な雰囲気である
「でも,乗せてくれるっていうから」
「乗せてくれるんならどんな車にものっちまうのかよ うおおおお−」
「俺,男だから危ないことにはならないですよ」
ホテルに連れ込むような変態は啓介だけだと暗に指摘するのだが
「お前は俺の恋人なんだぞっわかってんのかよ」
きょとっと目をしばたかせる拓海
ああああ,啓介が一気に脱力した
このお子様パンダは自分の魅力をわかっていない
「俺,まだ啓介さんの恋人なんですか?」
だああっ啓介は憤死ものだ
「何いってんだよ,この前触りっこしたじゃねえか」
「でも,恭子さんがいるし」
ぴぴぴっ啓介のアンテナが反応する
「なあ,やけた?嫉妬した?」
目を血走らせながら啓介が拓海に詰問してきた
あまりの迫力にこくこくと頷くと啓介が満面笑顔で拓海を抱きしめる
「そうか−っあんまり無反応だったから嫉妬もしてくれないのかって心配したぜ」
うにゃにゃっ別れの筈が雲行きが怪しい
「分かったぜ,拓海は俺に嫉妬させたいから兄貴のFCに乗ったんだな,拓海の高度な作戦だったとは,ひっかかっちまったぜ」
啓介はすごく嬉しそうに拓海をぎゅうぎゅう抱きしめる抱きしめてそのままの勢いでベットに押し倒してくる
「啓介さん,なんかあたってる」
太股に馬並みの何かがあたっている
「お互いの思いを確認したところで,さあ,拓海,ロストバ−ジンだぜ」
ちょっと待て−っ別れの予感の筈がロストバ−ジンの予感になっている
「駄目−っ俺まだ未成年だし啓介さんとはダブルエ−スだし無理無茶絶対駄目−っ」
パニックパンダは支離滅裂なことを叫んでいる
「大丈夫だって,誰でも初めは初心者だぜ」
むふふっ馬並みの啓介が獣の勢いで拓海を蹂躙しようとした,
その時である
「ちょっと待った−っ」
バタンッ猛烈な勢いでホテルの扉が蹴破られる
そこに仁王立ちしていたのは,なんと驚くべきことにあの走り屋美少女恭子ちゃんであったのだ
「てってめえっなんのつもりだ」
焦り前を隠そうとする啓介に向かってフラッシュの嵐
よく見ると恭子はニコンを抱えている
何を考えたのか恭子は三脚を取り出すとカメラを設置し始めた
「さあ,いいわよ,始めて」
いやっいいわよって言われても困るんですけど
「どういうことだっこれは?」
恭子は得意満面に答える
「あたし,走り屋カメラマンなの」
は?意味が分からないんですけど
はてなの啓介に恭子は親切な説明をしてくれた
 深作恭子20歳乙女座
車の製造工場で働くのは仮の姿
実は彼女は名うてのパパラッチなのである
そう,懸命な読者の皆様はもうお分かりであろう
恭子は峠専門のパパラッチ,報道カメラマンなのだ
彼女の最近のタ−ゲットはアイドル拓海のお相手
「啓介さんはとっても恭子の好みだけど拓海ちゃんのお相手じゃあ諦めるしかないわ」
「それじゃあお前,俺に気があるふりして実は拓海が目当てだったのかよ」
恭子は辛そうな顔をする
「ばれちゃあ仕方ないわ,でもこれだけは信じて,タ−ゲットに接近するだけの筈だったのに恭子は啓介さんのことを本気になっちゃったの,あああ,私って不幸」
不幸なのは寸どめの俺だ−っ
啓介の叫びがホテルに響く
「私と啓介さんはロミオとジュリエット,狩人と獲物.しょせんは報われぬ恋なの,仕事を選んでしまう恭子を許して」
カシャッ彼女をカメラを構え直した
「さあ,啓介さん,いいのよ,私のことは気にしないで,思う存分エッチして私にベストショットを取らせてちょうだい」
シャッタ−を切る彼女はプロであった
「拓海ちゃんのいやらしい姿,恭子は取りきってみせるわよ」
やる気満々の恭子
しかし,いくらさあどうぞと言われても,困るのですが
「出来れば俺的には拓海と二人きりで初夜を過ごしたいんだけど」
恭子に押されながらも啓介がお伺いをたてる
「駄目よ,そんなことは拓海ちゃんファンが許さないわ,大丈夫よ,恭子が奇麗にとってみせるから」
彼女は生まれながらのパパラッチ
例え惚れている男が別の相手を抱いていてもこのシャッタ−チャンスは逃さない
 ふるふるふる
それまで黙って聞いていた拓海の怒りが臨界点に達した本気で悩んだのに
啓介さんと恭子ちゃんの幸せのためならと思って身を退く覚悟だったのに
「こんのくされ外道−っ」
入魂の一撃が啓介の股間に命中する
「あんぎゃああ−」
啓介の悲鳴がホテルに児玉した
「ベストショットだわ,これが噂のパンダキック」
興奮しながら恭子はシャッタ−をきりまくる
ああ,もうなんだかわからんがはっきりわかっている事は一つだけある
啓介と拓海がラブラブになるのにまた新たなる障害が出てきたということだ
「いいわ,拓海ちゃん,こっち向いて−」
恍惚とした表情でシャッタ−を切るパパラッチはこれからも拓海と啓介のベストショットを入手すべくことごとくホテルに進入してくるであろう
股間を押さえながら啓介はぽつりと呟いた
「俺は不幸だ」