「月とリュー君1」

このお話はパロディです。デスノートの設定を思い切り無視していますがそこらへんは笑って流してください。
たとえノートを触らなくてもリュー君が見えちゃっても・・・月がキラ月なのか白月なのか微妙でも・・・Lが生きていても・・・なんちゃってメルヘンですから・・・


 

 

 


 ○月×日
今日から月君がキラ捜査本部に加わることとなった。


 

 月君というのはキラ捜査本部局長 夜神総一郎氏の愛息で東大主席の男の子だ。
 頭が良くて顔もいい。
 ついでに性格もとってもいい・・・・いい性格をしている。
 Lこと竜崎にキラ容疑をかけられちゃったりしているがそれはそれ、これはこれ。
 夜神 月の卓抜した推理力とLに匹敵する推理力は捜査本部に必要なのだ。
 本当に・・・・必要なのだ。
 竜崎の推理力アップのためにも・・・
「今日は月君の初出社ですね」
 竜崎は朝から、いや正確に言うと3日前からでれーんと鼻の下を伸ばしている。
 目なんて瞳孔開きっぱなしでイッてしまっている。
 いやいや、それは何時ものことなのだが
「今日から私と月君は同僚 ふふふ」
 どうしてそれでにやけるんだ?竜崎。
 夜神総一郎は一抹の不安を覚えた。
「違いますよー、竜崎、竜崎は月君の同僚じゃありません。上司になるんですよ」
 松田の一言に竜崎の鼻は更に伸びた。
「上司・・・上司と部下。私と月君、素敵です」
 何を、何を想像しているんだ?
なんでそんなに興奮しているんだ?
 竜崎の息は荒く鼻の下はすでに地面に届いている。
「竜崎・・・月君は捜査に協力してくれるだけなんだからな」
 セクハラだけは止めてくれ。
 相沢と模木は真剣にそう祈った
「竜崎がびしっと推理決めてかっこいいところ見せたら月君惚れ直しますよ・・・きっと」
 また余計なことを松田が言う。
竜崎の鼻が限界まで伸びきった時、チャイムが鳴った。
 ピンポーン
「はいはい、今開けますよ」
 松田がいそいそとドアに駆け寄る。
 バタンッ
 景気良く開けるとそこには愛らしい可愛らしい美しい美少年夜神 月が清楚に佇んでいた。
「こんにちは、松田さん」
 ドアを開けてくれた松田ににっこりと笑いかける月。
 その笑顔だけで松田はメロメロだ。
「このビル、すごく大きいから迷っちゃいました、ははは」
 さりげなくキラ笑いをしながら月は部屋に入った。
 入ったのだが・・・・
 皆の視線が月の背後に集まる。
 集まったまま無言の沈黙
 どれくらいたったであろうか。
 皆を代表して、竜崎が声をかけた。
「・・・月君、背後のそれはなんですか?」
 月はにっこりと笑って答えた。
「僕のペットだよ」
「・・・・」
 再び沈黙が落ちる。
 月の背後から視線を外せない。
 だってそこには・・・今までに見たことの無い未知の生物がちょこんと(というには身長2メートル以上)いたのだから。
 その生物というのは?
 どう見ても人間には見えない。
 でも動物にも見えない。
 服を着ているし二足歩行もしている。
 ピアスまでしている。
 顔色はとっても悪い(と言うか青い)
「月・・・・その、そのペットかどうしたんだ?」
 皆の疑問を代表して夜神父が問いかけた。
 父さんは、父さんは月がペットを飼っているなんて知らなかったぞ。
 しばらく家に帰らないで捜査本部に泊まりこんでいたのがいけなかったのだろうか?
 こんなグロテスクな化け物をペットにするなんて。
 それより・・・どこで買ったんだろう?
「うん、拾ったんだ」
 月は明るく爽やかに答えた。
「なんか、怖いっすよ、ペットにしては」
 そりゃあそうだ、死神なんだから。
 松田はちょっと怯えている。
 模木や相沢も身構えている。
「大丈夫、噛み付かないから」
 ねっリューク、と月は背後に笑いかける。
 こくこくと頷くリューク
「ちゃんと躾てあるから大丈夫」
 何が大丈夫なんだ?
 月、何が大丈夫なんだ?
 父さん分からないよ。
 夜神局長が親子の断絶に苦しんでいる間に竜崎がまとめに入った。
「これが月君のペットだということは分かりました。しかし何故ペットがここにいるんですか?」
 言外に何故連れてきたのかを問いただす。
「駄目かな?ペット連れてきたら」
 月はしょぼんと項垂れた。
(もちろん演技だ)
「いや、駄目ってことは無いけど・・・ほら、ここ一応職場だからさ」
 相沢が場をとりなそうとする。
「でも、リュークは僕からでないと餌を食べないんです。僕が捜査に協力するためにここに泊り込んだらリューク死んじゃう」
 悲しそうに言う月、見事な演技力だ。
「ライト、俺死神だから死なないぞ」
「馬鹿リューク、それ言っちゃ駄目だって」
 動揺する捜査本部。
「リュークは寂しがり屋なんです。一人になるとでんぐり返ししちゃうんです」
 それ意味ないから。
 そう思ったが誰も突っ込めない。
「僕、捜査に協力したいけれど、もしこの職場がペット不可だというのなら・・・」
 協力しないぞ、と言外に脅す月。
 しばらくの沈黙の後、竜崎がしぶしぶ譲歩した。
「仕方ありません、他ならぬ月君の頼みですから」
 ぱああっと月の顔が笑顔を浮かべる。
「本当に、ありがとう、竜崎、良かったね、リューク、これで何時も一緒だよ」
「やったーライトと一緒だ」
 リュークは月に抱きついた。
 月もリュークに抱きついた。
「ちょっと待ってください、ペットの持ち込みは許可しましたが過剰なスキンシップは禁止です」
 リュークと月の間に割り込む竜崎・・・・大変大人気ない。
 しょうがない。ここは僕が、と松田が立ち上がった。
「ほらほら、竜崎も嫉妬しないで。月君もリュークとじゃれてばかりいないで」
 その瞬間、松田は飛んだ。
 月の回し蹴りを食らって吹っ飛んだ。
「リュークを呼び捨てにしないでください」
 傲慢に言い放つ月はキラキラ輝く女王様。
 松田は鼻を押さえながら(キラ光線にやられた)質問した。
「それじゃあ僕達はなんて呼んだらいいんですか?」
 月はにっこり笑って教えてくれる。
「リュークだからリュー君」
 月は後ろを向いて微笑む。
「いいよね、リューク」
「俺はなんでもいいぞ」
 うひょひょっと笑う死神
「リュー君をリュークと呼んでいいのは飼い主である僕だけだからね、リュークも他の人間に呼び捨てにされちゃ駄目だよ」
 リュークの神をわしゃわしゃ撫でながらそう言う月は完璧飼い主モード
「月、ペットを飼ったせいか性格変わったな」
 力無く項垂れる夜神局長。
 相沢、模木、松田は異様に仲良い飼い主とペットに目を剥いている。
 そんな中、竜崎は激しく嫉妬の視線をリュークにぶつけるのであった。


 「月とリュー君 3」

「リュー君リュー君」
 ここは平和な捜査本部
 月がトイレに行っている隙に竜崎はこっそりリュークに話しかけた。
 竜崎の手には真っ赤なりんご。
 何時ものよりも赤くて美味しそうな高級りんご
 竜崎はそれを見せびらかしながらリュークに話しかけた。
「これ、あげます」
「うほ?本当か」
 よだれをたらさんばかりのリュークに竜崎はにやりと笑う。無表情に。
「これあげますから月君に付きまとうのをやめてください」
「俺、付きまとってないぞ、ペットだぞ」
「リュー君がいるからちっとも捜査がはかどりません、月君はリュー君を構い過ぎです」
 それは一理あるので捜査メンバーは固唾を呑んで見守っている。
(というより係わり合いになりたくないから見ない振りをしている)
「月君は私の月君なのに、リュー君が来てからちっともかまってくれません」
 それはリュー君のせいでは無いと思う。
 そう呟く捜査メンバー
「とにかく、このりんごあげますから私の月君を返してください」
 目の前でりんごをちらつかせる。 
「うほほっ」
 りんごの甘い匂いに惑わされそうになったがリュークはがんばった。
「いらない、俺はライトと一緒にいるほうがいい」
 ギラリッ竜崎の目に殺気が籠もる。
「仕方ありません、こうなったら実力酷使です」
 竜崎は携帯を取り出した。
「ワタリ、今すぐあれを」 
 5秒後、現れたワタリはダンボールを抱えていた。
 中には高級りんごがぎっしりつまっている。
「これでもまだ逆らいますか?リュー君」
「うほっうほほほほっ」
 甘い甘いりんごに誘われるかのようにリュークがふらふらと近づいた。
 その時
「リューク、何しているんだ」
 地を這うような恐ろしいキラ声が背後から聞こえる。
 おそるおそる振り返るリュークと竜崎。
 そこにはトイレから出てきた月が仁王立ちしていた。
「あれ程僕以外からりんごをもらっちゃ駄目だっていっただろうが」
 怒っている
 無茶苦茶怒っている。
 あまりの恐怖に縮こまるリューク
 捜査メンバーも恐ろしすぎて目を離せない。
(でも正視出来ないで横目で伺っている)
「しかも竜崎から貰うだなんて、この僕のペットが他の人間に餌付けされるだなんて許せない」
 いや、月君本気です。
 本気で怒っています。
「もし竜崎のりんごに毒でも入っていたらどうするんだ?」
 白雪姫ですか?どこの世界の話ですか?
「俺、死神だから死なないぞ」
 ぼそぼそ言うリュークの言い訳に月がキれた。
「どうやらお仕置が必要だね、リューク」
 顎で別室を指す月
 ちょっと来い、別室へ
「ひいいっ」
 心の中で悲鳴を上げる捜査メンバー
「ライト、ごめん、ごめんなさい、もうしません」
「煩い、意地汚いペットには躾が必要だよ」
 2メートル以上ある死神をずるずる引きずっていく月は閻魔様より怖い。
 皆の注目が集まる中、月は振り返るとにっこり笑った。
「竜崎、お前にも後でたっぷりお仕置きしてあげるから」
 その言葉に凍りつく捜査陣
 バタンッ
 閉じられた密室
 その中で何が起きたのか誰も知らない。

 

 

          

   ごめん、メルヘンのつもりだったのに・・・

 

             

 

「月とリュー君 2」


「ライトーッ マリオゴルフしようぜ」
俺退屈だ。
「しょうがないなあ、ほら、りんごあげるからもうちょっと大人しくしていて」
 にっこり笑いながらりんごを差し出す月
「わーい、りんごりんご」
「本当にリュークはりんごが好きなんだね、リュークが一番好きなのはりんごかな?」
「んにゃ、俺が一番好きなのはライトだ」
「僕なんてリュークが大好きなんだからね」
「俺はライトが大大好きだ」
「僕なんて・・・」
「うがあああっ」
 ライトとリューク、飼い主とペットの甘ったるい会話を遮るがごとく竜崎が雄たけびを上げた。
「なに?竜崎」
「うほ?」
 びっくりする月とリューク。
 竜崎は雄たけびを上げ続けながらぷるぷると貧乏揺すりした。
「もう我慢出来ません、月君」
「トイレ?我慢しないで行ってくればいいのに」
 身体に悪いよ。
 月は眉を潜めて進言する。
「違います、トイレじゃありません」
「じゃあ何?」
「確かに私はペットの持ち込みを許可しました。しかし今は会議中です。ペットにかまうのは止めてください」
「ほら、怒られちゃったよ、リューク」
「ごめん、ライト」
「ああ、リュークのせいじゃないんだ、僕が悪いんだ、僕がキラだと竜崎に疑われているのがいけないんだ」
 悲しそうに言う月、完璧演技入っている。
「月君、ペットを過剰にかまうのはやめてください。かまうのなら私をかまってください」
「やだ」
 月は即答した。
「何故ですか、月君、私は月君にだったら、月君にだっ
たら」
 何を言うのだろう・・・
 ごくりっと捜査本部の喉が鳴る。
「ペットになってもいいです、いや、月君のペットにしてください」
 取りすがる竜崎に月は冷たい視線を向けた。
 捜査メンバーは生暖かい視線を向けた。
「いやだね」
「何故です?」
「竜崎は可愛くないじゃないか」
「その死神は可愛いんですか?」
 取り乱す竜崎
「可愛いよ、ぎょろんとした目も、大きな口も、もしゃもしゃの頭も」
 それのどこが竜崎と違うんだろう。
捜査メンバーは首を傾げる。
「月君の美的感覚おかしいですよ。私の方が可愛いですよ、百倍キモカワイイですよ」
 死神より百倍キモカワイイ竜崎、それはそれで嫌かもしれない。
 竜崎の言葉に冷たい笑いを浮かべるキラ月女王様。
「竜崎はなごみ系じゃないからね、僕はリュークじゃなきゃ嫌だよ」
「俺もライトじゃなきゃ嫌だ」
 すかさず言うリューク。
 月は死神をなでなでしてりんごを上げた。
「うほほっりんごりんご」
「いっぱい食べていいよ、リューク」
 仲良きことは良きことかな?
 戯れる飼い主とペット
 その姿を見ながら捜査陣は大きくため息をついた。
「死神をなごみ系って言えるのは月君くらいなもんだよ」
 松田はぼそぼそ呟く
「・・・全然会議が進まない」
夜神局長の呟きに皆が頷く
 そんな中、竜崎は密かに復讐を練っていた。