「ライトの苦悩 ストーカー編2」

 弥 ミサが捉えられて3日が過ぎた。
 焦る月の前に現れたのはレム
 ミサの死神は告げる。
「ミサは、ミサには・・・私が・・・」
 レムは途切れ途切れの言葉で語る。
「ミサには私がデスノートの所有権を放棄させた」
 驚きおののく月とリューク
「ミサは私が縛られているものを取り逃がしてやるというと首を横に振った、死神の存在・・・自分に特別な能力が備わっているとばれるとお前に迷惑がかかると思ったのだろう」
 レムはミサの状態を伝える。
「そして精神的に限界が来たとみると自分の口を封じるために私に殺してくれと頼み始めた、全部お前に愛されたいためだ」
 レムは言った。
「いくら殺してくれと頼まれてもそんなミサは殺せない、見ていられなかった、この苦しみから救い出す方法は一つ」
 デスノートの所有権を放棄させること。
 レムの言葉に月は頷いた。
 ミサはこれによりデスノートの記憶は一切無くなる。
 ミサの殺人も、月がキラである記憶も無くなりミサから秘密が漏れることはなくなるだろう。
「しかしミサの好きな人間は夜神 月、その感情は残る」
 レムがノートの所有権を放棄し、夜神月に託せとうながすとミサはにっこり笑って気を失ったという。
「よくやってくれた、レム、僕もその方法しかないと思っていたんだ」
 月はそう断言した。
 その時は本当にそれしか方法が無いと思ったのだ。
 いや、実際今考えてもそれしかないのだろうけれど、
「・・・・早まった」
 数日後、月は頭を抱えて後悔していた。


 ここは東大キャンパス。
そこは一部異様に盛り上がっている。
「ねえ、あれ、ミサミサじゃない?」
「可愛いーミサミサ」
周囲の声と視線に月はこめかみを押さえた。


弥ミサはあれからすぐに釈放された。
 ミサが記憶を全て失っていたことが決め手となったのだ。
 ミサに対する疑惑はまだ晴れていないが、重要参考人という立場で釈放されたのだ。
 もちろん警察の監視下には置かれているが以前のようにモデルの仕事を続けることも許されている。
 ミサは釈放されるとすぐに月のところに来た。
 そして今も・・・・入り浸っている
 東大キャンパスに毎日現れるミサミサ
「ライトー お弁当作ってきたの、食べてくれるよね」
 ミサは健気だが思い込みが激しい。
 その激しさを一身に受けている月は脱力してしまう。
「レムが言っていたっけ、ミサの感情は残ると」
 ミサは自分が第二のキラであったことはきれいさっぱり忘れていたが月を大好きなことはしっかり覚えている。
 恋する女は強いのだ。
 ミサはお弁当箱を月の前で広げながら隣をキッとにらみつけた。
「なんであんたがライトの横にいるのよ」
「弥さんこそどうしてここにいるんですか」
 ミサが睨み付けた相手、流河は相変わらすの座り方でたんたんとしゃべる。
「ここは東大です、東大生以外が遊びに来るところではありません」
「ミサはライトの恋人だもん、いいじゃん」
 ねーっとミサはライトに同意を求める。
「夜神君は迷惑がっています」
 どうでしょうっとLが月に同意を求める。
「あんたはなんでここにいるのよ、休学中でしょうが」
「休学していると夜神君に会えませんから。これからはちゃんと通うことにしました」
 そしてLがミサに視線を向ける。
「それに私のいない間に夜神君に手を出そうとする愚か者もいることですし」
「なによ、ホモ、ライトはミサのナイトなんだからね」
「夜神君と私は運命で結ばれています」
「なによ、それ」
「私は夜神君の秘密を知っています」
 流河の言葉に月は盛大に顔をしかめた。
 Lはもう月をキラだと確信している。
 まだ証拠が無いから逮捕できないだけの話だ。
 Lは探るように月を見詰めた。
 無表情に、頬を染めながら・・・
「二人だけの秘密です」
 そう、Lが月をキラだと確信していることも、月がLに正体を知られたとわかっていることも二人だけの秘密なのだが。
「なんかいやだ」
 だから頬を染めて僕を見詰めないでくれ。
 月が机につっぷしそうになったとき、背後から声が聞こえた。
「ミサがせっかく作った弁当だ、早く食え、でないと殺すぞ」
・・レムだ。 
 ミサの死神は今、月の死神になっている。
 しかしこの死神はやっかいだった。
「ミサがこれだけ健気なんだ。答えてやるのが男ってもんだろう」

 死神のくせに人の恋愛事情に口を挟むな。
「大学を卒業したらミサと結婚するんだ、でないと殺すぞ」
 レムの横でリュークが騒いでいる。
「うひょひょっ弁当に林檎が入っているぞ、ライト、りんご食っていいか?りんごーりんごー」
 後ろではレムとリュークが、前ではミサと流河が月に詰め寄ってくる。
「ライト、ミサとこのキモい男とどっちが好きなの?」
「夜神君は私の方がいいですよね」
「ミサを邪険にしたら殺すぞ」
「リンゴーリンゴー」
 月は頭痛だけでなく胃まで痛くなってきた。

 初めはリューク
 何時も背後にへばりついている死神はうっとおしかったけれどもリンゴをやれば大人しくなるからペットのようなものだった。
 次はL
 いつも行動を監視するLは月がキラであるかぎり付きまとってくる。
 そしてミサ
 恋心を武器に毎日毎日月の前に現れる。
 最後はレム
 まるで小姑のように月に背後で小言を繰り返す。
「何故?」
 ストーカーまがいの死神と探偵と女の子
 いや、まがいじゃない。
 きっぱりはっきりストーカーだ。
 目の前と背後で繰り広げられる喧騒は毎日続くのか?
 月は窓から見える遠くの空をうつろな瞳で見上げながら呟いた。
「・・・どこか遠くにいきたい」


  月がノイローゼーになる日も近い


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