「初恋物語」
世界に有名な名探偵 L
知る人ぞ知るその名声は同業だけでなく、警察関係者、各国の首脳陣にまでとどろいている。
Lが動く それは大犯罪が起きたという事だ。
そしてLが関わる事とは事件が解決すると意味でもある。
世界平和と秩序はLによって保たれていると言っても過言では無いだろう。
犯罪者はLに恐怖し、マフィアですらLには一目置いている。
どの様な権力にも屈しないその不屈の精神は尊敬すら抱かせる。
金や地位でLを動かすことは出来ない。
例え巨大国家であろうともLの判断を覆すことは出来ない。
驚異的なまでの推理力と実行力。
決して狂わない、間違えないLの捜査は人々に驚愕と憧憬を抱かせる。
誰もLの正体を知らない。
絶大な権力を誇る権力者であろうともLを知ることは出来ない。
Lの調査をした国や人間は多い。
彼等は大金を注ぎ込み、人材を集めLを調べたが本名はおろか、年齢、国籍、性別すらも分からない有様であった。
名前だけは強大、だが素顔は誰も知らない。
それがL
彼自身が世界で唯一解けない絶対の謎であった。
「・・・確かに謎だな」
夜神 月は目の前の物体に冷たい視線を向けた。
そこには毛布に包まったL、世界的な名探偵の姿がある。
今の時刻はお昼の1時 水曜日
何故彼は寝ているのか?
大の大人がベットにいていい時間で無いことだけは確かだ。
もしかしてLは身体の具合が悪いのか?
「・・・確かに頭の具合は悪そうだ」
月は大きくため息を付くと毛布を引き剥がした。
「いい加減起きろ、竜崎」
少し疲れた声でそういう月に竜崎は目を向けた。
黒々として瞳孔の開いたカエル目がLの特徴だ。
目の下には黒々としたカエルクマもある。
しかし・・・その視線は定まっていない。
竜崎はうっとりした表情を浮かべている。
「惰眠を貪るのもいい加減にしろっ捜査に戻れ竜崎」
月の言葉にLは反応した。
ピクピクッと痙攣する
「すごく良かったです、月君」
呂律の回っていない口調でぼそぼそ呟かれて月は眉をしかめた。
「最高でした」
Lは夢見心地なカエル顔でぼんやり寝っころがっている。
だけど癖なのか背骨が曲がっているのか、赤ちゃんの様なポーズで手足を突き出し時々ぴくぴくしている様は異様だ。
まるでカエルの解剖みたい・・・と月が思ったことは内緒だ
うっとりカエル顔のLが何を考えているのかは分かっている。
「いい加減にしろ、竜崎」
月は怒りの視線をLに向けた。
実はここだけの話 月はキラである。
キラというのは世界を脅かす世紀の犯罪者
昨年の冬、突然現れたキラに世間は恐怖し、また歓喜した。
どういう手段を使ったのかわからないが、キラは世界中の犯罪者を死に追いやったのだ。
年齢も性別も国籍も違う幾多の犯罪者達。
彼等の死がキラによるものだという根拠は唯一つ。
突然の心臓麻痺、それだけだ。
まるで魔法のように、キラは凶悪な犯罪者を粛清した。
人々を熱狂と恐怖に陥れるその存在の正体を誰も知らない。
巨大な大国も、権力者も、犯罪者も誰もキラの情報を掴んでいない。
キラもまたLと同じく、名前も国籍も年齢も性別すら分かっていなかった。
運命に導かれるかのごとく、Lとキラは敵対した。
お互いがお互いを捜し求め、相手を出し抜こうと、証拠を、確証を掴もうとする。
追う者と追われる者
その関係は犯罪者と追跡者と言うにはあまりにも複雑であった。
Lはキラを挑発し、情報を掴んだ。
そしてついにLはキラを見つけ出す。
夜神 総一郎の一人息子
夜神 月
「夜神月がキラである可能性は5%」
そう言いながらもLは月に接触するため、自ら動いた。
月が入学した東大、Lは月を追って一緒に入学してしまったのだ。
そして入学式の壇上。
異例の2人主席挨拶の後、Lは月の背後に近づいた。
「私はLです」
唐突の告白に驚く月の手をLは握り締めた。
「結婚してください、月君」
シーン、東大入学式会場は静寂に包まれた。
東大始まって以来の大事件
2人同時トップもさることながら、その主席が主席にプロポーズしたのだ。
しかも男同士、ホモである
しばらく沈黙した後、月はLに語りかけた。
「男同士は結婚出来ないんだよ」
イタい者を見る目で月は竜崎を見つめた。
Lはときめいた。
「卒業までに法律を改正します」
爆弾宣言にどよめく会場
こうしてLと月のお付き合いはスタートしたのであった。
「あれが間違いだった」
月は屈辱の入学式、Lとのファーストコンタクトを思い出してため息を付いた。
「運命の記念日です、月君」
Lはベットから起き上がろうとしない。
まだごろごろしながらにやにやうっとりしている。
こういう時のカエルは曲者だ。
Lが何を想像して妄想しているか分かるだけに月はため息を付くしかない。
こんな真昼間だというのにベットでごろごろしているL
別に彼は寝ているのでは無い
(本人曰く)
寝っころがりながらもその灰色探偵脳は活発に動いている、
昨夜の行動を、行為を脳内で反復し、分析し、推理してにやにやうっとりしているのだ。
「いい加減起きろ」
「昨晩は最高に気持ちよかったです。月君」
うっとりでれれんとのたまうL
「僕は腰が痛くて最悪だ、竜崎」
月のいやみなんか聞いちゃいない。
「じゃあいっしょにお昼寝しましょう」
ひょろりと長い手が伸びてきたと思った瞬間、月はベットに引きずり込まれる。
「馬鹿、やめろよ」
真っ赤になっていやがる月は壮絶可愛い。
Lはでれーんと鼻の下を伸ばして恋人を抱きしめた。
「二人で朝のスイートタイムを過ごしたいです」
Lに言われて月は顔を顰めた。
「お前のは惰眠を貪っているというんだ」
それに時刻はもう昼だ。
竜崎曰く、ごろごろしているのは昨晩の思い出に、余韻に浸るためらしいが月に言わせるとエッチで頭がショートしただけだ。
東大入学式での衝撃の告白
その日からLの猛烈アタックが始まった。
毎日毎日月の後をペタペタ付きまとう。
その努力は見ている者の涙を誘うくらいに健気であった。
うっかりほだされてしまった月が悪いのか、Lが策士であったのか、
第二のキラが登場し、月が捜査本部に出入りする頃、二人は恋人さんになっていた。
「スイートタイムが駄目なら、今日の夜はいかがですか?」
Lはベットの上でもじもじと月に誘いをかける。
無表情だが頬が染まっていて結構キモい。
「駄目だ」
「何故ですか?用事があるんですか」
月の却下に悲壮な表情を浮かべるL
「だってL,エッチなことするだろう」
「当たり前です、私と月君は恋人同士なのですから」
「昨日もだったし、おとといも、毎晩なんて良くないよ」
「良くなくありません、恋人同士のスキンシップは大切です」
「過剰なスキンシップは百害あって一利無し」
月の言葉にLがぴくぴく震えた。
「大体、竜崎はエッチした次の日全くの役立たずじゃないか」
今もそう、
捜査にも行かず昨日の余韻に浸ってごろごろ妄想している。
そういえば初めての夜、(初夜というやつだ)の時もすごかった。
月はバージンだったのでとても緊張していた
竜崎も童貞だったのでとても興奮していた。
初めての二人、盛り上がるのも仕方ないが・・・
だんな様は初めてのエッチでキれてしまい3日も使い物にならなかったのだ。
エッチ後、瞳孔開いて放心しているLは相当怖かった。
エッチして愛を確認した筈の月ですらヒいてしまった。
あまりの快感にショートしてしまったカエル脳は全く使い物にならなかった。
あれから何度もエッチをしたけれど、未だに半日は使い物にならない。
「はあ、なんでこんなのに捕まっちゃったんだろう」
ぎゅうぎゅうと抱きしめられながら月は大きくため息を付いた。
「月君、ため息つくと幸せが逃げます」
Lがしたり顔で言ってくる。
「逃げる幸せも無いよ、はあぁ」
連続でため息を付く月
背後でLは月を抱きしめながら幸せそうにのたまった。
「大丈夫です、私は逃げません」
その後、Lは真っ赤になった月に殴られたことは言うまでも無い。
二人でいることが一番幸せ