「EDEN」

月はテレビを前に呆然としていた。
目の前には信じられない情景が映し出されている。
キラのTVジャック。
稚拙なKILAという文字が月を嘲笑うかのように画面に並べられている。
「・・・どうして?」
月はそう呟くことしか出来ない。
背後でリュークが奇妙な顔をしている。
キラの声がテレビから流れてくる。
「皆さん。よく聞いて下さい。私は罪の無い人間を殺したくありません」
どこか狂気じみた声
「悪を憎み正義を愛します。警察も私の敵ではなく味方だと考えています」
聞いたことの無い声。男の声だ。
「誰だ?一体」
月は憮然と呟いた。
誰かがキラを名乗っている。
それに乗せられるテレビ局もテレビ局だ。
「くだらない」
月がそう言い切ったその時、太陽テレビのメインキャスター日々間数彦が倒れた。
続いて24チャンネルのコメンデイターも倒れる。
驚きに目を見開く月の目の前で捜査本部の宇生田が倒れた。
「・・・どういう事だ?」
月はノートを使っていない。
テレビ局にビデオなど送っていない。
こんな愚かな行為をしたりしない。
テレビで殺人を犯す、しかも警察の人間やコメンデイターを殺害する。
それはキラが他の考え方、キラを否定する思想を認めないと言う表明になる。
人々はキラを救世主では無く独裁者と考える。
「まずいな」
誰だ?キラを名乗ってこんな馬鹿げた事を仕出かしている輩は?
「そいつはデスノートを持っているのか?」
月と同じようにノートを拾った人間がいるのだろうか?
月の問いかけにリュークは知らないと首を振った。

 

 

ここは日本でもっとも由緒正しいホテルの一室
最上階、特別の客だけに許される空間に男はいた。
「ごくろうだったな」
男はしもべ達にねぎらいの声をかける。
「我々の演技を皆、信じていましたね」
しもべ達はおかしそうに顔をゆがめた。
「宇生田が倒れたことで捜査本部はこれがやらせだと疑わなかった」
男が密かに笑った気配がした。
男のしもべ達も笑う。
宇生田。日々間、そして先程テレビで倒れた筈のコメンデイターがそこにいた。
テレビ局の出目川もいる。
そう、このキラ放送は全て彼等のやらせだったのだ。
キラのビデオを作り、いかにもキラに殺されたかのように心臓麻痺の振りをして、世間を騙した。世間だけでなく捜査本部も。
何故?何が目的で。
男は不気味な笑みを浮かべている。
「お前達はしばらく身を隠していろ。」
「はい、教祖様」
宇生田達は返事をすると部屋を後にした。

 

 

宇生田。日々間、出目川、彼等の経歴、年齢には共通点が無い。
だがたった一つ共通することがあった。
彼等はある宗教に属していたのである。
歴史は古いが公の場に出ることは無い。邪教とも呼ばれた時期もある。
その宗教は救世主の光臨を信じていた。
救世主が我らを救い悪しき世の中を浄化してくださると。
救世主伝説ならば世界中に存在する。
それだけならば他の宗教と変わらなかったであろう。
だが、彼等の前にキラが現れた。
犯罪者を罰する救世主。神にしか出来ない殺人の方法。
教団は熱狂した。
キラこそ我らの救世主であると信じた。
キラが日本人であるという事も彼等の盲信を増長させた。
「キラ様のすばらしさを世界に知らしめるためにはこの方法が必要だったのだ」
教祖である男はホテルの窓がら下界を見下ろした。
東京の夜は眠らない。ネオン輝く世界を男は最上階から見下す。
「キラ様は世界を支配しなければいけない。犯罪を無くすだけでなく、犯罪など考えない人類を作り上げなければいけない」
キラに思想も、行動も、全てを支配されてこそ人類は進化出来るのだ。
醜い人間のエゴから解き放たれる。
「全ては救世主のために」
男はそう言うとデスクにある写真に目を向けた。
そこにはキラの容疑者が何人か映し出されている。
その中から男は一つ取り出した。
「美しい、私の救世主」
あなたのために世界を作り変えてみせましょう。
男はそう言うと写真に口付ける。
写真には一人の少年が映し出されていた。
彼はまだキラだと決まったわけではない。
宇生田の持ってきた情報では容疑者の一人にすぎない。
少年がキラだという可能性は5%以下だ。
だが男には分かっていた。
写真を見た瞬間、直感で分かったのだ。
「彼こそがキラ、我らの救世主だ」と
美しい完璧な少年、神から愛された造作は男を高ぶらせる。
男は恍惚とした表情で写真を見つめ囁いた。
「私の救世主、夜神 月」
もうすぐあなたを迎えに参ります。
全ての準備を整えてから。
男はもう一枚の写真を取り出す。
捜査本部の長といわれるLの写真がそこにある。

「L、キラへの供物として相応しい」
男のヒステリックな笑いがホテルの部屋に響いた。

ジャンプ5月24日号を見て、こういう展開だといいなーと妄想してしまいました。
でも今週号を見たらやっぱりライトが犯人みたいでした。わはは
しかしヒールっぷりが身についてきたなーライトは・・・