「眠れぬ夜」


夜の闇が部屋を覆っている。
就寝時間を過ぎてどれくらい経っただろうか。
ヤンはベットの中で何度も寝返りを打った。
普段寝つきはこの上なく良く、周囲から呆れられている。
だから皆は知らない。
ヤンが眠れず朝まで己の体を抱きしめて過ごす夜があることを。
「うぅんっ」
何度も体勢を変え、眠ろうと努力するが無駄に終わる。
身動ぎすることで返って目が冴えてしまう。
意識がはっきりすると自覚が強くなる。
何故眠れないのかを。
ヤンの身の中で疼く萌芽を。
「あっああぁ」
体が熱い。
微熱でもあるのだろうか。
気だるくて指の一本も動かしたくないのに体は求めている。
人の体温を。
男の欲望を。
「んっはあぁ」
ヤンは耐え切れず下着に指を滑り込ませた。
僅かに立ち上がり滑っているそれに手を沿わせる。
「んっんんっ」
感じる部分を握り締めると快楽が波の様に訪れる。
だがそれは穏やかな波だ。
ヤンの欲するものでは無い。
欲しいのは・・・もっと奥・・・
「はあぁっあんっ」
ヤンは躊躇うことなく自分の蜜でぬめった指先を後蕾に突き入れた。
「あっいいっああぁ」
ぐちゅぐちゅと音が出るくらい激しく掻き回す。
指の腹で感じる部分、前立腺を弄りながらもう片方の手でそそり立つ己を慰める。
「気持ちいい、ああ、いいぃ」
夢中で腰を振りながら奥を弄る。
何時の間にか前をしごく手がおなざりになっている。
後ろの方がより感じられる。
自分の体はそういう風に躾けられた。
物心ついた時から念入りに、たっぷりと愛されて育った。
だから
「・・・足りない」
蕾を弄りながら・・・射精しながらヤンは物足りなさに腰を振るわせた。
こんなのでは足りない。
自分の手では本当に絶頂を極められない。
逞しい男に抱かれ、舐められ、その欲望を感じなければイくことが出来ない。
それでも体は即物的に出すことは出来て・・・射精後の余韻に 浸りながらヤンは昔の事を思い出していた。
昔、誰からも愛され一番幸せだった無知な頃の事を。



ヤンは5歳から15歳まで父親の宇宙船で暮らしていた。
艦長であるタイロンと操縦士のオスカー、機関士のエドワード
ヤンにとって三人は家族であり 全てであった。
10年間の間、ヤンが地面を踏んだのは年10日も満たない。
ヤンの世界は宇宙船の中で、閉ざされた空間で、限られた人数で構成されている。
他の人間など必要無かった。
物心ついた時から三人はヤンを愛してくれた。
幼いヤンは東洋系特有の華奢な肢体美少女と間違えるほどの可憐さを併せ持っていた。
三人はヤンを姫君のように扱い、何よりも大切に育んだ。
四人だけの世界。
歪な楽園。
その中で世界はヤンに優しく全てがヤンのために動いていた。
そう・・・彼等はヤンの家族であり恋人であり・・・しもべだった。

達した後の虚脱感でうつらうつらしながらヤンは優しい昔の記憶を夢に見ていた。
三人に愛された背徳の日々を・・・

 

というのはどうかなぁ、と・・・
すいません、親子なので裏です、裏