FETISH的ナカケン説明


L竜崎
 シルバースポテッドカエルッシュグリーンヘア
 世にも珍しいネコ科カエル種(世界で一匹の珍獣) 青カエル色の毛並み、お腹にカンガルーのような大きいポケットがあるのが特徴
 ポケットの中には月の写真(お宝)とねずみじゃらしグッズとコンソメチーズが入っている。
 世界一の名探偵猫。お金持ち Lビルオーナー。
 月のためにコンソメチーズを世界中から買い集めている(コンソメチーズコレクター)


夜神月(ライト)
 チュウチュウハツカネズミ種
 美しく誇り高いチュウチュウマウスNO1ねずみ、全国ネズ模試第一位
 輝く純白の毛並み、薔薇色の肉球、つぶらな瞳と可憐な尻尾で男を惑わす猫キラー KILA
 弱点はコンソメチーズ(匂いを嗅ぐと尻尾がぷるぷるしてしまう)
 Lビルに住み着いている。
(不法滞在、住居侵入・・・竜崎に言わせると同棲)
 月は竜崎を宿命のライバルと見ている・・・が竜崎は月を運命の恋人と決めている。
 不毛なおっかけっこをする二匹


リューク

 黒カマキリ科死神種
 月の親友。心優しいカマキリ


Lビル
 竜崎が金にあかせて作ったゴージャスビル
 キラ捜査本部が設置されている。ネコヘリも完備。
 最上階は帝国ホテルスイートと同じ作りになっている。竜崎の私室。
 月はその壁に穴をあけて家を作っている。


ワタリ
 竜崎の執事猫
 ペルジャンロングヘア種で毛並みはブルー
 優しいので月もなついている。

夜神 局長
 トラ猫でキラ対策本部の局長。
 Lの部下だが月ねずみを可愛がっている。
 月も種族を超えて慕っている。


松田

雄にしては珍しい三毛猫でキラ対策本部の平社員
 密かに月ねずみに報われぬ思いを寄せている。
(が全く月には伝わっていない)


相沢
 銀キジ猫でキラ対策本部の平社員
 でも松田よりは上

模木
 黒キジ猫でキラ対策本部の平社員
 寡黙だが縁の下の力持ち


補足
 L猫の身長は50〜60cm
 手と尻尾を伸ばしたら1メートルくらい。
 捜査本部のメンバー猫やワタリも大体同じ。
 月ねずみの身長は20cm
 手と尻尾を一生懸命伸ばして30cm
 つまり猫はねずみの三倍という計算になります。
 カマキリは10cm
 羽を広げて20cm
 ねずみはカマキリの2倍、猫はかまきりの5倍という計算になります。


「おはよう」


 すがすがしい朝の気配が窓から差し込んでくる。
 朝7時、どこかで時刻を知らせる鐘の音がする。
 月はその美しい肢体を大きく伸ばして寝返りを打った。
 さらりっと薄茶色の髪が頬にあたる。
 窓から日差しを受け金色に輝いているその髪は透き通るように美しい月の肌によく似合う。
 しかし何よりも素晴らしいのはその毛並み
 純白の毛皮に身を包んだ月はまだ覚醒の気配は無い。
 L、竜崎はそんな月をじっと見守っていた。
 窓際に座り込み月を見詰めている。
「おはようございます。月君」
 竜崎は声をかける。
 だがそれは目覚めを促すというよりも愛の囁きに似ていた。
「もう朝ですよ、月君」
 ピクリッ
 月の耳が反応してぴくぴく動く。
 その愛らしい様を堪能しながら竜崎は声をかけた。
「一緒に朝ごはんを食べませんか?月君の大好きなコンソメチーズを用意しました」
 竜崎はポケットから秘蔵のチーズを取り出した。
 ぷるぷるっ
 月の尻尾が喜びに震える。
「可愛いです、月君」
 でれーんっと竜崎の鼻と髭がやに下がったその時、ぷるぷる震えていた月の尻尾がぴんっと立った。
 これは覚醒が近い証拠である。
 竜崎が目を見開くと同時に月が目を覚ます。
「チュウッ」
 何度か目をぱちぱちさせた月は竜崎を睨み付けた。
「おはようございます。月君」
 その言葉に怒りをあらわにする月
「なにがおはようだっ僕の家を勝手に覗くなって何度言ったら分かるんだ」
 月が怒るのも無理は無い。
 だって竜崎猫は毎朝毎朝。家の窓から月を覗きこんでいるのだ。
 誰だって起きた瞬間、巨大な目玉(しかも瞳孔開きっぱなしでくまだらけ)が窓から自分を監視していたら気分を悪くするだろう。
(以前は監視カメラを付けられていたが、それは抗議して取り外させた)
「月君、朝ごはんを一緒に食べましょう」
 月の不機嫌を気にするでも無くモーニングに誘う竜崎はカエルッシュグリーンヘア
「いやだよ、なんで僕がストーカー猫と一緒に朝ごはんを食べなきゃいけないんだ」
「ワタリがショートケーキとフレンチトーストとシフォンケーキとおはぎと紅茶を用意しています」
「ワタリさんには悪いけど、僕はねずみだから絶対猫とは席を一緒にしない」
 それよりも覗くなよ、僕は着替えるんだから。
 そう言いながら尻尾を震わす月に竜崎は甘い声で囁いた。
「コンソメチーズもあります」
「・・・・」
 しばらくして、こほんっと月は小さく咳をする
「仕方ないな、せっかくワタリさんが用意してくれたんだし、今日だけは一緒に朝ごはんを食べてあげよう」
 えらそうな月、傲慢な月
 でも尻尾はコンソメチーズでぷるぷるしている事を竜崎は見逃さない。
「ありがとうございます。月君」
「じゃあ僕は着替えるんだから、覗くんじゃないぞ、覗いたら絶交だからな」
 尻尾をぷるぷるさせながら強がる月はむちゃくちゃ可愛い。
 カエルッシュ竜崎は今日も朝からでれーんでろーんと鼻とひげを伸ばすのであった。

      

   

「尻尾」

 月の尻尾はバロメーターだ。
 竜崎は朝食を取りながらこっそり観察する。
 今日のモーニングはシチリア産コンソメチーズ。
 空輸で今朝届いたばかりの新鮮な一流品だ。
 美味しそうな色艶、香りのコンソメチーズを前にして月の耳朶はぷるりっと震えた。
 でも月はエリートのチュウチュウマウスだからかぶりついたりしない。
 ちゃんとナイフとフォークで優雅に頂く。
 一口含んだ瞬間、月の可憐なピンクの尻尾がぴくんっと立ち上がる。
「月君、美味しいですか?」
 分かりきった事を竜崎が嬉しそうに聞いてくる。
「・・・まあまあだな」
 そう言いながらも月は朝食のコンソメチーズをのこさず食べた。
 尻尾を震わせながらコンソメチーズを食べる月はとても可愛い。
 あまりにも可愛くて可愛くて・・・・
「私も月君が食べたいです」
 つい呟いてしまった竜崎に月の鉄拳が炸裂したのは言うまでも無い。

 

 


「耳」


 ネズミの耳というものはとても敏感である。
 今日も今日とて捜査本部の一室ではキラ逮捕のため会議が行われている。
「ちゅうっ」
 月は屋根裏からこっそり会議を覗いていた。
 優秀な月の耳は会議の内容を全て聞き取っていく。
「猫だらけだ」
 リュークが楽しそうに笑った。
 月の肩には大親友のリュークがとまっている。
 リュークは月と仲良い黒カマキリだ。
「ライト、もしあいつらに見つかったら一口で食われちまうぞ」
 リュークのおどかしに月はふふんっと耳を奮わせる
「キラであるこの僕が愚鈍な猫に捕まる訳無いだろう」
 その自慢げな台詞は小声で言ったのだが・・
 瞬間、会議のメンバー猫が全員天井に目を向けた。
「ちゅうっ」
 驚いて耳をそばだてる月
「今、月君の声がしました」
 竜崎がじっと月のいる天井を見詰めた。
「そうだな、確かにライトの声がしたぞ」
 夜神局長もきょろきょろと月を探している。
「えーっ月君来ているんですか」
 馬鹿松田の声が響いた瞬間、月はびっくりして足を踏み外してしまった。
「ちゅうううっ」
 くるんくるんと落ちていく月を受け止めたのは当然竜崎である。
「ちゅううーっ」
 話せ触るなこのカエルネコ
「月君、鼠より猫の方が聴覚が発達しているんですよ」
 それに私はどんなに遠くても月君の美声を聞き逃したりしませんから。
「ちゅうっちゅうちゅうっ」
 嫌がる月を抱きしめて竜崎はほくほく顔で尻尾を逆立てるのであった。

 

 


「肉球」


 会議のスパイをしていた月は竜崎に見つかり囚われてしまった。
「ちゅううっ」
 身をよじって逃げようとするが、所詮月はチュウチュウマウス。3倍も大きいカエルネコに太刀打ちできない。
「にゃー、可愛い、竜崎にも触らせてください」
 松田が馬鹿なことを言ってくるのが悔しくて月は潤んだ瞳を夜神局長に向けた。
 キラキラキラッ
 月は愛らしいあどけない純粋なねずみ視線で夜神父に訴える。
 助けてチュウッ
「竜崎―っ」
「なんですか?夜神さん」
「どうかライトを離してやってくれ。竜崎の肉球でつぶれそうじゃないか」
「駄目です、月君は私が捉えたのです、古今東西捉えた鼠は捕まえた猫の物と決まっています」
「しかし、月は悪いことをして捕まったのでは無い、足を滑らせて落ちてきただけだ」
 夜神局長の言葉に赤くなる月、屈辱だ。
「生憎ですが、月君はキラ容疑者です」
「ええっどうしてそういう発想になるんだ?」
 Lの爆弾宣言に捜査メンバーはびっくりした。
「月君は何故天井にいたのでしょうか?それはこの会議の内容を、キラ捜査をスパイしていたからです」
 きっぱり断言する竜崎カエルッシュ名探偵。
「・・・ちゅうっ」
 月の背筋に冷や汗が流れ落ちた。
 さすが竜崎、世紀の名探偵猫と言われるだけのことはある。
 今、月は竜崎の手の中。
 まさに監禁状態、生命を握られていると言っても過言では無い。
 月は屈辱に尻尾を震わせながら考えた。
 なんとか誤魔化さなければいけない。
 チュウチュウマウスの誇りにかけて、竜崎をだましきらなければいけない。
 大丈夫、僕なら出来る。
 僕の演技力は全国ねずコンクール第一位なんだから。
 月は覚悟を決めると潤んだ瞳で竜崎を見上げた。
「竜崎っ僕はキラじゃない」
 甘えたそぶりで竜崎の肉球にほっぺを摺り寄せる。
「僕が屋根裏にいたのは、隠れて見ていたのは・・・」
 月はそこで頬を赤らめた。
「竜崎の事を見ていたんだ」
「えええーっ」
 驚く捜査本部を後目に月は恥ずかしそうに告白する。
「僕は竜崎が働いているかっこいい所を見てみたかったんだ」
「月君、そうだったんですか」
 竜崎の鼻と髭がでれーんっと伸びる。
「天井裏から覗いていたけれど、働く猫ってかっこいい」
 目をキラキラさせながら言う月マウスのまぶしいこと眩しい事。
「そうですか、ならばまた遊びに来てください、いつでも歓迎しますよ」
 でれんでれんしながらそう言うL,頷く捜査陣。
「ありがとう、みんな、ありがとう竜崎」
 月はお礼に竜崎の肉球をぷにぷにしてあげた。
 法悦の表情を浮かべるカエルネコ・・・相当怖い。
 ぷにぷにしながら心の中で高笑いしていたのは言うまでも無い。


「やったぞ、これで捜査本部へフリーパスだ。愚鈍な猫共め、僕の演技に騙されたな」

 こうして月はキラ捜査本部に加わることとなった。
「ライト、鈍くさすぎ」
 天井裏でリュークがため息をついていたのは言うまでも無い

 

 

「大きいの小さいの」

「竜崎、悩んでおいでですね」
 老執事のペルジャンロングヘアー ワタリに問いかけられた。
「何故私が悩んでいると思うのですか?」
「尻尾が逆立っておいでです」
 ほほほっとワタリに言われ竜崎は激しく貧乏揺すりをした。
「ワタリにはお見通しですね」
「はい、何が竜崎を悩ませておいでなのかもこのワタリには分かっております」
 ワタリははちみつたっぷりの紅茶をLの前に用意した。
「私の悩みが分かっている?」
「はい、竜崎は恋の悩みに陥っておいでです」
 さすがワタリ。
 では悩みの本題も分かっているのだろう。
「そうです、私は月君と恋の迷宮に陥ってしまいました」
 竜崎は激しく貧乏揺すりした。
「私は猫、月君は鼠、どんなに愛し合っていても結ばれない定めなのです」
 ちなみに愛し合っているというのは竜崎の妄想だ。
 ほほほっとワタリは微笑んだ。
「種族の違いなど愛があれば乗り越えられます」
「そうです、私もそう思っていました」
 しかし・・・竜崎は尻尾を逆立てる。
「だがあんなに可憐で小さい月君を相手に・・・壊れてしまいます」
 猫は手を伸ばせば1メートル
 月はその三分の一の大きさ。
「これでは愛を営めません」
 竜崎は悔しげに尻尾を振るわせた。
 髭はでれんと項垂れている。
「もちろん、私はそんな事で月君を愛することを止めたりしません、しかし愛し合っていればこそ合体したいと願うのは男の性、獣の習性です」
 苦渋に震える竜崎の尻尾を見詰めながらワタリは大きく頷いた。
「いつか、竜崎がそう言うだろうと思っておりました」
「ワタリ、そこまで読んでいたのですか」
「はい、私とてペルジャンロングヘアー こう見えても若い頃は雌猫と幾多のロマンスを繰り広げてきたものです」
 ワタリの思い出は語りだすと長い

 30分後。
 ワタリは机の上に一つの小瓶を置いた。
「竜崎、これをお使いください」
「なんですか?これは」
 オリーブオイルのような液体
 何かの薬だろうか?
「これはビックになる薬です。」
 さすがキルシュワイミー、世紀の発明家
 ワタリはこの日を見越して研究を重ね、ついに巨大化する薬を発明していたのだ。
「もう特許申請もすませてあります、これは竜崎のものです」
 これを3滴、コンソメチーズに垂らせばどうなるか?
「月君と竜崎の大きさは同じ、竜崎のビックマグナムに対応出来る体に月君は変化します」
 一滴で一倍、二滴で二倍、三滴で・・・
「すばらしいです、さすがワタリです」
 竜崎は尻尾を逆立てて薬を握りしめた。
 この薬さえあれば、巨大化した鼠と猫は愛をはぐくめる。
「さっそく今晩にでも月君をディナーに招待しましょう」
「では、今晩は秘蔵のコンソメチーズを用意いたしましょう」
 こうして史上初、鼠と猫の初夜に向かい、竜崎とワタリの計画は進んでいくのであった。

 

 

「テリトリー」


「いいか、竜崎はっきり言っておくが僕は鼠でお前は猫だ」
「はい」
「古今東西、鼠と猫は天敵だ」
「分かっています」
「だがお前と僕は同じ家で生活をしている。幾ら敵同士だとしても妥協は必要だろう」
「そうですね」
「お互いのテリトリーを尊重することが大切だ」
「もちろんです」
「一つ屋根の下で過ごすからといってプライバシーは守られなければいけない」
「当然です」
「だから朝、窓から除き見たり僕の着替えを盗み撮りしたりするのは言語道断」
「・・・・そうですか?」
「当たり前だ。同居生活をしているからといって馴れ合いはいけない、馴れ合いは」
 そこまで月は言って一息ついた。
 すかさず竜崎は目の前のディナーをすすめてくる。
「ベルギー産のコンソメチーズです。今日空輸で取り寄せました」
 月は尻尾をぴんっと奮わせる。
「別にこうやって夕食を一緒にしているからと言って馴れ合っている訳じゃないからな」
 月はコンソメチーズを口にして耳をぷるぷる奮わせた。
「美味しいですか?月君」
 最高級のコンソメチーズに月は嬉しそうだ。
 でも意地っ張りだから素直に喜びを表現出来ない。
 冷たい微笑で「まあまあだね」と言うくらいが関の山だ。
 尻尾が震えているのを世界的名探偵猫のLは見逃さないけれど。
「別にコンソメチーズに釣られてディナーをOKしたわけじゃないから」
 月はもごもご言い訳をしながら優雅にコンソメチーズを食している。
 その可憐で美しく上品な仕草に竜崎はごっくんっと喉を鳴らした。
(月君、美味しそうです)
 美味しそうにコンソメチーズを食べる月、そしてもうすぐその月を頂く予定の竜崎カエルッシュ探偵猫。
 興奮に貧乏揺すりをしながら竜崎はワタリに言った。
「そろそろ食後の紅茶を用意してください」
「かしこまりました」
 英国製のスペシャルワタリブレンドティーが用意される。
「どうぞ」
 カチャリッ
 馨しい芳香を奏でるワタリブレンド
 目と目で合図するワタリとL
 そう、もう皆様お気づきであろう。
 この紅茶にはワタリ特許の大きくなるぞ薬が
入っているのだ。
 もちろん月の分だけ、3滴きっちり
「さあ、どうぞ、月君」
 竜崎は尻尾を逆立てながらすすめてくる。
「ありがとう」
 月はティーカップを手に取った。
 そして首を傾げる
「竜崎は飲まないのか?」
「ああ、はい、そうですね」
 竜崎は慌てたかのようにカップを手に取る。
「・・・砂糖、入れないのか?」
「ああ、そうでした、ワタリ、砂糖を」
「・・・目の前に用意してあります」
「ああ、そうでした」
 竜崎は何をそんなに動揺しているのだろうか?
「はちみつも持ってきてください」
「ひあ、かしこまりました」
 ワタリがキッチンに下がっていく。
 その様子を伺いながら月の尻尾がぴくぴく震える
 その小さくて可愛らしい頭蓋骨の中の灰色の脳細胞が活発に動き出す。
「・・・竜崎」
「はい?」
 声が裏返っている。
 怪しい。
 こういう時の竜崎は何かたくらんでいるに違いない。
「ねえ竜崎」
 月がちゅううっと甘い声を出した。
「今日はディナーに招待してくれてありがとう」
 優しい声音で竜崎に話し掛ける。
「とっても美味しいコンソメチーズだった」
「月君のために取り寄せたんです」
 でれれんっと鼻の下を伸ばす竜崎
 月はここぞとばかりに必殺のスマイルを浮かべた。
 白月純真無垢なライトスペシャルだ。
 竜崎は興奮して貧乏揺すりをしながら月に手を伸ばそうとした。
 月はそれを起用に避けながらにっこりと微笑む。
「でね、コンソメチーズのお礼をしたいんだけど、ちょっと目を瞑ってくれるかな」
「月君、なんですか」
 そわそわする竜崎に月がちょっと唇を尖らせた。
「お礼、だよ」
 でも恥ずかしいから目を閉じていてね
 可愛らしく言われてLが逆らえるわけ無い。
「わかりました、ちゅううっ」
 竜崎はそのカエル瞼をがっちりつぶって唇を尖らせた。
 それは相当怖かった。
「月君、まだですか?」
「うん、もうちょっと瞑っていて」
 ちゅうううっ唇を限界まで尖らせるカエルネコ
 月は澄ました顔をして目の前のカップを置き換えた。
 自分のカップをLの前に
 そしてLのカップを引き寄せる。
「月君、まだですか?」
「うん、もうちょっと」
 Lの唇はもう限界を超えて突き出ている。
 かちゃりっ
「はちみつをご用意しました。竜崎?どうしたのですか、竜崎?」
 絶妙のタイミングでワタリが現れた。
「邪魔しないでください。今がいいとこなんですから」
 ひたすら唇をとがらせ続ける竜崎
 その姿はちょこっとかわいそうだ。
「竜崎、ワタリさんも来ちゃったことだし、お茶にしよう、お茶を飲んだらお礼してあげる」
 くわっ竜崎は目を見開いた。
「分かりました、お茶を飲んだらですね」
 ぐわしっと竜崎はカップを持ち上げると一気に飲み干した。
「飲みました。月君」
 さあっお礼の時間です。
 興奮しながら近寄ってくる竜崎。
 それはどんどん近づいてどんどん大きくなって・・・大きくなって?
「ちゅうううっ」
「にゃあああっ」

「ちゅうううっ」
「にゃああああっ」
 姿だけでなく声も三倍になった竜崎
 つまり月は竜崎の六分の一というわけで・・・
 夢のエッチどころかお礼のちゅうも当分先のようである。

 

 

「ハラハラ」

「竜崎、ご立派になられて」。
老執事のペルジャンロングヘアー ワタリは目の前の大惨事に涙していた。
「これでこそカエルの中の猫、いや猫の中のカエル」
 言っていることが支離滅裂なのはワタリなりに動揺しているのであろう
「ちゅううううっ」
「にゃああああっ」
 逃げるネズミ、追う猫
 まさに正しい動物の本能。
 しかしどうも目的が違うようだ。
「こうなったら月君、せめてお礼だけでもください、にゃあああっ」
「いやだっこんな化け物にちゅうが出来るか、ちゅうううっ」
 迫るカエル猫は通常の3倍
 チュウチュウマウスの6倍
 これはすでに範囲を超えているどころの話では無い。
「月君、約束が違います、お礼をっお礼をっ」
「お礼ならこれだっちゅう」
 月の必殺カンフーキックが竜崎の鼻に炸裂する。
「そんなの、蚊がとまったくらいにしか感じませんよ、ふふふ」
「ちゅうううううっやめろっ離せっ何をするっ」
 


 そんな二人を見守りながらワタリは密かに涙していた。
「竜崎、それは幾らなんでも犯罪でございます、あああっいけません、そんなことをしては」
 ワタリのハラハラはまだまだ続く。

 

 

「危機一髪」


「本当に危機一髪だったな」
 やっとの思いで竜崎の魔手から逃れた月は自分の部屋に逃げ込むとはあっと息を付いた。
「酷いです、月君、月君」
 どおんっどおんっ
 地響きが鳴り響く
「約束が違うじゃないですか」
「何が約束だっ僕に怪しげな薬を飲ませようとしたくせに」
 そんな姑息な手にひっかかる僕だと思ったのか。
 玄関前ではははっと高笑いをする月 
 竜崎は玄関に顔を押し付けて家の中を伺っている。
「約束は約束です、御礼してくれるって言ったじゃないですか」
 ごねる竜崎はしつこい。
 ただでさえしつこいのに身体は3倍
 うっとおしさは10倍だ。
 この調子ではずっと月の家に張り付いたままだろう。
 はああっと月はため息をつくと尻尾を振るわせた。
 そしてつかつかと玄関に近づく。
 玄関いっぱいの竜崎のぎょろ目
 月はそのくまにちゅうっとキスしてあげた。
「はうううっ月君」
 興奮した竜崎の地響きが月の家を襲う。
「早くワタリさんに解毒剤を作ってもらえよ」
 それだけ言うとぱたんっと扉を閉じる。
 竜崎の目の前で。
「はううっ月君が、月君が私にちゅう」
 あの誇り高い月が自ら進んで竜崎にちゅうしてくれた?
「はうううっほうううっ」

 その晩、竜崎は別の部分もビッグになって眠れなかったのは言うまでも無い。

 

 

 


「おあずけ」

 惨劇の夜から3日が過ぎた。
「月君、おはようございます。今日はギリシャ産最高級コンソメチーズを用意しました」
 今日もうっとおしく竜崎シルバースポテッドカエルッシュグリーンヘアはチュウチュウハウスを覗き込んでくる。
「月君、あれから3日、朝食も一緒に食べてくれないなんて酷すぎます」
 よよよっと泣き崩れるカエル猫
「何が酷いだ、酷いのはお前だ竜崎」
 寝起きの月は機嫌が悪い。
 おまけにあれから毎日毎日うっとおしく竜崎が家を除きこんできて誤り倒す。
 謝れば許されると思っているのか、このカエルが。
「カエルじゃありません、カエル猫です」
「ええい、問題はそうじゃない、僕をコンソメチーズで誘惑したあげくに怪しげな薬を使った事が問題なんだ」
「それはもう終わった事です」
「それだけじゃない、こうして毎日毎朝僕の家を覗きこんで監視している、ストーカー蛙め」
「だから猫ですってば」
「嘘だ・・・そんなに巨大な猫が存在するはずがない」
「ワタリがまだ解毒剤を開発していないんです」
 そうなのだ。
 L猫はあれから3日も立っているのに未だにビックなままなのだ。
 両手を伸ばせば1メートルのL猫はいまや手を伸ばせば3メートルの巨大蛙猫へと変身していたのだ。
 その3メートルが毎朝毎朝自分の家を覗きこんできてストーカーしていたら、誰だって怒るだろう。
「とにかくワタリさんが解毒剤を作るまでお前とは話をしない、顔も合わせない」
 だって怖いんだもん、3倍のくまが・・・


こうしてL猫は今日もおあずけを食らうのであった。

 

 

 


いただきます」

 カエルネコの主食は糖分である。
 と言うかスイートフードしか受け付けないあやしい生き物だ。
 緑の毛並みに瞳孔の開いた両目がキモい。
 だがそれには慣れた。
 慣れたくないが慣れてしまった。
 月はこめかみを振るわせた。
 でもこれだけは許せない。
 月は目の前を見上げる。
 大きな大きな緑の物体。
 手を伸ばせば3メートルの巨大カエルネコを。
「だからこの薬を飲めば元に戻るんだから飲めよ」
 月は見上げながら根気よく説得にかかる。
「でもこれ・・・苦いです」
 駄々をこねる竜崎カエルネコ
「せっかくワタリさんが作ってくれた解毒剤なんだぞ、苦くても我慢しろ」
「我慢出来ません、これは殺人的な苦さです」
 竜崎は恨めしそうに目の前のコップを除いた。 
「効果は抜群です、このワタリが保障いたします」
「でも、これまずいです」
 一体何の味なんですか?
 髭をしかめるLにワタリは答える。
「青汁味でございます」
「・・・・せめて苺味とかバナナ味にしてもらえませんか?」
「それでは効果が半減してしまいます」
 竜崎は髭をぴくぴく振るわせた。
「我侭言うな、大きいままでいいのか」
 尻尾を振るわせる月
「いやです、でも苦いのも嫌です」
 このままでは堂々巡りだ。
 月は作戦を変えることにした。
「竜崎が元の大きさに戻らないと一緒に食事も出来ないよ」
 悲しげに尻尾を振るわせるちゅうちゅうライト
「僕、竜崎とコンソメチーズが食べたいな、二人っきりで」
 その瞬間、竜崎はコップを掴んだ。
「月君のためなら青汁飲んでみせます」
 ごくごくごくごぼごぼっ
「にゃあああーん」
「ちゅうううっ」
「竜崎っLっ飲みすぎです。そんなに飲んでは・・・あああああ」
 この後、Lがどうなったのか誰も知らない。

 

 


「チーズ」


 ちゅうちゅうねずみたる者、やはりコンソメチーズには拘りたい。
 シシリー産は隠し味にエクストラバージンオリーブオイルを使用していて風味が良い。
 ギリシャ産はハーブの香りが馨しい。
 フロリダ産は正統派コンソメの味
 中国福建省産は烏龍茶風味
 月はちゅうちゅうグルメだから世界中のコンソメチーズを食べてきた。
 どれも魅力的で月を惑わすコンソメチーズの甘い罠。
「だから僕は別にチーズに釣られたわけじゃないからな」
「分かってます、月君」
 目の前には無表情に嬉しそうな蛙猫
 テーブルいっぱいのお菓子と紅茶とチーズに包まれたアフタヌーンティータイム
「今日は日本の有機コンソメチーズを用意しました」
「・・・まあまあだな」
 月は上品に尻尾を震わせながらチーズを食べる
 目の前では嬉しそうに瞳孔を開いておはぎを食べる竜崎

 竜崎の用意するコンソメチーズはどれも高級品の一流品で美味だけど、二人で食べると美味しさ二倍なのは何故だろう。
 月はそんな風に思っていることを微塵にも出さず優雅にコンソメチーズを食するのであった。
 

 キラキラネズミとカエルネコ、日常のひとコマ