「ライトの苦悩 ストーカー編」

「最近視線を感じるんだ」
 ここは都心の高層ビル、最高のセキュリティを誇るキラ対策本部である。
 そして、その最上階の一室はLの住居でもあった。
「いえ、正確に言うとライト君と私の新居です」
「そういう冗談は止めろって言っているだろう」
 ライトはサブイボを立てながら抗議した。
「私達は赤い糸で繋がっているんですよ、ライト君」
「繋がっているのは手錠だろうが」
 Lはライトとの同棲?に浮れきっている。
 月は大きくため息を付くとソファに座り込んだ。
「本当なんだ、ここに来てからもずっと視線を感じる」
「私の視線以外にですか?」
 Lのストーカーは今に始まったことでは無い。
 家に監視カメラを仕掛けられたり、大学で付きまとわれたりしているうちに月はすっかりLの視線になれてしまった。
(慣れたくなかったのだが)
「いや、Lのうっとおしい視線とは違う、もっと別の、粘着質なものを感じるんだ」
 Lは月の言葉を聞きながらしきりに貧乏揺すりをした。
「しかしここは高層ビル最上階、周囲にここよりも高いビルはありませんから覗き見も出来ない、セキュリティも万全です」
 気のせいです、と暗に言われ月は頷いた。
「そうだな、少し過敏になりすぎているのかもしれない」
 そう言いながら月は微笑んだ。


 パシャッパシャッ
 月の微笑み
 そのシャッターチャンスを逃すわけが無い
 エラルドコイルは隠し持っていたカメラでライトを激写した。
 ここは85階の高層ビル。
 エラルドコイルは見事な変装で高層ビルに潜り込むことに成功していた。
 いや、正確に言うと高層ビルの窓に張り付いていた。
「おーい新人、きばってやれよ」
「最初は高いからびびるかもしれねえけど慣れればどってこたあねえぜ」
 エラルドコイルは親方の言葉に頷いた。
「アリガトゴザイマス、ワタシオシゴトガンバリマスネ」
 たどたどしい日本語が仕事仲間の好感を誘う。
「しっかり働いて家族に仕送りしてやりな」
「慣れない日本だけど住めば都さ、分からないことがあったら俺たちに聞きな」
 エラルドコイルの変装は完璧だ。
家族思いの出稼ぎ労働者として窓掃除に精を出している。
「こうして労働しながらシャッターチャンスを狙う、私の計画は完璧だ」
 人間とは奇妙なもので日常的な光景は疑わないものだ。
 誰もお掃除お兄さんを探偵だとは思うまい。
 こうして窓掃除をカモフラージュにすればLもエラルドコイルに気がつかないだろう。

 部屋の中ではLと月が仲良くお茶を飲んでいる。
「やっぱり視線を感じるんだけどな」
「それはライト君の気のせいですよ。今は私とライト君の二人きりです」
 にじりよるL
 逃げるライト
「オーノー!!、そんなことをしたら、オウッっ羨ましい、、ライト君にあんな事もこんな事もしているなんて羨ましすぎる、」
 窓の外では興奮しながらライトを連写しまくるエラルドコイル。
 彼は探偵としても有名だがパパラッチとしてはもっと有名であった。

 危うしライト、パパラッチの罠から逃れることは出来るのか?次回に続く。