[ライトの苦悩5]

ライトにだって夢があった。
ちょっと前まではささやかだけれども夢と希望を持っていた。
だがそれは現実の前に無残にも打ち砕かれたのだ。
「・・・だからなんでこれがLなんだ」
そう。賢明な皆様はお分かりだろう。
ライトの夢を打ち砕いた超本人。
それは流河ことLという奇人の名探偵であった。

デスノートを拾いキラになった時からライトには夢があった。
きっと将来、自分を脅かすような好敵手が現れるだろう。
そして明智小五郎と怪人20面相のように
ホームズとモリアーティー教授のように、ルパン三世と銭形警部の?ように
華麗な戦いを繰り広げるのだ。
ああ、まだ見ぬ未来のライバルよ。
ライトはこう見えてもロマンチストであった。
この夜神月を脅かすようなライバル。
それは少なくとも頭脳明晰 容姿端麗、スポーツ万能の完璧な人間でなければいけない。
「そうでなければこのキラのライバルとは言えない」
ちょっとライトは乙女チックでもあった。
ライトの山よりも高く海よりも深いプライドは凡人をライバルと認めることを許さない。
そんな事を考えていた時Lが現れたのだ。
ライトはどきどきした。
キラとなって殺人者を罰していながらもどこか醒めていたライト。
だがLがライトの前に立ちふさがる。
ライバルとして。
ライトはわくわくした。
もう退屈なんて字は吹っ飛んでしまった。
(ライトはライバルという言葉に弱い)
やはり男の子たるもの、友情とかライバルとかいうスポコンな字面に魅かれるものなのだ。
ライトはとっても期待していた。
Lと出会うのを。
「・・・詐欺だ」
東大の入学式、ライトの前に現れたLを見てそう呟いたとしても仕方ないだろう。
がっくりと肩を落としたライトをリュークは慰めてくれた。
「でもあいつ頭いいんだろう、Lなんだから」
死神に慰められてライトはちょっと立ち直った。
いい死神だ。ありがとうリューク。
たとえ顔が動作があれでも一応は東大主席だし運動神経もいいようだ。
人間顔じゃないし。
まあ百歩譲ってライバルと認めてやろう。
そう寛大にも考えていたと言うのに。
「・・・・・何故?」
Lとの関係はライトの思惑とは大きく異なった方向に進んでいる。
「愛しています、夜神君、わたしと付き合ってください」
「だから僕は男なんだって」
「関係ありません、わたしには」
「僕にはある」
毎日繰り広げられるこの会話。
今では大学の名物だ。
ライトにだって夢があった。
大学に入ったら可愛い彼女を作るんだというささやかな夢が。
なのに何故?Lという奇人に言い寄られ、周囲からはそれを暖かく?見守られ、最近では貞操の危機まで感じている。
「こんな筈じゃなかったのに」
デスノートを拾ったら新しい世界を作るんだ。
なのに新しい世界どころか怪しい世界になっている
苦悩する月に今日もLが愛を囁く。
「一緒に新しい(ホモ?)世界を築きましょう」


ライトにとって人生は挫折の連続である。