「拓海,ごめんってば,この通り,俺が悪かった,悪いところは全部直すからさ」
土下座せんばかりの啓介にも拓海は完璧無視
怒りは前回よりも深く激しかった
家に押しかければマジで警察を呼ばれかねない
学校に押しかければスト−カ−扱い
「うおおお−っ拓海−っ愛しているんだ−っカムバ−ック−」
もはやこれはお笑いでしかなかった
傷心にうちひしがれる啓介
しかし彼を襲う不幸はまだまだ序の口であったのだ
今日も拓海に振られて傷ついた啓介はとぼとぼとロ−タリ−サウンドを響かせて家に帰ろうとしていた
「くすんくすん,もう2週間も口きいてもらえないぜ,ちくしょ−っ早漏れだっていいじゃねえか,若いんだから仕方ねえだろうが」
嘆く啓介,家に帰る前に頭を冷やそうと国道ぞいのロイヤルホストに立ち寄った
まずいコ−ヒ−をすすりながらどうやって拓海のご機嫌をとろうかと思案中の啓介,
ふと視線をそらすと見覚えのある三人が目に写った
レッドサンズ,プロジェクトDのメカニック達である三人は顔を近づけて何やらこそこそしている
その怪しげな態度に啓介は興味を魅かれた
「おうっこんなところで会うなんて奇遇だな」
そっと後ろに回り込むと声をかける
「うわっうわああ−っ啓介さんっ」
「げえっなんでこんな所に」
「ああ,すいませんすいません」
慌てふためいて机の上の物を必死で隠そうとする超怪しい態度である
「なんだよ,失礼な奴らだな,この高橋啓介様が声かけてやったっていうのに,何見てんだ」
啓介は三人が隠そうとしているものをひょいっと取り上げた
・・・・
顔面蒼白で固まっている啓介に怯える三人
「おっ怒ってるよ,啓介さん,マジで目が座ってる」
「啓介さん藤原と仲良くないもんな,怒るよなそりゃ」
「あ−でもあれは秘蔵の一枚」
小声で話し合う三人を殺人光線で啓介は睨み付ける
「・・・なんだよ,こりゃあ」
その声は地獄から響いてくるくらい地をはっている
激怒っているのは一目で分かる
「あの,すいません,こんなの買っちゃって,でも一枚500円だから話のネタにいいかな−って」
メカニックの一人の言い訳を視線だけで一刀両断する啓介はさすがレッドサンズナンバ−2といわれるだけのことはある
「こんなのが出回ってんのかよ,おい」
ひらひらと写真をふって啓介が答えろと命令する
もう言い訳なんて通用しない
「・・・藤原って結構顔可愛いからこういう写真が裏で出回るんですよ
,あ,もちろん啓介さんのもありますよ追っかけの女の子とかみんな買っていますから」
啓介とて自分の写真が高値で売買されているのは知っていた。
ファンの女がそれを買って喜んでいるのも知っている
だがそれは女に限ってのことだ
啓介の写真を買う野郎なんてケンタくらいしかいない
「・・なんでお前達男の写真なんか買ってんだよ」
全員その場でこたえられなくてしどろもどろ
そりゃあそうだ,まさか啓介の前で夜のおかずにつかっていますなんて口が裂けても言えやしない
「そう,そのリサ−チすよ どんな写真が出回っているのかな−なんてちょっとした好奇心で」
実はこの三人,拓海のお宝写真,自分のコレクションの批評会をしていたのだ
三人が個別に買った写真は集めると100枚を超えている。
啓介は不機嫌そうにどかっと腰を下ろすとその写真を一枚ずつ調べていった
蛇に睨まれた蛙状態の三人
「け,啓介さん,コ−ヒ−でも頼みましょうか,俺達おごります」
「・・・もう飲んだ」
「お腹へっていたらステ−キ定食頼みましょうか,もちろんごちそうします」
「・・・もう食った」
とりつくしまもない
沈黙のテ−ブル,啓介が写真をめくる音だけが耳に痛い「・・・おい」
啓介のト−ンがまた一段と下がったような
「はいっなんでしょうか」
泣きそうな顔をしてメカニックの一人が質問に答える
「なんで藤原の写真は兄貴とのツ−ショットばっかりなんだよ」
言外に啓介との写真が無いのは何故かっと聞いてくる
「あの−っだって女どもは美形のツ−ショットには目が無くてよく売れるから」
ぎろりっと啓介の殺人光線が光る
「うわあああ−っ啓介さんが美形じゃないってんじゃないです,
啓介さんかっこいいっす,憧れるっす,
でも啓介さんといると藤原はいっつも仏頂面だし啓介さんも怒っているみたいな顔してるじゃないっすか,
ライバルなんだから当たり前なんですけど絵的にはどうかな−ってんで自然と涼介さんとの写真ばっかになるんですよ」
ぴきっ場が凍りつくのは分かった
「・・・そうか.わかったぜ,ところでこの写真もう話のネタに使うのは終わったんだろうな」
ぶんぶんぶんっと首を縦にふる三人に啓介はにやりと笑った
「じゃあ俺が貰っても文句ねえよな」
がさがさと100枚はあるかという写真をそばにあった封筒に押し込んで啓介は片手に抱える
「そんな殺生な−」
「ひどいっひどすぎる」
「悪魔だ,俺のコレクションが−」
泣き叫ぶ三人を無視して啓介は思わぬ収穫を家に持ち帰ったのであった
大好きな人への怒りを持続させるのは中々難しいものである
あれほど怒り狂っていた拓海だが毎日の啓介のごめんなさい攻撃にちょっと落ち着いてきていた
「もうそろそろ許してあげてもいいかな」
今度こそ二人でデ−トのやり直しをしよう
ひょっとしたら秋名のスワンにも乗れるかも
にこにこしてしまう拓海はやっぱり壮絶可愛かった
「うひょ−っ超可愛いぜ,俺の拓海ちゃん」
「すげ−っこのショット色っぽい」
「うげ−っ鼻血でる,最高」
深夜の赤城で行なわれる密売
拓海の果敢なげな写真に群がる男どもと密売人
「あっ最後の一枚,すりい」
「こいつ,わりこみやがって,おいっそんなに買い占めるなよ」
一人も男が拓海の生足写真を買い込んでいる
他のレアな写真もがばがばと買い込むその男に周囲からブ−イングが起こった
「おいっマジあいつやべえよ,喧嘩売るなって」
「イっちゃってるぜ,ああいうのには関り合いにならないほうがいい」
「あああ−でも俺の拓海ちゃんの生写真」
周囲の拓海マニアをも恐れさすその謎の男とは?
エルメスの黒いセ−タ−にグッチのコ−ト,シャネルのサングラス,
バ−バリ−のハンティング帽
しかしそれは金色の髪は隠し切れていないのが辛いところだ
謎の男はレアな拓海写真を買い占めると満足して黄色いRX−7に乗って帰っていった。
「本当か,本当に会ってくれるのか,俺の事許してくれるんだな」
久しぶりにつながった拓海との携帯
会うことをオ−ケ−してくれた時には啓介は幸せのあまりそのままイってしまうかと思った
「よかった−っ俺の事嫌いになったのかと心配したぜ」
啓介の気取らない言葉(おおざっぱともいうが)に拓海は頬を赤らめる
「そんな,啓介さんを嫌いになるなんてことはないです」
拓海とて会えない時間はとても辛かったのだ
自然と口元が緩んでしまうし啓介に対するあたりも柔らかくなる
「ううう,久しぶりだからさ,俺迎えにいくぜ,家で待ってろよ」
いますぐ行くっというと携帯からはロ−タリ−サウンドをふかす音が聞こえた
携帯が切れても握り締めて幸せを噛み締める拓海
「やっぱ可愛い,啓介さんって」
今日は何を着ていこうか?
啓介さんは完璧な八頭身で足も手も外人みたいに長い
それに顔が無茶苦茶小さくてモデルみたいだ
もちろん顔もすごいかっこいい
切れ長でワイルドな目つきで見られるとぞくぞくしてしまう
拓海,って甘い声で囁かれると腰砕け
声が低くて少し甘ったるいのもお気に入り
きっと今日の啓介さんかっこよくて回りの女の人の視線を集めるんだろうから一緒にいる俺も恥ずかしくない身なりをしなければ
「でもうち貧乏だからいい服なんてもっていないしな」
ユニクロで買ったタ−トルネックの黒いセ−タ−が今の拓海には高級品
これなら値段もばれにくいし,でも下はジ−ンズしか持っていない
リ−バイス501(もちろんビンテ−ジではないが)
で精一杯のおしゃれをすると拓海は啓介を待った
久しぶりに見る啓介はとてもとてもかっこよかった
「ごめんな,俺,お前の気持ち考えずに傷つけてばかりいて」
ぎゅっと抱きしめてくれてそのままFDのナビに座らされた。
なんか今日の啓介さんって大人びている
どきどきする胸の鼓動を押さえられない拓海である
片手運転で煙草を加えている啓介もワイルドでフェロモンむんむんだ
「飯食おっか,その後どこいく?拓海のいきたいところどこでも連れていってやるぜ」
あああ−っ啓介さんわかってくれたんだ。
感涙にむせび泣く拓海である
啓介はといえば,再び美香のアドバイスに従っていた。
「それは啓介が相手の意志を尊重してあげないからいけないのよ,大事にしてあげなきゃ駄目じゃない,そのこにどこにいきたいのか聞いたことある?」
確かに啓介は拓海の意見も聞かずにホテル直行だった
反省する啓介
ひょっとしたら拓海は旅館とかのほうが好みだったのかもしれない
今日は全て拓海のチョイスに任せる大人な啓介であった
秋名のファミレスで食事をすると次に拓海がいきたがったのは峠であった
この季節,バトルもないこの時間帯は中途半端なためか走り屋の気配もない
二人はFDで湖畔に乗り付けるとゆっくりと散歩していた
「寒いだろ,ほら,手かせよ」
啓介が強引に拓海の手を握り締めてくれる
繋いだ掌から啓介の温もりが伝わってきて不覚にも拓海は泣きそうになってしまった
やさしい,啓介さん,大好き
思いを込めて拓海もぎゅっと握り帰すと啓介は照れたように微笑んでくれた
(いけるっ今日こそいけるっばっちりだぜ)
啓介はそのまま拓海のおしりを触りたいのをぐっとこらえて紳士のふり
「俺,あれに乗りたい」
はにかんだ拓海の指さすものを見て啓介は固まってしまった。
「小さい頃からの憧れだったんです」
・・・そうか,そうだったのか,迂闊だったぜ,この高橋啓介としたことが
やはり美香の忠告を聞いて正解だったと啓介は思った。
人一人いない秋名湖畔での密室スワン
まさか拓海がここまでマニアックな趣味だとは高橋啓介21歳気がつかなかったぜ
「いいぜ,あの嘴の黄色い奴がいいな,早そうだぜ」
「もう,啓介さんったら」
恥じらいながら拓海は素直にスワンに乗り込んだ
二人で始めての共同作業がスワンこぎとは,世の中何があるかわからん
啓介は新たなる拓海の魅力にめろめろになっていた
「拓海は漕ぐの下手だな,こぐときはこうっ足の付け根に力いれるんだぜ」
さりげなくタッチする啓介
「こうですか?」
啓介の思惑に気がつかず熱中する拓海である
「ほら,啓介さんもさぼってないで漕いで漕いで」
「・・・あっああっっ」
なんか調子が狂ってしまう
「ああ,楽しかった,また啓介さん一緒に乗りましょうね」
憧れのスワンに乗れて拓海は大満足だ
何かが違う−っ
さわやかな青春の汗をかきながら啓介は脱力していた
「次は何がしたい?今まで拓海なかせちまったから今日は拓海の言うこと全部きいてやるからな」
啓介が耳もとで囁いてくる
どきんっ
拓海の胸が高鳴った
(なんか今日の啓介さんってかっこよすぎる,いつもかっこいいけど,あっ)
あやしい気持ちになってしまうお子様拓海,啓介のフェロモンにあてられたらしい
今までのやんちゃな啓介も好きだけど余裕で煙草ふかしている啓介にはなんでもしてって感じだ
「啓介さんは?どこにいきたい?何がしたい?」
拓海の質問に啓介はふっと視線をそらした
渋いっ渋すぎるっ啓介
「俺はいつでも拓海を抱きしめたいんだぜ,そんなこと聞くなよ」
拓海は真っ赤になると啓介の腕に抱きついた
「俺も,啓介さんと一緒の気持ち」
小さな声で恥ずかしそうに拓海が告白する
啓介は耐えた
ここで押し倒しそうになるのも鼻血を噴き出しそうになるのも必死で耐えた
ゆっくりと拓海の肩に手を回す
「暖かくなれるところいこっか」
「うん」
あああっラブラブカップル,
拓海の小さな胸は幸せではりさけんばかりであった
狭いFDの車内,若い二人は自然と体は触れあってしまうのを押さえられない
「あっ啓介さんっやあぁん」
「拓海,可愛い,俺のだ,俺だけのものだ」
「あっはあん,そこは」
啓介はナビに乗り上げて拓海にキスを仕掛けながら胸に手を入れてもみもみしていく
いけるっここまでしても拓海に抵抗の様子はない
やはり拓海は屋外プレイが好きだったのか
啓介の大いなる勘違いは置いておいて
二人の唾液が絡み合い思いのたけを伝えてくる
うっとりとして潤んだ拓海の瞳がオ−ケ−ということを伝えていて
「愛している,拓海」
啓介は初めて他人にこの言葉を使った
「ああっはあぁん」
拓海は大きく身を震わした
「もしかしてキスだけでいっちまったのかよ」
しっとりとした拓海の下半身に手をあてて啓介が確認すると拓海が羞恥で俯いた
「可愛い,最高,拓海,俺のキスに感じてくれたんだろ,
恥ずかしがることねえって,惚れあってる者同士なら当然だぜ」
そうして二人はまたキスを繰り返す
「愛している」と囁きながら
「拓海,俺もう我慢できねえかも」
先程から拓海の太股で刺激されていた啓介の雄が限界まできているようだ
「この前もたいに情けないことにはならないからさ,お願い」
ちゅっちゅっとキスされながら啓介のおねだりに拓海が抵抗できるわけない
いつもなら拓海に聞かず強引に挿入する啓介が見せてくれる気配りも嬉しくて
こくんっとうなずいた拓海に啓介は内心狂喜乱舞だ
座席を倒して拓海を横にさせると啓介が蕾をそっと撫でた。
「このままじゃ拓海が辛すぎるぜ,そこら辺にム−スかなんかあるから」
リアシ−トにある整髪剤を探す啓介
拓海も視線をそちらに向けて何冊かのアルバムを見つけてしまった。
「あれっへんだな,確かここらへんに」
啓介の手が伸びた拍子にそれが下に落ちてぱたんと開く。
「あっあったぜ,拓海っどうしたんだ,そんな恐い顔してっおいっ拓海?たくみ?」
「こんのあんぽんた−んっ」
あんぎゃあ−っ
こうして啓介は星になった 合掌
「だからさあ,好きな相手の写真持っているのは当然だろ,機嫌なおせよ」
「確かに俺の写真が売られてるってのは噂で聞いていましたけど,でもなんで啓介さんがこんなの持っているんですか」
「そりゃあ決まっているだろ,寂しい時これをみて心を慰めるんだよ」
「心だけ?」
「うっそりゃあもちろん」
「いいんだ,所詮啓介さんは俺の体だけが目当てなんだ,今回のことでよ−くわかりました」
「そんな訳ねえ,俺の本気はわかっているだろうが」
「だっていっつもエッチばっかりじゃないですか,今日は違うかなっと思ったのに」
「拓海だってノってたじゃねえか」
「それとこれとは別,第一心を慰めるんならなんでこんな写真必要なんですか,こんな着替え中の隠し取りなんて買って」
「拓海の写真は全部欲しいんだよ」
「ふ−ん,じゃあこれはそういう目的ではないと,俺こんなの恥ずかしいからこれは捨てちゃってもいいですよね」
「うわあああ−っそれは俺の一番のおかずっじゃなくて心の慰めなのに」
「・・・啓介さんってやっぱり俺の体だけが目当てなんですね」
「んな事あるわけねえだろ,拓海が嫌だってんならエッチしなくったっていいんだ」
「本当に?じゃあ高校生らしく清いおつき合いしてくれるんですね,よかったあ」
「ちょいまちっそんなっこの俺の情熱はどうしたらいいんだ−」
「なんかいっぱい心の慰めがあるみたいだからそれで処理してください」
とりあえずこの勝負は拓海の勝ちらしい
ダブルエ−スの二人,主導権を握るのはどっちだ?
とりあえず終わる