「アイバーは見た」
アイバーは詐欺師だ。
語学力、心理学、人格変換術、あらゆる社交に必要なものを身につけ、必ずターゲットと親密な関係になるトップレベルの詐欺師だ。
その腕を買われて(脅迫されて)Lから協力依頼が来たのだ。
だがアイバーがこの話に乗ったのは正義感からだけではない。
Lに協力するのはやぶさかではないが、目的はもう一つある。
「Lは俺の秘密を握っている」
Lが保管しているアイバーの資料
過去にアイバーが犯したあらゆる犯罪のデーターがそこには載っている。
もしそれが警察やCIAの手に渡ったらどうなるか?
「俺は一生ムショくらしだ」
自由に生きてきたアイバーには耐えられない。
「Lには協力する。そして同時に俺のデーターも見つけ出し消去する」
今回は泥棒のウエディも一緒だ。
ウエディとアイバーが協力すればLからデーターを盗み出すことも可能だろう。
「だがそれだけでは不安材料が残る」
あのLのことだ。
天才と呼ばれる頭脳はアイバー達の犯罪がファイリングされているに違いない。
「Lの口を塞ぐ必要がある」
Lの弱点を掴む。
それを盾にすればLとてアイバー達を逮捕したりしないだろう。
永遠に。
「ナイスアイデアだわ、アイバー」
ウエディもこの計画に賛同してくれた。
こうして二人は日本でL達捜査本部と合流し、密かにLの秘密を探ることとなった。
「俺はアイバー、詐欺師だ、よろしく」
「私はウエディ 職業は泥棒」
二人は捜査本部のメンバーに紹介されて驚いた。
どんな精鋭が集められているのかと思ったら5人しかいなかったのだ。
しかも全員東洋人、
年配の男達は日本警察庁の人間らしく犯罪者であるアイバー達に渋い顔をしていた。
だが一番目を惹いたのは。
「彼は?」
Lと手錠で繋がれている青年
どう見ても未成年だというのに捜査に加わっているのは何故か?
それに何故手錠で拘束されているのか?
Lは二人の視線を無視して一人ずつ紹介をしていく。
「夜神局長は日本のキラ捜査本部にいた方です。その部下の模木さん、松田さん」
そしてLは横にいる青年に視線を向けた。
「彼は私のフィアンセの夜神 月君です」
その瞬間アイバー達は見た。
ガキッ
武道の達人でもあるLが回し蹴りですっ飛んでいくところを。
青年は手錠をしているから一緒にすっ飛んでいく。
ガシャンガラガラッ
派手な音を立ててごろんごろんと転がるL
青年はうまく反動を利用して立ち上がった。
「その冗談は止めろって、アイバーさんとウエディさんが本気にするだろうが」
爽やかな笑顔を浮かべる夜神 月
「私を殴りましたね」
ふるふると震えるL
「Lのジョークが笑えないからだよ」
爽やかな笑顔、だが目は笑っていないぞ夜神 月
「どんな理由があろうとも一発は一発です」
一瞬触発、殴り合いが始まるのか?
アイバーとウエディは身構えた。
「ですがほかならぬ月君ですから一発のキスで許してあげます」
ガキッ
その瞬間
Lがまた吹っ飛んでいった。
もちろんとび蹴りをした月も一緒に。
「二発殴りましたね」
よろよろと立ち上がるL
月は爽やかな笑みで答える
「殴る方も体力がいるんだよ、手錠で繋がれているし」
「二発分のチュウをください」
懲りずに唇を突き出しているL
「ははは、懲りないな、竜崎も」
ガキッ
頭突きを決めながら爽やかに笑う夜神 月
「これはどういうことなの?」
このままでは埒が明かない。
ウエディが問いかけると局長と呼ばれる男性が説明をしてくれた。
「いやーお恥ずかしい、月は私の息子でして」
いや、そういう説明じゃなくて。
「あの手錠は?」
アイバーが問いかけると松田といわれる男性が答えてくれた。
「月君はキラ容疑者の一人なんです。もちろん僕は信じていませんけど」
「キラ容疑者が捜査に加わっているのか?」
驚愕する二人に模木が答えた。
「はい、月君を一人にしておけないからって手錠までして見張っているんです」
ウエディとアイバーは顔を見合わせた。
「それであの状態に?」
目の前ではLと月がど付き合いをしている。
「はあ、実はここだけの秘密なんですが、Lは月君を好きなんです」
そんなこと見れば分かる。
「でも月君はLの求愛を受け入れられなくって、だから毎回あの状態になるんですよ、あ、でも今の話は内緒ですよ、トップシークレットですからね」
天然ボケの松田がしーっと唇に指をあてる。
「月君、私は本気なんです。愛しているんです」
「だからお前の冗談は寒いんだって」
目前で繰り広げられるLと月の攻防戦。
ガタガタッ
他のメンバーは机を移動している。
「まあ毎回のことなんですけど、さ、捜査始めちゃいましょうか」
明るくいいながら松田が机や書類を二人から離れたところへ避難させた。
「時々、殴り合ってこっちにも転がってきますから、アイバーさんたちも気をつけてくださいね」
局長に注意される。
「なんか、Lの秘密を知ってしまったわね」
ウエディに囁かれアイバーは頷いた。
「ああ、トップシークレットらしいが」
呆気無くLの秘密を手に入れた犯罪者二人組
だが、一つ問題が・・・
「俺達はこの捜査本部についていけるのだろうか?」
目の前の二人はまだど付き合いの漫才を繰り広げていた。