捜査本部、月はコンピューターの画面を見ながら物思いにふけっていた。
(もし仮に僕に顔と名前だけで人を殺せる能力があったらどうだ?悪人を裁こうとするか)
確かに月は世の中いない方がいいと思う人間はいると思っている。
だが自ら殺人犯になって悪を裁くことで世の中を変えようとまでは思っていない。
(やはり考えすぎだ。僕がキラであるはずが無い)
月にはそんな記憶は全く無いし大量殺人をしてその記憶が残らないなんてありえない。
(ペンバーや南空のことは竜崎に話すべきではないな、話す意味も無い、また話がこじれるだけだ)
大きくため息を付く月、そんな彼をLはじっと見詰めていた。
「悩んでいるライト君、素敵です」
今、Lと月は手錠で繋がれている。
24時間いつでも一緒、
ご飯を食べるのもお風呂に入るのも眠るのも一緒。
「ラブラブです」
Lの鼻は30センチほどやにさがった。
しかし今のように悩んでいる月を見るとLは焦燥感に苦しめられる。
「どうしましたか?深刻な顔をして」
Lは月に語りかけた。
「悩み事があるのでしたら相談に乗ります」
「はあ?」
突然横で訳の分からないことを言い出したLに月は怪訝な顔をした。
「私はライト君の全てを知りたいのです」
「いっいや、大したことじゃないから」
「一人で悩まないで下さい、ライト君の悩みは私の悩み、この世界三大探偵の私がライト君の悩みを解決してみせます」
猫背のくせに胸を張るL
「そんなことより今次々と犯罪者がキラに殺されている、余計なことは考えずにキラを捕まえることに集中するべきだろう」
月の言葉にLはこくこくと頷いた。
「そうですね、とにかく今はキラを捕まえる、そして見事逮捕したその時はライト君の悩みは全て解決してみせます」
Lが無表情にはにかんだ。
「結婚しましょう、ライト君」
「は?」
「キラを捕まえた暁には、手錠ではなく指輪を贈ります」
「・・・何故?」
「二人を繋ぐ愛の証です」
何の話をしているのだろうか?
確か僕の悩み相談のはずではなかったのか?
月は頭を捻った。
「大丈夫です、私は世界三大探偵のLです。ライト君を幸せにしてみせます」
月は激しくため息をついた。
実はこの会話、毎度のことで日常茶飯事なのでもう慣れっこになってしまっている。
「まだそんなことを言っているのか。竜崎、僕と結婚したいのは勝手だが今起きていることにちゃんと目を向けてくれよ」
「つれないですね、ライト君、そこも素敵です」
「はいはい、分かったから、この画面見てくれよ」
言い寄るLをすげなくかわす月、
それを傍目で見ながらアイバーとウエディは驚愕していた。
「世界三大探偵のLの求愛にも動揺しないとは?夜神月とは何者なんだ?」
「あのLが子供扱いされているわ」
ウエディが感嘆の声を上げた。
「うちの息子は貞操観念のしっかりしたいい子なんです」
夜神元局長は満足そうだ。
「それにしても松田さんはどこにいったんでしょうね?」
「ミサミサの撮影に付きあっています、案外付き人が性にあっているみたいですね。楽しそうに毎日撮影にいっています」
模木の言葉に皆が苦笑した。
「そうだね、松田さんは案外天然だから張り込みとか刑事っぽいことは無理そうだし」
月が言うと皆頷く。
「でも本人は熱血刑事のつもりだから張り込みとか憧れているみたいですよ」
「それが松田のいいところなんだが、もし張り込みでもしたら真っ先に見つかるタイプだな」
「まさかそんなにドジじゃないでしょう」
夜神元局長は冗談のつもりで言ったのだが、
その頃松田は見事に捕まっていた。