模木からの報告を受け、捜査陣は混乱していた。
「何故だ、ライト」
父であり捜査本部長の総一郎は悔し涙を流す。
松田や相沢も複雑な表情であった。
竜崎ことLは無言のまましきりに貧乏揺すりをして指を噛んでいる。
「とにかく、これはライト君に説明してもらったほうがいいですよ」
松田が意を決して提案した。
「きっと何か事情があるんです、きっと」
捜査本部は重苦しい雰囲気に包まれた。
「どんな理由だとしてもゆるせん」
夜神父はコブシを奮わせる。
「私がこの手でライトに制裁を加える」
それほどまでに本部長の怒りと絶望は深いのか?
皆はごくりと息を飲んだ。
数時間後、ライトは捜査本部に呼び出された。
「どうしたんですか?みんな集まって」
戸惑うライトの前に写真が並べられる。
「・・・これは」
写真を見て絶句するライト。
父は涙ながらに訴えた。
「ライト、お父さんはお前をこんな破廉恥な子に育てた覚えは無い」
そうなのだ。
写真は模木が隠し撮りしたライトのデート風景が写っていた。
何枚かある写真は全て違う女性。
可愛い女子高生からお姉さま、OL 水商売風、お嬢様タイプ選り取りミドリ、
ライトはこめかみを押さえた。
「ライト、お父さんは認めないわけじゃない、お前だってもう年頃だ。異性に興味を持つのも当然のことだ」
だがこんなに多くの女性をたぶらかすとは、女の敵、そして男の敵でもある。
真剣にキラである疑惑を晴らすため捜査陣の仲間入りをしていると思っていたのに片手間でやっていたのか?
所詮は大学生のお遊びだったのか?
皆が月に疑惑と不信感を抱いていた。
その時黙っていたLが口を挟む。
「まあ、ライト君にも事情があるのでしょうから、とにかく説明を聞きましょう」
おお、初めてLがまともなことを言った。
捜査陣は驚いた。
さて、困ったのは当事者であるライトだ。
女の子と付き合う理由は唯一つ、ミサのことがばれないようにの霍乱作戦なのだが、それは言えない。
ライトは頭を抱えた。
(落ち着け、僕ならこのピンチを切り抜けられる)
父にも、捜査陣にももちろんLにも納得のいく説明をしなければいけない。
(しょうがない、あの手は使いたくなかったが)
ライトは悲しげにうつむいた。
「ごめんなさい、父さん」
「ライト?」
ライトはその美しい顔を苦悩に歪ませた。
「僕だって、こんなに複数の女性と付き合うのは気が引ける、本当なら一番愛する人を大切にしたいんだ」
「ならなんでこんなプレイボーイの真似を?」
松田がしゃれにならないつっこみを入れる。
ライトは悲しげに震えた。
「実は、これは誰にも言いたくなかったんですけど」
皆が一様に耳をそばだてる。
「僕、男の人に人気があるんです」
「はあ?」
父がすっとんきょうな声を上げた。
「小さい頃から同級生の男にラブレターとかもらっていたし、よく痴漢にもあうんです」
唖然とする捜査陣。
「無理も無い、ライト君は男にしておくのがもったいないくらいの美人だから」
相沢がぼそりと呟いた。
「でもそれだけじゃないんです、高校3年のときからでした。僕の周りにストーカーが出没するようになったんです」
「なんだとおっ」
父は憤死寸前だ。
「盗撮されてビデオ取られたり、大学にも押しかけてこられて、僕本当に困ってしまって」
泣き崩れるライト。
そうなのだ。
本当にライトは困っているのだ。
Lに職権乱用でビデオを取られたり東大まで押しかけてこられたり。
「迷惑なのを分かってもらえないんです。僕がどんなにいやだと言ってもストーカーをやめようとしません」
ライトがキラだと疑っているLは捜査を止めないだろう。
「だから、僕はこうなったら態度で分かってもらうしかないと思って女好きのふりをしているんです」
微妙に現実とリンクしているせいかライト、感情の篭った迫真の演技である。
「そうだったのか、ライト」
父は美しく生まれすぎた息子を思い滂沱の涙を流している。
「ライト君、ただのすけべかと思ったらそんな事情が」
松田や相沢も同情してくれる。
しめしめ、うまく切り抜けられた、とライトが思ったその時であった。
それまで沈黙を守っていたLが立ち上がる。
「大丈夫です、お父さん、ライト君は私が守ります」
「はあ?」
突然すっとんきょうなことを言い出すLにライトは目を見開いた。
「ライト君がストーカーに会っているだなんて全然気がつきませんでした、それは私の不覚です」
だからストーカーはお前だって。
月の心のつっこみはLには伝わらなかった。
Lはライトに近寄りぎゅうぎゅうと抱きしめる。
ひいいっライトは心の中で悲鳴を上げた。
「心配しないでください。私がこれからずっとライト君の傍を離れずストーカーから守りますから」
しまった、ライトが思ったときにはすでに時は遅し。
「ありがとう。L、竜崎がついていてくれれば息子は安心だ」
夜神父は勘違いの感動をしている。
横で松田や相沢もしきりに頷いている。
「ライト君、これからはどんなときでも一緒です。ライト君の貞操は私が保護しますから」
いらん、そんな心配はいらん
ライトは心の中で絶叫したがそれは後の祭りである。
息も荒くLがライトを抱きしめる。
「夜神君の童貞は私が守ります」
ひいいっ
なんとなく、Lの罠にはまったような気がするのは気のせいだろうか?
夜神 月、彼はけっこう墓穴を掘りやすいタイプであった。
ジャンプPAGE簡単を読んでの感想ネタでした。