「ライトの苦悩 ストーカー編」


 夜神 月は目の前の光景に呆然としていた。
 ここは夏の日差しもまぶしい東大のキャンパス
 若者は青春を謳歌し、勉学にいそしむ場所だ。
 なのに何故?
「こいつらがいるんだ?」
 目の前にいるのは休学中のはずのL
 そしてエイティーンなど雑誌でモデルをしているミサ。
 Lは世界的な名探偵であり、キラ捜査本部を取り仕切る忙しい身だ。
 ミサはモデルであり、第二のキラである。
 宿命の対決
 二人は出会った瞬間にお互いの立場を認識した。
「ライトのお友達?個性的で素敵ね」
 ミサは可愛い顔ににっこりと笑顔を浮かべる。
 しかしその態度は非常に好戦的であった。
「私、ライトの彼女の弥 海砂、よろしくね」
 彼女という台詞に力を込めて言う。
「流河 ヒデキです」
 Lは黒い動物のような目でミサを見詰める。
「エイティーン3月号からのミサさんのファンなんです」
 Lはそう言った。
 だがその目はとても憧れのアイドルを見ているようには思えない。
「えっ本当?嬉しい」
 ミサもはしゃいでいるふりをしている。
 二人の間にビシビシッと熱い火花が散った。
 Lはふいにライトに向かっていった。
「ライト君、今日はホテルに来てくれるんでしょう」
「・・・えっ?」
 今日は捜査本部の会議は無い。
 なのに突然言い出すLの真意が見えない。
「ホテル?ミサもいきたいー」
「駄目です。これはライト君と私だけの時間ですから」
 くうっやられた。
 ライトは唇を噛み締めた。
 ここでホテルとは捜査本部のことだとばらすわけにはいかない。
 第二のキラであるミサは味方だといっても何を仕出かすかわからない時限爆弾のような存在だ。
「ホテルってなに?そこで流河くんと何をするの?」
 ミサはにっこりと恐ろしい微笑みを浮かべた。
 あどけないふりをしているところがまた恐ろしい。
「女ってこえええぇ」
 横でリュークがぷるぷる震えている。
「それは夜神くんと私だけの秘密です」
 Lが指を口にあててあどけないふりをした。
 こっちも怖い。
「秘密ってなに?ライトとミサの間には秘密なんてないでしょう」
 吐けっはくんだっとつめよられている様な気がする。
 ライトは思わずあとずさった。
「私と夜神くんの間にも秘密はありません。私は夜神くんの全てを知っていますから」
 L、また爆弾宣言を。
「全てってなによ」
 ふふんっとミサが鼻で笑った。
「夜神くんの全てです」
 月は頭を抱えた。
「なによ、ミサはライトの部屋に入ったこともあるんだからね」
「私も部屋の間取りならよく知っています」
 だから監視カメラのことは言うなって。
「ミサはライトのお母さんとも妹とも仲良しなのよ、家族に認められているんだからね」
 Lはミサの逆襲をあざわらった。
「私はお父さんに認められています」
 扶養家族よりも一家の主の方が強い。
 ミサは悔しそうな顔をした。
 不毛な争いは続く。
「私は夜神君の携帯アドレスを知っています」
 L,渾身の一撃。
 ミサは憤慨した。
「なんでー、なんでライトはミサに教えてくれないのにこの男には教えるの」
「いっいやそれは」
 もうここから逃げ出したい。
 今、月の願いはそれだけだ。
 しかしミサはそれを許してくれなかった。
「ミサなんてライトとキスしたんだからね」
 ミサ爆弾発言。
 Lの目がキラリト光った。
(ひいいっ)
 そんな獲物を狙うハンターの目で僕を見ないでくれ。
「・・・キス?」
「そうよ、ライトからちゅってしてくれたもんね」
 勝ち誇ったように言うミサ。
 Lはのそのそと立ち上がった。
「お子様ですね」
「えっ?」
 その瞬間、ライトはLに唇を奪われていた。
 ちゅうちゅう、ちゅうううーっ
 昼日中、健康的なキャンパスのど真ん中。
 ライトは抵抗しようとしたが両手を抑え込まれる。
 ちゅうちゅう、ちゅうううーっ
(ううっしつこい)
 まるですっぽんのようにへばりついてくるLの唇。
 ライトが息苦しくて口をあけた瞬間、舌が入り込んできた。
(ひいいっ)
 くちゅくちゅと音がするくらい執拗で粘着質なキスである。
 いや、その激しさは周囲の人々の足を止めてしまう。
 何時の間にか人だかりが出来ている。
(ううっこいつ、うまい)
 恐るべし、L
 ただ吸い付いているように見えながらも的確に月の口内を刺激する。
(あっはあぁ、やばい)
 意識が遠のく、
 酸欠でだ(と思いたい)
 腰が震えて立っていられない。
「いやああっ変態、ライトから離れなさいよ」
 ミサが強引に二人の間に割って入る。
 同時にライトは地面に膝をついた。
「・・・屈辱だ」
 不覚にも感じてしまった。
 あまりのショックに立ち直れない月。
 目の前では二人が不毛な争いを続けている。
「ミサはライトのこと全部知っているのよ。ずっと見ていたんだから」
「それはストーカーというのですよ」
 ミサもLには言われたくないだろう。
「私は夜神くんの寝顔を見たことがあります」
 だからそれは監視カメラでだろう、L
 どちらがよりライトの全てを知っているか?
 何時の間にか話の焦点はずれている。
「夜神くんのくせははははっと笑うことですよ」
「なによっライトは含み笑いも得意なんだからね」
 周囲は人だかり。皆聞き入っている。
「私は夜神くんのテニスウエアを見たことがあります」
「なによっミサだってライトの部屋着見たんだから」
 ああ、だからみんなに聞こえるように僕の話題をしないでくれ。


 ライトは屈辱に震えながら思った。
「Lの名前がわからなくてもいい、今はただこの二人から離れたい」
 だが二人は月に向かってにっこりと微笑む。
(Lは無表情だが)
「夜神くんは私のものです」
「ライトはミサのなんだからね」
(ひいいっ)
 Lだけでも大変だったのに、何時の間にかストーカーは二人に増えている。

 ライトの苦悩はまだまだ続くのであった

PAGE32賭の感想でした。