「女王様と私」   

 

それはなんの変哲も無い唯の暇潰しの筈であった。
 久しぶりに遠征でもしてみるかと言うことで選んだのは秋名峠。
 選ばれた理由は赤城から近いからというその程度。 
 はっきり言って期待などしていなかった。
 いつも大学で忙しい兄がこの週末珍しく手が空いた。 
それならば慣れて少し飽きている赤城の峠では無く別の場所に遠征してみようという話になったのだ。
 妙義には中里がいてやっかいだし,日光だと遊びにはちと手強い。
 気軽に相手をからかって遊べるとなれば秋名だろう。 その程度の遠征の筈であった。




 俺の名前は高橋啓介。
 21歳の大学生で気楽な身分だ。
 家は病院を経営していて親は両方医者,
兄弟も医者志望というすごい家族だが,
まあ俺は次男という気楽さから医大にもいかずぶらぶらしている。
 兄が医者になって俺には経営の方をやらせようと親は目論んでいるらしいが,
はっきりいって俺のいっているところは二流も二流の大学。
 一応経済学は習っているけれど将来の見通しは暗いかもしれない。
 だがそんな弟の尻をぬぐってなお余りあるのが高橋涼介,自慢の兄貴だ。
 兄は群馬大学始まって以来の天才と言われている将来有望な医者の卵だ。
 そう言うと頭の固い勉強おたくと思われるだろうがうちの兄貴はちょいと違う。
 そういう周囲の期待とか羨望とかを軽がると背負って期待に答えて趣味も充実させている。
 実はここだけの話,兄貴の趣味で俺もはまっているのが車,
 俺は兄貴に車の運転を習って峠の攻め方を教わった。
 兄貴は赤城の白い彗星と呼ばれるくらいのすごい走り屋である。
 走り屋,一般には聞き慣れない言葉だが群馬とか,山の多い田舎ではメジャ−な人種?だ。
 知っている奴,車好きな奴には憧れの神様みたいな伝説の走り屋の兄。
 俺もやっぱり兄に憧れて走り屋になった。


 車は面白い。
 兄と一緒に峠を攻めていると女なんいらないし夢中になれる。
 だが,最近兄貴は大学の方が忙しくて中々峠に来れなくなっていた。
 そろそろ国家試験も近い。
「もうそろそろ潮時かもしれないな」
 兄貴は時々そう言って寂しそうに笑う。
 俺には兄貴の気持ちが痛いほど解かった。
 兄よりも強い走り屋がいないから,兄に勝てる奴が存在しないから兄は走るのがつまらなくなっているのだろう。
 そんな兄貴が久しぶりに峠にやってきて俺達は面白いゲ−ムをしようと俄然盛り上がった。
 お遊びの遠征である。
 レッドサンズの仲間と軽く流してやってきた秋名峠。
 そこで最速だと豪語していた秋名スピ−ドスタ−ズとバトルする段取りはつけた。
 だが,その秋名スピ−ドスタ−ズの実力と言えば。


「雑魚ばかりだな」
 頂上で秋名スピ−ドスタ−ズの連中が走っているのを見ながら兄貴はため息をついた。
「これならうちの2軍でも楽に勝てる」
 一応今回のバトル,レッドサンズナンバ−2の啓介が走ることになっていたがわざわざ啓介が出ることも無いように思えた。
 だが,兄は啓介が橋って実力を見せつけてやれと言うので俺はFDでバトルすることになった。
 兄はそのまま赤城に帰っていったが俺は残って秋名を走る事にした。


 遠征をしたその夜,数人の仲間と秋名の走り込みをしていた時の事だ。
 バトル相手は雑魚だが峠としては秋名は面白いコ−スである。
 5連ヘアピンを何度か攻めているうちに夜も更けてガスも残り少なくなってきた。
 そろそろ帰るかと思いダウンヒルをしていた時,背後からものすごい勢いで迫ってきた車があった。
「このレッドサンズナンバ−2である高橋啓介にあおりくれるとはいい度胸じゃねえか」
 俺はアクセルを思いきり踏み込んだけれど,相手を引き離すどころか張り付いてくる。
 一体どこのチ−ムの野郎だ?
 車種は?ハチロク?
 ドライバ−の姿までは確認出来なかった。
 そいつはFDを軽がると抜かして,なんと慣性ドリフトを仕掛けてくださって俺はちぎられてしまった。
 こんな屈辱は始めてだった。


 それから毎晩,秋名の峠を走り込んだ。
 毎晩,ガスが無くなるまで走り込むがあのハチロクは現れない。
 苛々する。
 会いたい,会ってリベンジかまさなければ俺の気が納まらねえ。
「何をそんなにムキになっているんだ」
 兄にもからかわれた。
 俺もやけにマジになっているなと思ったけれども寝ても覚めてもあのハチロクの事が忘れられない。
 毎晩通いつめたけれども結局会うことは出来ずに交流戦の日を迎えることとなった。
 兄貴は俺の話を聞いて興味をそそられたらしい。
 珍しい話だ。
 来ない予定だった兄貴も急遽予定を変更して一緒に秋名へ行くことになった。


 秋名の峠は案の定,すごいギャラリ−である。
 そりゃあ兄貴と俺が来ているのだから当たり前だろう。 
間違っても秋名の輩目当てのギャラリ−では無い。
 俺と兄貴はドラテクを見せつけるかのようにパラレルドリフトをしてギャラリ−を煽った。
 そうこうしているうちに時刻は9時45分
 まだ秋名のおばけハチロクは来ない。
「ちくしょう,来てねえよ,あのハチロク」
 こうなったら大差をつけてあいつらに恥をかかせてやらなきゃ気がすまねえ。
 いきりたつ俺を兄貴は慰めた。
「まあいいじゃないか,そのうち現れるさ」
 せっかちだな,啓介はいつも
 そう言って兄貴は俺の頭をこづいた。
「全く兄貴はいつも俺の事子供扱いしやがって」
 この兄貴には勝てないと思うのはこういう時だ。
 沈着冷静でどんな時でもうろたえない兄貴の事を俺は尊敬している。
 そんな兄貴の態度と笑顔は俺を安心させてくれる。
 その時であった。
 麓から連絡が入ったのは。
 時間ぎりぎりにやってきたのはあのハチロク。
 白と黒のツ−トンの旧式の86は滑らかな運転で俺のFDの横に止めた。
 ガシャッ
 ドアが開いてドライバ−が下りてくる。
 どんな奴なのか?
 俺は腹に力を込めて相手を見定めようとした。

「拓海−?どういう事だ一体」
「親父さんが来なくちゃ話にならないだろうが」
 スピ−ドスタ−ズの連中は下りてきたハチロクのドライバ−を取り囲んで何か文句を言っている。
 俺は呆気に取られてしまった。
 さぞかし間抜けな面をしていただろう。
「啓介,口開いているぞ」
 兄の言葉に慌てて気を引き締める。
 だがそういう兄貴もちょっとは動揺しているらしい。 そりゃあそうだろう。
 相手はどう見ても中学生の男の子だったのだから。


 その少年ははっきり言って相当可愛かった。
 亜麻色の髪が夜風になびいている。
 潤んだ瞳が大きく輝いていて少女のようでもあった。 
中性的な体,まだ成長しきっていないこの年頃の子供特有の華奢な肢体。
 なんというか,栗鼠とか小鹿とか兎とかみたいに小動物系。
 守ってあげたくなるようなフェロモンを全身から出している。
 ギャラリ−もレッドサンズの仲間もみんな絶句していた。
「おい,あんな子にバトルなんか出来るのかよ」
「無理だろ,それ以前に免許もっているのかな」
 みんな心配そうに伺っている。
 そんな中で拓海と呼ばれた少年はふいっと系介の方を向いた。
「前に一度やって勝っているから」
 俺の方に視線を向けたままスピ−ドスタ−ズの連中に答えている。
 その向けられた瞳がやけに澄んでいて可愛らしくて俺はどきまきしてしまった。
「意外だったな,あの子がドライバ−とは」
 兄も興味をそそられたらしい。
 こういう言い方を兄がするときは余程気に入った証拠だ。
 俺はちょっと焦った。
 何故かしらないけれど,あの子を守ってあげるのは俺だという気持ちが沸き起こったからだ。
 最初にあいつを見つけたのは俺,
 あいつとバトルするのも俺。
 だからあいつを守るのも俺の役目だ。
 柄にも無くそんな気持ちが沸き上がってきた。
 今からあの子とバトルすると言うのに。
 拓海の車は旧式のハチロク
 改造もしていない。
 ノ−マルもいいところだ。
 俺は峠使用のFD3S
 一度はちぎられたけれどもあれは俺が開き名の峠に慣れていなかったせいだ。
 今度は走りこんでコ−スをちゃんと確かめてある。
 俺は勝つだろう。
 これで負ければ赤恥もいいところだ。
 俺に負けたら拓海は傷つくだろう。
 俺はちょっと胸が痛くなった。
 どう見ても場慣れしていない,怯えているかのようにきょろきょろしている拓海。
 スピ−ドスタ−ズに担ぎ出されてしまったのだろうが,負けると解かっているバトルだけに可哀想だ。
 こんな子供にバトルさせるなんてというスピ−ドスタ−ズへの怒りすら沸いてくる。
 仕方ないけれど,出来るだけ傷つけないように勝とうと啓介は思った。


「若いな,名前は?」
 俺の問いかけに拓海が答える。
「藤原拓海」
「俺は高橋啓介」
 それが始めて交わした言葉だったと思う。
 顔と同じで可愛い声だった。
 こういう所に慣れていないからちょっと緊張した声で,恥ずかしそうに俺をちらちら見ていた。
 なんかマジでこいつ可愛いな。
 俺がじいっと見るとますます赤くなりながらよろしくお願いしますと小さく言った。
「おう,こっちこそよろしくな」
 二人が車に乗り込むと史紘がカウントを取る。
 GOの合図と同時に俺達のバトルは始まった。



「セカンダリ−タ−ビン止まってるのかよ,ちくしょう」 啓介は全開でFDを操縦しながら呻いた。
 信じられない。
 大きく引き剥がした筈のハチロクが今,自分の後ろにべったりと張り付いている。
 直線で引き離してもコ−ナ−で追いつかれる。
「くそったれが」
 パワ−の劣る車に追い込まれるほど屈辱的な事は無い。 俺の方が技術で負けてるってことかよ
「負けるかよ,俺はレッドサンズナンバ−2だぜ」
 全開で5連ヘアピンに入る。
 それまではいい勝負だった。
 だが5連ヘアピンであいつは恐ろしい技を使いやがって俺は7秒差で負けた。
 7秒差。
 ハチロク相手に峠使用のFDが7秒差。
 決定的なテクの差を見せつけられた。
 バトルの後で兄貴に溝落としの説明を受ける。
 信じられない。
 いくら慣れた峠だからといっても恐ろしい事をする奴だぜ。
 このバトルは俺のタ−ニングポイントとなった。
 あいつは俺のライバルだ。
 俺だけのライバル
 藤原拓海。





 中里のGTRとやるという話を聞いて朝,俺はあいつを待ち伏せした。
 だけれどもあいつは走り屋じゃないと言い張ってまるで喧嘩するみたいな形で話にならなかった。
 やっぱりあいつは峠の事全然解かっていない素人らしい。
 第一印象の通りだ。
 あいつは速いけれど,何も知らない。
 俺が守ってやらなければ,俺が教えてやらなければという気持ちにさせられる。
 それとは別にライバル心なんてのもちゃんと存在する訳で結構複雑だ。
 とにかく藤原拓海は俺にとって大切な,欠かせない存在になった。
 気になるのは兄も拓海を狙っているらしいという事。
 こればかりはいかに尊敬する兄貴にでも譲れない。
 俺は気合いを引き締めた。
 兄はもてる。
 まあ兄貴はすげえ頭も顔もスペシャルだから憧れる奴も数知れない。
 俺は男として兄貴を尊敬している。
 よく史紘なんかは冗談で俺の事をブラコンンだと言う。 しかも重度のブラコンで治療法が無いとか。
 俺は兄貴の言い付けは全部守ってきたし逆らった事もないからそう見られるのかも知れない。
 だが,拓海だけは例え兄貴と喧嘩しても絶対に俺見のものにしてみせる。
 俺は決意を固めた。



 俺はあのバトルの後,ちょくちょく朝の秋名峠で拓海を待ち伏せる作戦に出た。
 俺が早起きするとは地震が来るといって兄貴にからかわれるがそんな事気にならない。
 拓海に会えると思うだけで目が覚めてしまう。
 朝が待ち遠しい。
 拓海も俺が待っていると本当に嬉しそうにはにかんだ笑みを浮かべてくれた。
 車を止めてちょっと話をする程度だが俺達には大切な時間。
「啓介さんが待っていてくれるから,俺配達するのが楽しくなりました」
 二人で缶コ−ヒ−を飲みながら話をする。
「啓介さんに会えると思うと,運転するのが好きになっちゃうかも」
 拓海はそんな可愛い事を言ってくれる。
「啓介さんと同じ趣味なんだったら,車の事勉強しようかな」
 啓介さんってお兄さんみたいですね
 弟のように俺を慕ってくる拓海。
 すごい可愛い。
 こうも無条件に擦り寄られると溜まらない。
 ちょっと肩を抱くと拓海は俺に体重を預けた。
「拓海は可愛いな」
 そう言うと拓海は真赤になった。
「啓介さんこそ可愛いですよ」
「俺が?そんな事言われたのは初めてだな」
「そうですか,すごく可愛いです」
 拓海が可愛い冗談を言ってくる。
 ああ,俺の拓海。
「好きだぜ」
 俺は拓海の顎を持ち上げた。
「いいか?」
 拓海は目を潤ませながら答えた。
「啓介さんになら」
 重なるシルエット
 秋名の山合いから朝日が差し込んできて二人の愛を祝福してくれるようだった。



 こうして高橋啓介と藤原拓海の愛がスタ−トしたのであった。
 拓海と付き合う事になったその日のうちに俺は兄貴に報告した。
 こういう事を兄貴には隠しておきたくなかったからだ。
「すまねえ,兄貴,でも俺も拓海も本気なんだ」
 愛しあっているんだ,俺達。
 もう兄貴にも引き剥がす事は出来ねえ。
 俺の言葉を兄はじっと黙って聞いていた。
 黙って考え込んでいる。
「・・・兄貴」
 どれくらい時間が立ったであろうか。
 兄は俺をじっと見詰めて言った。
「啓介,拓海はお前の手には終えない」
「なっ何いってんだ,兄貴」
「啓介,拓海は俺でなければ手におえないと思うぞ」
 兄は断言した。
「そりゃあ俺は拓海に負けてるけどよ,俺はあいつを守ってやりたいんだ」
 兄は首を降る。
「無理だ,お前も拓海も傷つくだけだ」
 兄は反対している。
 ショックだった。
「無理じゃねえよ,俺は拓海を愛しているんだ,俺はどんな試練でも乗り越えてみせる」
 拓海と二人で。


 俺の決意が解かってくれたのだろうか。
 兄はそれ以上反対はしなかった。
 唯,俺の肩を叩いてこう言ってくれた。
「何か,困ったことがあったら何時でも相談してくれ,可愛い弟のためだからな,一肌でも二肌でも脱ごう」
「兄貴っ」
「啓介っ」
 やっぱり兄貴はなんだかんだ言って俺の味方だ。
「ああ,なんでも兄貴に相談するぜ」
 俺達は仲直りの握手をしたのであった。

 やっぱりうちの兄貴はすげえ。
 弟に愛する者を取られても笑って俺達を祝福してくれた。
 こんな事並みの男に出来る技じゃねえ。
 俺は感動していた。
 兄のお墨付きも得て俺と拓海は幸せにまっしぐらだ。



 拓海に兄の事を報告したら喜んでくれた。
 そして驚くべき事に拓海は俺を親父さんに報告したいと言ってきたのだ。
「俺と親父は父子家庭でずっと二人でやってきたから,ちゃんと報告したいんです」
 これが自分の愛する人だって。
「拓海,そこまで俺の事を考えていてくれたのか」
「もう,俺啓介さん以外は考えられないんです,啓介さんの事初めて会った時から好きだったんです」
 俺は拓海をぎゅうっと抱きしめた。
「俺もだ,拓海,拓海を一目見た瞬間に俺のハ−トははち切れんばかりにどきどきいったんだぜ」
「俺も啓介さんを見てどきどきしました」
 拓海もぎゅうっと啓介を抱きしめた。
「もう啓介さんは俺の物だって思っていいんですよね」
 なんて健気な拓海。
「ああ,もちろんだ,俺の全ては拓海の物だぜ」
 俺の言葉に拓海は嬉しそうに微笑んでちゅっとキスをしてくれた。
 拓海からの初めてのキス。
 それは俺を有頂天にさせたのであった。



 その日の内に俺と拓海は豆腐屋に行った。
 親父さんはぶっきらぼうで頑固そうで一筋縄ではいかない感じ。
 細い目でじ−っと見られると全て見透かされているみたいだ。
「親父,これが俺の啓介さん,かっこいいだろ」
 拓海ははにかみながら俺を紹介した。
「は,初めまして,お父さん,俺は高橋啓介といいます」
「・・・おうっ」
 親父さんはぶっきらぼうに答える。
 俺はかちこちになりながらも度胸を決めた。
「お父さん,お願いです,拓海君を俺にください,必ず幸せにしてみせます」
 俺はがばっと豆腐屋の店先で土下座した。
 オ−ケ−してくれるまで土下座し続ける覚悟は出来ている。
 親父さんは呆気にとられたかのようにぼりぼり頭をかいていた。
「いい男だろ,啓介さんって」
 拓海が嬉しそうに言う。
「まあな,いい男だぜ」
 親父さんはそう言ってくれた。
 俺は嬉しくてがばっと顔を上げると親父さんの細い目と目があう。
「こんなんでよかったら貰ってやってくれ,だがあんた,拓海と一緒になる覚悟は出来ているんだろうな」
 確認される。
「もちろんです,拓海と一緒ならどんなにつらい事でも耐えてみせます」
 親父は黙ってじいっと俺を見ていた。
「まあ,好みは人それぞれだからな,あんたが納得しているんだったらそれでいい」
 ぶっきらぼうだったが親父さんは俺達を許してくれたらしい。
「啓介さんっかっこよかった」
 まだ地べたに座ったままの俺に拓海が抱きついてきた。「好き,大好き」
 拓海は俺に抱きついてふるふる震えている。
 平気そうに見えてもやはり緊張していたのだろう。
「幸せにするからな,拓海」
 俺がぎゅうっと抱きしめると拓海もぎゅうっと抱きついてきた。
「俺も,啓介さんの事幸せにするからね」
 二人で鼻をくっつけながら幸せになろうと言っていると親父さんは頭をカキカキしながら茶の間に引っ込んでしまった。
「ま,本人達が幸せならいいけどよ」

 こうして高橋啓介と藤原拓海はみんなに祝福されてめでたく公認のカップルになったのであった。


 啓介は幸せだった。
 幸せの七合目に旗を立てていた。
 彼の幸せを極めるには後一押し。
「拓海は初めてだからな,優しくしてやらないと」
 啓介は計画を練った。
「俺も男は初めてだからな,緊張するぜ」
 初めては軽井沢のコテ−ジ
 高橋家の別荘辺りが適当だろう。
 満点の星空の下で拓海と啓介は結ばれるのだ。
「いい感じだぜ」
 俺は未来への未知の興奮に体が震えた。

 軽井沢行きを拓海に申し込むと拓海はすごく嬉しそうにオ−ケ−してくれた。
「いいんですか,本当に啓介さん,俺と一緒に軽井沢にいってくれるの?」
「誘っているのは俺だぜ,拓海」
「でも,俺男だし,啓介さんってもてるから」
 涙組む拓海。
 俺はぎゅうっと拓海を抱きしめた。
「大丈夫だ,俺は男は初めてだけど拓海を愛しているからそんな事は気にならないぜ」
「啓介さん,大好き」
「俺も愛している」
 二人はぎゅうぎゅう抱きしめあった。

 軽井沢へいく前の晩。
 藤原家に一本の電話が入った。
「お−い,拓海,電話だぞ,高橋の兄さんからだ」
「啓介さんから?」
「違う,その兄ちゃんの兄ちゃんからだ」
「涼介さん?」
 拓海は急いで電話に出た。




「拓海,啓介から聞いたよ,軽井沢に行くんだって」
 涼介はずばり確信をついてきた。
「ええ,その予定です」
「お前には啓介は似合わない,不幸になる前に止めるんだ,そして俺の所に来い」
 何時もの穏やかさを感じさせない命令調の口振りで涼介は拓海に話しかける。
「啓介さんは,俺の理想です」
「拓海は自分の気持ちに気がついていないだけだ,拓海に合うパ−トナ−は俺だけだよ」
 優しげな涼介の口調。
「確かに啓介は俺が育てたから完璧だが,拓海には似合わない,お互いに傷つけ合うだけだ」
「そんな事ありません,俺と啓介さんはベストパ−トナ−です」
「ふふふ,強情だな,拓海,そう言い張るならいいだろう,俺は見守っているとしようか」
 涼介はそう言うと電話を切ったのであった。
 次の日,拓海と啓介の愛の旅が始まる
 旅行は啓介のFDで出かけることとなった。
 拓海はハチロクを出さない。
「親父に,明日の配達変わってくれるようにお願いしたんです」
 はにかみながら拓海は答えてくれた。
「泊まりオ−ケ−か,燃えるな」
「俺もです,啓介さん」
 二人とも気持ちは一緒だ。

 軽井沢を軽く流して俺達が別荘に到着したのはもう夕暮れの頃であった。
 買い込んできた食材で拓海は料理を作り始める。
「俺も手伝うぜ,拓海」
「いいんです,啓介さんは座っていてください,俺の手料理を食べてもらいたいんです」
 拓海は嬉しそうに言った。
「そうか,料理の後は拓海を食べてもいいかな.燃えるぜ」
「俺もです,啓介さん」
 二人で燃え上がりながら食事をすることにした。

 拓海の料理は上手い。
 今まで食べたどんなご馳走よりも美味しかった拓海の愛のスパイス入りの手料理。
 俺は舌鼓を打ってもりもり食べて拓海を喜ばせた。
 拓海の料理はそりゃあ上手くて食べ過ぎて,拓海が皿を洗っているうちに眠くなってきた。
 ぐううう−っ

 皿を洗いながら拓海は啓介のそんな様子をじっと伺っていた。
 口元に笑を浮かべながら

 



 ぐううっと惰眠を貪っていた啓介が目覚めたのは真夜中でした。
「俺寝ちまったのか,ちくしょう」
 せっかくの拓海との記念すべき夜なのにかっこ悪いぜ, 急いで起き上がろうと啓介は身を捩らした。
「な,なんだ?これは」
 手が動かない。
 なんと啓介の両手はベットに縛り付けられていたのだ。
「どういう事だ?こりゃあ一体」
 その時横から声が聞こえた。
「啓介さん,起きたんですか?」
 ベットの脇に拓海がちょこんと座っていた。
「拓海?」
 拓海はにっこりと微笑んだ。
「啓介さん,ぐっすりと眠っているから俺心配しちゃいました」
「心配?」
「ひょっとして睡眠薬の量間違えたんじゃないかって」 
睡眠薬?
 きょとんとする俺に拓海は悠然と微笑む。
「料理の中にちょっとだけ,啓介さん薬に耐性ないんですね,よく利いてましたよ」
 どういう事だ?
 状況が理解出来ない。
 そんな俺に拓海はゆっくりと口づけてきた。
 拓海からのキス。
 すげえ上手い。
 俺の口の中に舌を差し入れて舐め回してくる。
「拓海っ」
 マジですげえテクだ。
 この俺ですら翻弄される。
 ちゅっちゅっとキスをしながら拓海は俺に囁いた。
「初めて会った時からこうしたかった,俺の啓介さん」 ま,まさか,まさか拓海は
「お前,攻めなのかよ」
 俺の悲鳴に拓海はきょとんとした顔で答えた。
「攻め?違います,俺はSなんです」
 S?
 Sってまさか,まさか
「お前サドなのかよ」
 拓海はにっこりと微笑んだ。
「啓介さんってすごい俺の理想,初めて会った時から啓介さんは俺の物だって決めていました」
 ざあああっ啓介の全身に鳥肌が立った。
「俺の奴隷,啓介さん」
「ちょっと待て−っ」
 俺は逃げ出そうと抵抗したが両手は繋がれている。
「大丈夫,痛くしませんよ」
 そうじゃない,問題はそうじゃない。
「俺が攻めでお前が受けだろうが,それがお約束だろうが」
「もちろん,啓介さんのこれを思いっきりいじめて泣かせてあげて俺の中で可愛がってあげます」
 覚悟してくださいね。
 拓海はそう言うときゅうっと俺の股間を握り締めた。 うおおおお−っ
 何かが間違っている。
 啓介の絶叫が軽井沢別荘に木精した。
 拓海は受けで,受けで,でも女王様らしい。
 こんなに可愛いのに詐欺だ。
 拓海は啓介の上に覆い被さってちゅっとキスの雨を降らせた。
「初めて見た時から解かっていました,啓介さんが奴隷だって事」
 ジ−ンズの上から俺のいちもつを弄りながら拓海はうっとりと囁いた。
「俺は,マゾじゃねえよっ」
「気がついていないんですね,素敵です」
 きゅっきゅっと俺のいちもちを握り込む
 うう,気持ちいいかも。
「啓介さんの事,俺専用の奴隷に仕込みたかった,ずっと狙っていたんです」
 きゅううっ
 うう,マジで気持ち良い
 ジ−ンズが痛い。
「拓海,手を解けよ」
「駄目です,奴隷は命令しちゃいけません」
 きゅうっきゅっきゅっ
 俺のいちもつはその手管でびんびんだ。
 マジ涙でるくらい痛い。
「ジ−ンズ痛いんだよ」
 拓海はくすりと笑った。
「可愛い,啓介さん」
 涙ぐんでいる所が最高。
「啓介さんの事,もっと泣かせたいんです」
 拓海は自分の来ている物を脱ぎ去った。
 おおおお−っ
 白くて美しい拓海の肌が露になる。
 華奢で可愛い俺の天使。
「俺に触りたい?啓介さん」
 俺に覆い被さって翻弄する小悪魔めが
「触りてえよ,それで俺のこれを拓海にぶちこみてえ」
 つい本音が漏れてしまうと拓海はくすりと笑った。
「その強気な所がとっても素敵です,やっぱり啓介さんは唯の奴隷じゃないと思っていました」
 なんなんだ,その奴隷ってのは。
「苛められて涙ぐんでいるところなんて最高,ねえ,啓介さん,見てて」
 拓海は俺の手を開放させないまま,俺の上で自慰を始めた。
 うおおおお−っ
 すげえ色っぽい
 鼻血を噴出させる俺,相当情けない。
「あぁ,んっ啓介さん,素敵」
 ちくしょう,それは俺の役目だろ。
 拓海の事弄って可愛がってやるのを夢みていたのになんだ,このシチュエ−ションは
「ああんっ啓介さんっ見てっ見てぇ」
 拓海は俺の胸に顔を埋めると自分の果実を握り込んで上下させる。
 くちゅくちゅと音が聞こえて俺の雄は猛り狂う。
 ジ−ンズに食い込んでマジ痛い。
「たくみぃっ」
「あんっ啓介さんっああぁ」
 大きく喘いで拓海の果実から蜜が溢れ出る。
 それが盛り上がっている俺のジ−ンズに降りかかった。
「拓海,なあ,縄解いてくれよ,俺お前に触りたいぜ」「駄目,もっと啓介さんは見てて」
 拓海は体を起こすと俺の上から下りて近くの椅子に腰掛けた。
 そして傍らにあった物を取り出す。
 まさか,まさか
「啓介さん,涙出てますよ」
 俺は情けなさに涙がちょちょ切れた。
 拓海が取り出したのはおもちゃ。
 大人のおもちゃってやつだ。
 細身でアスパラガスみたいな・・・
 ・・・アナル専用
 ウイイイイ−ンッ
 ひいいいっ
「啓介さん,泣いてる,可愛い」
 拓海はジ−ンズの上から俺の雄にそれを押し当ててきた。
「あ,やべえっ拓海っやめろって,うぅ」
 雄の先端をおもちゃで弄られる。
 ウイイイ−ンッ
 すげえ気持ち良い
「啓介さん腰揺れてる」
 ふふふっと拓海は笑った。
 小悪魔の微笑だ。
「ねえ,舐めて」
 拓海はひとしきりおもちゃで俺の先端を弄るとそれを口元に寄せてきた。
「啓介さんの唾液でべしょべしょに濡れたこれ,俺の中に入れたい」
 うおおお−っ
 なんて色っぽいんだ。
 俺は夢中でそれを舐めた。
「俺,鞭とかろうそくは使わないから安心して,こうやって啓介さんを泣かせたいだけなんだ」
 俺のだと思って舐めて。
 そう言われるともう堪らない。
 拓海のものだとも思いながら俺はアスパラガスに舌を絡めた。

「ああん,啓介さん,見てる?」
 俺の唾液でべたべたになったおもちゃ,それが拓海の中に入り込んでいく。
 可愛らしい蕾に似つかわしくないそれ。
 ウインウインと音をたてながらそれを拓海は全部ふくんだ。
「あんっいいっ,すごいっ啓介さん」
 慣れたその様子に俺は疑問が沸いた。
「たっ拓海ってその,経験あるのかよ」
 腰をゆらしながらうっとりと拓海は言う。
「後ろはおもちゃとかで遊んだ事があるけど,俺が奴隷にしたいと思ったのは啓介さんが初めて」
「俺が初めて?」
「そう,女の子ともしたことないよ,男ももちろん,啓介さんが初めてなの」
 うおおおお−っ
 ジ−ンズをやぶらん限りの勢いで俺の男は勢いを増した。
 じわっと先走りの精液が滲んでくる。
「啓介さん,すごい,俺に触りたい?」
「ああぁっ触りてえっ拓海の中に入りたいぜ」
 俺もう我慢限界。
 拓海は椅子に腰掛けて大人のおもちゃで遊んでいて。「やんっああんっ啓介さんの視線を感じるの」
 拓海は一際大きくのけぞって,果てた。

 下半身を自分の蜜でべたべたにして拓海は俺に近づいてきた。
「啓介さん,舐めて」
 舐めて俺のべたべたな下半身奇麗にして。
「拓海,拓海ぃ」
 俺の目の前に差し出された果実。
 今まで焦らされていた分,俺はむしゃぶりついた。
「あんっああんっいいっ啓介さぁん」
「いいだろ,だからもうこの縄ほどけよ,おもちゃよりぶっといもの入れてやる」
 れろれろと舐めると拓海は気持ちよがって腰をゆらす。
「限界だぜ,入れさせてくれよ,なあ」
「駄目,駄目ぇっあああぁ」
 拓海の果実も限界だ。
 男のものだなんて嫌悪感は無かった。
 可愛い拓海の果実がぷるぷる震えている
 飲んでやろうと思ったとき拓海は腰をひいた。
 ぴしゃっ
「あん,最高」
 拓海は大きく息をつきながら俺の顔に口づけしてきた。 
拓海の蜜が降りかかった俺の顔に。

 顔射?

 がああ,俺がやりたいと密かに思っていたのに。
「拓海,ひでえよ」
 俺はマジで泣けてきた。
 そんな俺に拓海はキスの雨を降らす。
「可愛い,啓介さん,今気持ち良くさせてあげる」
 そのまま拓海は体を移動させた。
 びんびんの俺の息子にジ−ンズ越しから舌を這わす。
「う,いいっいいぜ,はあぁ」
 フェラか,
 拓海のお口でフェラ
 考えただけでイってしまいそうだ。
 だが拓海はすっと俺から離れた。
「もっといい事してあげます」
 そして俺の足を持ち上げた。
 まさか,まさか,このパタ−ンは?
 全身鳥肌がたって縮こまった俺のナニに拓海が足の裏をすりつけてきた。
「電気アンマ,好きでしょう,啓介さん」
 ちょっと待て−
 ぐりぐりぐりっ
「たったくみぃっあうっやめろっううぅ」



 我慢限界だった俺は拓海の電気アンマ攻撃にあえなく敗退したのであった。


 「酷えや,拓海の中でイきたかったのに」
  ぐしぐしと枕を涙で濡らす俺。
  拓海は俺の髪を撫でながら囁いた。
 「大丈夫ですよ,もっと啓介さんの事,奴隷として調教したらご褒美に,ね」
  あああ,どこで間違ってしまったんだ。
 「俺はMじゃねえ,違うんだ」
  絶叫する俺に拓海はにっこりと一言
 「啓介さん,気がついていないところが可愛い」
  俺と拓海の愛は路線を大きく脱線しているらしい
  


 二人が旅行から帰ってきた夜,藤原豆腐店の電話が鳴り響いた。
「旅行は上手くいったのか?」
 涼介からの電話である
「ええ,とっても」
 拓海は満足そうに答えた。
「確かに,啓介は奴隷として完璧だろう」
「はい,さすが涼介さんが長年育ててきてスポイルしてきただけの事はあります」
 弟根性を小さい頃から涼介に植えつけられてきた啓介。 奴隷の条件を見事に満たしている。
 (もちろん涼介は調教はしていないが。これは兄弟愛の本では無いので)
「だが,拓海はそれだけでは満足出来ないだろう,俺の元へ来れば最高の快楽を与えてあげられるよ」
 涼介の言葉に拓海はにこっと笑った。
「駄目ですよ,涼介さんSじゃないですか,俺はMじゃありません」
「いや,拓海には素質がある,俺の元で調教してあげれば必ずや究極のMになるだろう」
 確かに涼介は魅力的だけど,
 拓海は首を振った。
「俺の奴隷は啓介さんだけです,涼介さんとは趣味があいません」
 そしてふと考えた。
「どうして涼介さんは啓介さんを奴隷にしなかったんですか」
 あんなに可愛いのに。
「あれは俺の趣味では無い,攻めだからな,俺は拓海のような可愛くて果敢なげな奴隷が欲しいんだ」
 拓海は俺の理想の奴隷なんだよ。
 そう言う涼介に拓海が笑って答える。
「だから俺はSですってば」
「今はそういう事にしておこう,啓介に飽きたら,Sに飽きたらいつでも俺のところにおいで,調教してあげるから」
 涼介のこの自信はどこから来るのだろうか。
 さすがカリスマS
 実はここだけの話
 涼介はその世界ではカリスマ様なのだ。
「考えておきます」
「いい答えを,期待しているよ」
 こうして電話は切れたのでだった。

 何も知らない啓介。
 今も自分の部屋でベットにうずくまりながら涙で枕を濡らしている。
「次こそは俺のいちもつで拓海をあんあん言わせてみせる,奴隷脱出だぜ」
 拓海と啓介の愛は脱線しまくって突き進むのであった。



 うきうきと旅行から帰ってきた息子を見て親父はふううっとため息をついた。
 どうやらあの金髪の兄ちゃんとうまくいったらしい。 だが,
 親父は頭をぼりぼりとかいた
「まあ個人の好みだからなあ,こればっかりは」
 あの兄ちゃん奴隷なのかよ。
 あんなに男前なのにMとはねえ
 親父には解からない世界だ。
 息子がそっちの趣味なのは知っていたが。
「割れ鍋に閉じ蓋ってか」
 まあいいけどな。
 息子が幸せならさ。
 親父はぷか−と煙草をふかしながら今日も豆腐作りに励むのであった。


 

 

「女王様と奴隷」

それはプロジェクトDの飲み会の後。
 はっと気がつくと啓介はベットに横たえられていた。 やられた。
 酔い潰れてしまったらしい。
 いやいや,また薬を盛られたのか。
 またもや手は縛られている。
「た−く−み−っ」
 俺が地を這うような声を出すと隣からうきうきした声が聞こえた。
「起きた?啓介さん」
「起きたかじゃねえだろ,また睡眠薬盛ったのかよ,ちくしょう,手ほどけよ」
「やです」
 うるるんっと拓海は答える。
 ちくしょう,可愛いじゃねえか。
 こんなに可愛くて可愛くて可愛いのに,Sなんだよな。 こんなに受け受けなのにSなんだなあ。
 とほほ
 拓海は俺とラブラブだ。
 ラブラブなんだけど,俺は拓海の奴隷らしい。
 ちくしょう,下剋上してやる。
 そんな決意を固める俺に拓海は覆い被さってきた。
「薬,利いてきましたか?」
「あああ,やっぱり一服盛ったんじゃねえか」
 拓海はくりりんっと大きく目をしばたかせた。
「前の薬と同じじゃありませんよ」
 うふふっと含み笑いをする。
 小悪魔の笑み。
 こんちくしょう,可愛いじゃねえか。
「今度のはねえ,啓介さん,当ててみて」
 俺にちゅっとキスしながら拓海が煽る。
 うおおおお−っ
 こうしているだけで俺の雄は,いちもつは,愚息は,男根は反応してしまう。,
「睡眠薬?」
「それは前回」
 ああ,嫌な予感がする。
「今回はねえ」
 拓海が俺の耳元で囁いた。
「媚薬なんですよ」
 うおおおお−っ
 啓介興奮鼻血噴出

「体が熱くありませんか?」
 拓海が俺のものをにぎにぎしながら問いかける。
 そりゃあもう嬉しそうに。
 ううう,いいじゃねえか
「汗かいてますよ」
 ぺろんっと額の汗を猫みたいに嘗めて拓海はにやりと笑った。
「どっどこで手に入れたんだよ,そんなもん」
 どくどくどくっ
 俺の息子は脈打っている
 すげえ,心臓があそこにあるみたいだ。
 早く拓海の中にねじこみたくてうずうずしている。
 大体媚薬なんて薬局に売ってねえぞ
「どこで手に入れたか知りたいですか?」
 拓海は俺に体を擦り寄せながら聞いてくる
 ううう,小悪魔ちゃんめ。
「マッマツキヨかよ」
「外れ」
「駅前の薬局」
「違います,これはねえ」
 拓海はいじめっこのように目をくるくるさせた。
「啓介さんのために特別に作ってもらったんです」
 手作り,手作りかよ?
「そんな怪しいものを俺に飲ませたのか?」
 俺の非難に拓海はぷ−っと唇を尖らせた。
「そんな事する訳無いじゃないですか,俺の大切な啓介さん(奴隷)に」
 あああ,じゃあその手作りって?
「これはねえ,啓介さんのために俺がお願いして作ってもらったんです」
「だっ誰に?」
 聞きたくない。
 無茶苦茶聞きたくないが一応聞いてみた。
「もちろん,涼介さんにです」

「あ,兄貴に?何故だ」
 解からない
 一体どうなっているんだ。
 拓海はくりりんと目を輝かせた。
「涼介さんなら啓介さんの事一番知っているでしょう,だからお願いしたんです」
 啓介さんにぴったりの媚薬を作ってくれって。
「嘘だ,兄貴がそんな事する筈ねえ」
 啓介はショックのあまり目をうるうるさせた。
「あああ,なんて可愛いんでしょう,啓介さん」
 でも涼介さんお医者さんの卵だからこんなのちょちょいのちょいですよ。
「あんぎゃああ−」
 ぎゅうっと握り込まれて俺の絶叫が部屋に木精した。


「うるさいな,啓介」
 バタン
 俺の絶叫に呼ばれたかのように入ってきたのは我が尊敬し憧れの兄貴
 高橋涼介その人であった。
「涼介さん,この薬全然利きませんよ」
 拓海は平然とクレ−ムをつけている。
「縮こまってますよ,啓介さんの」
 きゅっと俺のものを握りこんで確認する。
 うううっあっこの小悪魔ちゃんっあっ
「それは啓介が俺に怯えているだけだ」
 涼介は悠然と微笑んだ。
「あ,兄貴?」
 どういう事なんだ?
 なんでここに兄貴がいるんだ?
 兄貴は俺ににっこり微笑んで悪魔の微笑でこう言った。
「拓海に頼まれたら嫌とは言えないからね,どうだ,啓介,効き目は抜群だろう」
 うううっ鬼だ
「すごい,啓介さんの,こんなになってる」
 拓海は俺のジッパ−を下ろすと中のものを取り出してきた。
 あ,いかん,拓海,直に触ったら
「はうううううっ」
 ぺろんっ
 拓海の可愛いピンクの舌が俺をぺろんと舐めた。
「あううううっ」
 気持ちいいっううっ
「啓介さんの大きい」
 まるで猫みたいに拓海はぺろんと俺を一舐め
 すげえ,もうイっちまう
「拓海,俺のもすごいんだよ」
 舐めてみるかいと兄貴が言ってきた。
 嘘,
 兄貴ってこういうキャラクタ−じゃねえだろ
 目を白黒させている俺に拓海は笑う。
「こういう初なところが可愛いんですよね」
「全く,俺の弟を21年もしていながら気がつかないんだからな」
 兄が悪魔のように笑った。
 ひええええっ
 何?なにがだ
「俺がSだってことをさ」
「まさかっ兄貴は」
 俺は恐怖のあまり凍りついた。
「涼介さんと俺は同好の士なんです」
 S仲間?
 凍りつく俺の前で拓海と兄貴は談笑している
「だが俺は拓海を諦めていないよ」
「だから俺はSだから無理ですって」
「いや,拓海は仕込めば立派なMになる,俺が保障してあげるよ」
「そっちの趣味はありません,それに俺は今啓介さんという奴隷を手に入れて最高に幸せなんですから」
「ふふふ,可愛い子だね,拓海は」
 すっかり啓介の子とを忘れたかのように目の前では恐ろしい会話が繰り広げられていた。

 

「拓海は主人になるのは初めてなんだろう,啓介をどう苛めるんだい」
 兄貴が,兄貴が壊れている。
 今まで21年信じてきた清廉潔白な兄貴の姿はどこにも無い。
 カリスマSのお兄様がそこには存在していた。
「啓介さんは俺の奴隷ですからね,駄目ですよ,涼介さんは苛めちゃ」
 拓海はぷんっと牽制する。
「解かっている,俺は啓介のような攻めの奴隷には食指が沸かないからね,俺の奴隷は拓海だけだよ」
 ここで見物させて貰おう。
 兄はそう言うとベットの横の椅子に腰掛けた。
 ちょっと待て,
 兄貴そこで見学って?
 俺と拓海のスイ−トな甘い夜は?
 二人だけの一夜は?
 俺は目をうるうるさせて拓海を仰ぎ見た。
「ああ,なんて可愛い俺の啓介さん(奴隷)」
 拓海はすごく嬉しそうに俺を抱きしめて・・・
 いちもつをぎゅっと握り締めてくれた。
「はうううっそこはっ」
 拓海はいそいそと何かを取り出す。
 それは,それは
「啓介さんのこれにはこの色がぴったりですよね」
 レッドザンズだから
 拓海はにっこりと笑って取り出したる真赤なリボンで俺のナニをくるくると結わえてしまった。
 根元からぎゅううっと。
「たっ拓海ぃ」
 マジで涙ちょちょ切れる俺ににっこり笑って拓海が一言。
「駄目ですよ,啓介さん,俺がいいって言うまで出しちゃ,出したらお仕置ですからね」
 お仕置ってなんだあぁ
 そんな俺のナニに唇を寄せる拓海
「啓介さんの大きくて素敵」
 横で兄貴がしげしげ観察している。
「俺の方が大きいし立派だよ,拓海」
 あんぎゃああ−っ
 俺の悲鳴が群馬中に木精した