「月とリューク1」
月とリュークは仲が良い。
そんなことはミサだって分かっているけれど
「ちょっとヤけちゃうな」
目の前の光景を見てミサは大きくため息を付いた。
昼下がりの午後
フローリングの床の上で月はすやすや熟睡している。
窓辺から差し込む春の光が柔らかく月を包んでいる。
傍らには死神、
寝ているリュークの背中によりかかって寝ている月は天使みたいに綺麗だ。
大好きなリュークの羽にくるまれて月は完全に眠りこけている。
ずっとLとの手錠生活が長かったから心身ともに疲れきっているのだろうか?
最近、月はよく眠る。
Lがいなくなったから安心している?
「それともリュークがいるから?」
リュークの傍だから月は安心して眠れるのだろうか?
すやすやと寄り添い眠る一匹と一人を見てミサは苦笑するしかない。
「いいなあ、リューク」
月にこんなに好かれているリュークが羨ましい。
月はミサの前ではこんなにくつろいだりしない。
こんな風に熟睡したりしない。
ミサの前の月はかっこよくて大人で頭が良くて。隙が無い。
「そんなライトも大好きだけど」
ミサはため息をつくと二人の傍にしゃがみこんだ。
「もっといろんなライトが見たいのに」
どんなライトでもミサは好きになってみせるのに。
「もっとミサに頼ってよ」
そう膨れながら、ふとミサは思った。
「あの男は?どんなライトを知っていたのかしら」
もういない、キラに執着していた男の目にはライトはどういう風に映ったのだろうか。
そんなことを考えていると眠たくなってくる。
ミサは大きくあくびをすると二人の横に寝そべった。
「ミサも混ぜてね、ライト」
リュークの次でいいから。2番目でいいからミサのこともちゃんと見てね。
そう心の中でつぶやきながらミサも昼寝に参加するのであった。
昼下がりの午後の一こま。
「月とリューク2」
最近 月は不安定だ。
よくしゃべるしよく笑う。
時々泣きそうな顔をするし寂しそうだ。
みんなの前では強がっているけれど、リュークの前でだけは素直になる。
「リュークはずっと僕の傍にいるよね」
二人きりになると必ず聞いてくる。
「うほ、もちろん」
リュークは必ずそう答える。
「本当に?」
「本当だ」
リュークは言う。
「俺は絶対ライトから離れない」
「ずっと一緒なのかな?」
酷く幼い表情で、不安そうに何度も問う月。
新世界の神は自分のしでかした事に怯える子供のようだ。
それほどLがいないのが辛いのだろうか?
リュークはライトをじっと見詰めた。
「あいつはずるい」
月は爪をしきりに噛みながら文句を言う。
「僕を捕まえると偉そうなことを言っていた癖に、あんなにあっけなく死んでしまった」
がりがりと爪を噛む月、前には無かった癖だ。
「離れないとか言っていたくせに、監禁したり、手錠までして僕を見張っていたのに」
月は小声で呟いた。
「どこにいってしまったんだろう?」
月は不思議に思う。
あれだけ強い感情でキラを追いかけていたくせに、死んだらもう忘れてしまうのだろうか?
無くなってしまうのだろうか?
殺したのは月だ。
それで文句を言うのはお門違いなのかもしれないが、月はそれが不思議だった。
Lがどこに消えたのか?どこにいってしまったのか不安だった。
「リュークもどこかへいってしまうのかな?」
月は問いかける
「僕が死んだら、僕はリュークを忘れてしまうのだろうか?無くなってしまうのかな」
そしてリュークは月を忘れてしまうのだろうか
「忘れない、ずっと傍にいる、ライト」
不安な月をリュークは抱き込んだ。
こんな不安定な月を誰にも見せたくないというように、そっと隠すように羽の中に抱きしめる。
「大丈夫、俺がいるから」
その言葉に月はうっすらと微笑む。
それは見ている死神が悲しくなるくらい寂しそうな笑みだった。