ホテルに訪れた月は憔悴しきっていた。
「僕がキラかもしれない」
苦悩の表情でそう告げる月。
「ばっ馬鹿な、何を言っているんだ、ライト」
詰め寄る夜神局長。
「父さん、竜崎がLなら世界一と言っても過言ではない名探偵だ、そのLが僕をキラだと決め付けている、きっと僕がキラなんだ」
「なっなっなにを言っているんだ、ライトッ」
月はじっとLを見詰めた。
「はい、確かに、私の中では九分九厘月君がキラです。だから近々事情聴取することになるかもと・・・」
Lもじっと月を見詰めた。
見詰め合う二人。
「月君は鋭い洞察力を持っているがゆえに私の心理が分かったのでしょう」
FBI捜査官レイベンバーが日本に来てから死ぬまでに調べていた者、5月22日に青山に行った者、そして第二のキラ容疑者ミサが関東に出てきて接触をした者、全てが夜神月に当てはまる。
「僕がLの立場でも僕をキラだと推理する」
月は憂いを帯びた表情でLを見詰めた。
「これは、僕に自覚が無いだけで僕がキラかもしれないってことだ」
キラに操られた犯罪者が残した「死神という文字」第二のキラのメッセージにも「死神」
死神など信じていないがこんな言葉を突きつけられ世界一の探偵に「お前がキラだ」と疑われる。
「もう自分で自分がわからなくなる、怖くなる、頭がおかしくなりそうだ」
自分に自覚が無くても例えば寝ている間にもう一人の月、死神が殺人を侵しているのかもしれない。
「それはありませんでした」
Lは断言する。
「実は月君の部屋に五日間ほど監視カメラを付けていた時があったんです」
その瞬間、捜査陣に沈黙が走った。
「カメラ?」
呆然とする月にLは告げる。
「はい、ライト君は夜普通に寝ていました、可憐な寝顔で時々胸元をはだけさせて寝乱れた姿を私は確認しています」
「そっそこまでしていたのかっ」
「はい、その可愛らしい寝姿は私のビデオに収めてあります」
捜査陣の間に一つの言葉が浮かんだ。
・・ストーカー
月の顔は真っ青になったり真っ赤になったりと変化が激しい。
「じゃあ、その五日間に僕に死神の行動は無かったって事か?」
「はい、天使のような寝顔でした」
「・・・・」
月は困った。
自分への疑いを濃くさせて監視させるのが目的だったのに、話がどんどんずれている。
「キラとしてのぼろは出さない、か、実際そうなのかもしれない、一体どうなって、いやどうしたらいいんだ、僕はやっぱりキラなのか?僕なりの推理をしても可能性は高く思える」
月は強引に話を持っていこうとした。
「何を言っているんだ、ライト、考えすぎだ」
夜神局長が息子を慰める。
「正直に言うが、僕はある程度のストーカーは死んだほうがいいと思っている、こういう考えを持っている人間なら誰でもキラになりえると思うんだ」
「・・・ライト」
「毎日僕の隠し撮りビデオを見てナニをしているのかと考えるだけで・・・、こんな奴は死んだほうがいいと思う人間は僕の中にたくさん存在しているんだ」
感極まったかのように松田が叫んだ。
「ライト君、それは僕だって同じだ、僕の心のオアシスライト君がストーカーの餌食になっていると思うだけで、僕だってストーカーなんて死んだ方がいいと思ってしまう。人間結構だれでもそうなんじゃないかな。だからって本当にストーカーを殺したりしない、そうだろ」
そう、松田の言うとおりだ。
確かにストーカーである?Lは生きている。
「いや、あの時はカメラ不足と捜査員不足もあり在宅時しか見ていない、五日間24時間ストーカーしていたわけじゃない」
相沢が月に疑惑の目を向ける。
「だからあれはストーカー行為じゃなく捜査なんです」
Lは言うが誰もその言葉を信じない。
「Lほどのストーカーならばライト君の一挙一動を見逃さない、だが学校などにも行っていたし自由に外出出来た。万が一カメラに気がついていたら家にいないときにキラになる方法があったかもしれない」
Lはしばらく考え込んだ後、無表情に言った。
「何か皆さん私がストーカーだと誤解しているようですが、いいでしょう。夜神月を手足を縛り長期間牢に監禁」
「ちょっと待てーっ」
それじゃあまるっきりストーカー行為じゃないか。
夜神局長が叫んだ。
「私は息子をストーカーの餌食にはさせんぞ」
叫ぶ局長に月は言った。
「いいよ、父さん」
「・・・ライト」
「やるよ、いや、そうしたい。僕もこのまま自分がキラでないかと心の中で怯えながらキラを追っていくことは出来ない、はっきりさせたい。一刻も早く」
確かにこの方法が一番早いだろう。
月は決意を固めた表情でLに視線を向けた。
「その代わり、竜崎が僕がキラだとわかるか、キラじゃないと納得するまで僕が何を言おうとどんな状態になろうと絶対に自由にしないでくれ」
「わかりました。しかし私のライト君への疑いが晴れるなどという事はどれだけ時間を費やすか、私にも想像がつきません、そこは覚悟しておいてください」
Lの言葉は容赦なかった。
「それともう一つ、監視するのはいいが僕に触ったりするのは無しだからな」
月がそう言った瞬間Lは急にがりがりと爪を噛み始めた。
「ちょっとだけでも駄目ですか?」
「・・・駄目だ」
「ちゅうだけでも」
「絶対駄目」
ショックもあらわにしきりと貧乏揺すりをするL
「これは捜査なんだから、指一本僕に触れるなよ」
「それでは私が我慢出来ません」
無表情にショックを受けているLに月はにっこりと微笑んだ。
「監禁されている間、Lは指でもくわえて僕を見ているんだね、ストーカーらしく」
そ、それは生殺しというやつではないだろうか。
戦慄を覚える捜査陣に月は断言した。
「もしLが僕に指一本でも触れたら僕はLを痴漢として訴えますから」
そうなれば捜査本部は自然と解散になってしまう。
まさか、夜神月はキラで・・・それが狙いなのか?
・・・痴漢で捜査本部解散
松田や相沢、そして夜神局長はこの展開についていくことが出来なかった。
ちょっと強引なねたですいません。
精進しなおします。