楽しい筈のキャンパスライフがあやしいものへと変わっている。
夜神月はひしひしとそれを肌で感じていた。
大学ではぴったりと流河にはりつかれた長い一日が終わり、ライトは疲れた足取りで家へと帰る。
流河はリムジンでご帰宅なのもむかつく。
「一緒に帰りましょう」
流河は送ると言ってくれるがライトはそれを丁重に辞退する。
「これ以上張り付かれてたまるか」
あの底知れない瞳、ライトの一挙一動を観察する視線に苛立ちがつのる。
今やライトがほっと出来るのは帰宅途中だけであった。
(家にはまた監視カメラが取り付けられている可能性があるからだ)
「ただいま」
家に帰り着いたライトは首を傾げた。
見慣れない靴がある。
それに居間からは母と妹の楽しそうな笑い声。
「お客さんかな?」
そう考えたライトはもう一度靴をしげしげ見てはっとした。
このかかとをふみつぶしたベタ靴は!!
「まさか」
ライトは急いで居間へと向かい、絶句した。
「なんで流河がここにいるんだ?」
ライトが驚くのも無理はない。
大学で別れた筈の流河がそこにはいた。
しかも母と妹とお菓子を食べている。
「おかえりなさい、ライト、遅かったわね」
母はにこやかに言った。
「お兄ちゃん遅いよー、流河が待ちくたびれちゃったじゃない」
妹が爽やかに言ってくる。
て言うか粧裕、何打ち解けているんだ?
流河、なんでうちになじんでいるんだ?
「流河君、夕飯食べていくでしょう。お母さんはりきっちゃうわ」
母さん。なに頬染めているんだ?
味方の筈の家族は流河のファンになりさがっている。
「ありがとうございます。お義母さん」
だあああっ僕は卓袱台(うちにはそんなものは無いが)をひっくり返しそうになった。
「母さんも粧裕も!!こいつの正体を知っているのか?」
怒鳴るような顔をして言うライトに二人は笑って答えた。
「お兄ちゃんのボーイフレンドでしょ」
ライトは顔を引きつらせた。
「流河さあ、お兄ちゃんのどこがいいの?」
粧裕が恐ろしいつっこみをしている。
「全てです」
はにかんで答える流河。
「やだーラブラブー」
粧裕、言葉間違っているぞ。
「なんで流河が僕の彼氏なんだ!!僕は認めていないぞ」
「え、だって流河がそう言ったもん」
やだーお兄ちゃん照れちゃって。粧裕のつっこみは容赦ない。
「粧裕、流河はロンドン帰りの帰国子女だから日本語に不慣れなんだ、彼は友達という意味でボーイフレンドと言ったんだよ」
ライトは引きつりながら優しく妹に教えてあげた。
「えーつまんない」
何がつまらないんだ?粧裕・・・
・・・そのことについて考えるのはやめよう。
ライトは流河の前の席に座るとにっこりと微笑んだ。
「突然来るから驚いたよ。流河」
暗に非常識だと伝えたつもりだ。
だが奴は帰国子女だから?通じなかった。
「会いたかったんです」
流河の答えにライトは固まった。
「それと夜神君の生活している家を見たかったんです」
「・・・・見てどうだった?」
ホテル暮らしのLからすれば犬小屋みたいに小さな家だろう。
ふん、ブルジョワめ。
というより監視カメラでうちの家の間取りくらい知っているだろう。
もしかしてこれも僕がキラであることを探すためのひっかけなのか?
疑いの目を向けるライトに流河は言った。
「住んでみたくなりました」
「・・・・・」
「親と同居もいいものですね」
流河の言葉に母と妹は頷いた。
「いっそ流河もうちに越してきちゃえば」
「流河君、ホテル暮らしだと不便でしょう。うちなら部屋余っているし、遠慮しないでいいのよ」
やめろ、女同士でタッグを組まないでくれ。
どうやら母と妹は流河をえらく気に入ったらしい。
「しかし、初めは二人きりの新居がいいので」
残念ですが遠慮しますという流河。
「やだー二人きりの新居なんて流河のエッチー」
妹が容赦ないつっこみを入れる。
そこで照れるな、流河。
僕は疲労しきった頭でふと気がついた。
「粧裕、なんで流河を呼び捨てなんだ?」
見た目そうとう変な流河だが年上に呼び捨ては失礼だろう。
ライトはそこらへん厳しかった。
「えーだってタメだもん、いいじゃん」
妹は膨れて答える。
「・・・・・は?」
今なんといった?
そういや流河は幾つなんだ?
てっきり僕と同じ年齢か上だと思っていたけれど?
有名大学を幾つもスキップで卒業しているとは聞いていたけれど?
固まって動けないライトに妹の容赦ない一言。
「年下のボーイフレンドなんて、お兄ちゃんもやるじゃん」
ライトの苦悩はまだまだ続く。
(これを書いた後、流河が高校を卒業したばかりだという事がジャンプに乗っていた、がびょん、Lはライトよりも年下だと思ったんだけどな、まあ高校もスキップしたということで、16歳くらいのLが好みです)