「何か大切な事を忘れている」
監禁されて7日目。
その日を堺にライトの記憶は曖昧となった。
それからずっと思い出せないままだだ。
「僕は何をしているんだ」
僕がキラ?
何故そんな誤解が生まれたのだろうか?
Lは夜神 月がキラだと確信している。
だから手錠で繋がれている。
「何故?Lは僕をキラだと思うんだ?」
ライトには分からなかった。
それだけでは無い。
ライトには記憶が無かった。
不安だった。
怖くもある、
記憶が無いという事実がライトの存在を根底から揺るがしていく。
「思い出せない」
とても大切なことだったはずだ。
大切な物があったはず。
誰よりも自分に近く、誰よりも自分を理解してくれた相手。
「何を忘れてしまったんだ」
苦悩するライト。
そんなライトに答えをきれた相手
それはLであった。
「ライト君の忘れてしまった物、それは愛です」
Lは断言した。
「私との愛です」
「はああ?」
困惑するライトにLは詰め寄る。
「ライト君と私は愛し合っていました。そのことをライト君は忘れてしまったのです」
いや、忘れていたのはそれでは無いような気がするのだが。
「ライト君は忘れているだけです」
「なんか愛とかそういう甘酸っぱいときめきじゃなくて、なんというかもっと大志とか野望とかそういうもののような気がするんだけど」
首を捻るライト
「それはライト君の勘違いです」
ライトは頭を捻った。
思い出さなければいけない。
忘れてしまったことを。
「でないとこのままではLに言い含められてしまう」
記憶喪失を盾に恋人同士にさせられてしまいそうだ。
必死に己の記憶を探るライト。
その時、一つの言葉が頭に蘇ってきた。
「ノート?そうだ、僕の大切なものはノートだったんだ」
Lは意を得たりとばかりに頷いた。
「そうです、ライト君の忘れてしまった大切な物、それはノートです」
Lは懐から一つのノートを取り出した。
「これがライト君の無くした記憶です」
Lから渡されたその黒いノートを捲り、ライトは驚きのあまり硬直した。
「こ。これは?」
Lは鷹揚に頷く。
「そうです、これは私とライト君の愛の軌跡です」
「・・・・日記」
そうなのだ。そのノートには二人の筆跡で事細かに記されていた。
月×日
ライト君、覚えていますか、ライト君とのファーストコミニケーションのことを。
東大の試験室、私とライト君の愛の始まりでしたね。
私はあの時ライト君に一目ぼれをしてしまったんです
月×日
Lも感じていたのか、僕もこの出会いでLに愛を感じたんだ。
背後の席で僕を見詰めていたLの奇妙な座り方にときめいてしまったんだ。
なんだろう?この日記は
「これが私とライト君の愛の証拠です」
Lの言葉にライトは戦慄した。
「これ、僕の字じゃない気がするんだけど」
ノートの字はどう見てもLが月の字を似せて書いたようにしか見えない。
「気のせいです」
断言するL
「ライト君は忘れているだけです」
本当か?本当なのか?
動揺するライトにLが擦り寄ってくる。
「警察上層部からの命令でキラ対策本部は事実上解散です。これからは警察の力はあてにならない」
私とライト君の二人だけでキラを追い詰めるしか無い。
「二人で愛と正義を貫きましょう」
後ずさるライトにLがにじり寄ってくる。
「ひいいっ」
ライトの苦悩はまだまだ続く。