「Lの秘密 page34投身」

「ストーカーさん、これ犯罪だから止めなさい。今やめれば誰にも言わないし許してあげるから」
 操作3日目、極限状態から気絶した容疑者、弥ミサは意識を取り戻したときには別人のようになっていた。
「一度気を失って気付いてからずっとこの状態だ、」
 相沢がうんざりした様子で言う
「全く、こんなのでとぼけられると思っているんですかね」
 どちらかといえばミサに同情していた松田も呆れ果てている。
 そう、ミサは黙秘していた頃とは別人のようであった。
「じゃあ分かった、とりあえず目隠しだけでも取って、ストーカーさんの顔見たいな」
 まるでふざけているとしか思えないその口調に捜査陣は焦れる。
 Lはそんなミサの様子を冷静に伺っていた。
 彼はプロ、名探偵なのだ。
 容疑者のあがきなど見慣れている。
 取調べの最中、支離滅裂な言動で操作を混乱させようとするのは容疑者のよく使う手だ。
 Lは模木に連絡を取った。
「弥海砂を確保するとき「第二のキラ容疑で」と言いましたね」
 模木は即答える。
「はい、言われたとおり、後ろから目と口を押さえ第二のキラ容疑で連衡すると彼女には聞こえるように」
 手錠、アイマスクなどをしてもミサは抵抗する様子はなかったという話だ。
 彼女は観念していた?
 ならば今のこの様子は何なのか?
「サインもしてあげるし、握手も、そうだ、ほっぺにチューしてあげるから。ミサ逃げないから」
 彼女は本気でストーカーを説得しているようにみえる。
 こっけいなまでに真剣だ。
(あれだけ第二のキラとして話を進めていたのに何故今更ストーカーなど)
 Lは疑問を持つ、だからこそ自ら容疑者であるミサの取調べをすることにした。


「弥 海砂」
「ストーカーさん。何?放す気になった」
「寝る前までほとんど黙秘し、殺せとまで言っておきながら今更悪あがきか?」
「何言っているの?ミサを眠らせて連れてきたのストーカーさんでしょ。何?弥海砂取り調べちゃうぞとかそういうのがしたいの?」
 ミサの口調は幼く幼稚で、真剣に怯えていた。
「君は今何故そこに縛られている?」
 Lは質問を続ける。
「何故ってミサはアイドルだから?でもここまでしてくれたストーカーさんはあなたが始めてよ」
 あまりにもふざけた台詞に捜査陣の苛立ちはピークに達した。
「こらー、弥、ふざけるのもいい加減にしろ」
 温厚な松田ですら怒鳴ってしまうほどに・・・
「ひっこ、怖いな、なんなの、もうこんなの嫌だ。放して、放してよ」
 ミサは怒鳴られたことによりパニックを起こしている。
 Lは目で松田を注意した。
 取調べで一番重要なことは冷静さである。
 容疑者のペースに飲み込まれてはいけない。
 敵はそれを狙っているのだから。
 相沢が苛立たしく舌打ちをした。
 ミサがまたぐずりだしたのだ。
「そっそうだ、トイレ、トイレいきたいー」
 松田も相沢もうんざりする、
 しかしLだけはそんなミサに対して冷静に取り調べを進めていった。
「さっきから4分しか経っていません、我慢してください」
「なによ、そう言わなきゃずっとこのままじゃない。またミサのおしっこしてるところが見れるよ。楽しくない?この変態っ」
 ミサが叫んだ瞬間、Lはくわっと目を見開いた。
「私を変態と言っていいのはライト君だけですっ」

・・・この一言から捜査は更に混乱していく

        続く