「LOST17」

「いいですよ、もう来なくて」
「え?」
「先輩がパーティーで隅に追いやられるのが可哀想だから付き合ってやってもいいと思ったけど、もう面倒になったし」
「アッテンボロー?」
 突然冷たくなったアッテンボローにヤンが怪訝な声をかけた。
「どうしたの?アッテンボロー」
「て言うかもう止めましょうよ、初めから男同士で遊びだったし、卒業はいい機会ですよ、綺麗に別れて後腐れない」
「・・・アッテンボロー」
 ヤンの声が沈んでいる様に聞こえるのは気のせいだ。
 泣きそうな声なのは聞き違いだ。
「大体最初から仲間との賭けだったんですよ、先輩を落とせるかどうかってね、儲けさせてもらいました」
 その点は感謝してますよ、先輩
「男とやるのは新鮮だったし先輩の体、具合よかったから楽しかったです。でも卒業したら終わりですから」
 酷い事を言っている自覚はある。
 だが・・どうしてもアッテンボローは今ヤンを傷つけたかった。
 自分が傷ついたようにヤンにも致命的な傷を負わせたかった。
 パーティーに出る気も失せるようにさせたかった。
「まあ先輩も楽しめたからいいですよね、俺が抱いてやらなかったら今でも先輩は童貞でしたし」
「・・・アッテンボロー」
 小さい声が聞こえる。
 弱々しい声が。
「それじゃあさようなら、先輩」
 アッテンボローはそれだけ言うと携帯を切った。
 胸が痛くて仕方ない。
 振り切るように部屋に戻り制服に着替えた。
 仲間の下へ行くと驚かれたが構いはしない。
「ダスティ、お前出かけるんじゃないのか?」
「いいよ、こっちの方が面白そうだ」
 怒りはまだ収まっていなかったがアッテンボローは無理して笑った。
 悲しそうなヤンの声を思い出し胸が痛んだがそれも無視した。
 さあ、パーティー会場へ乗り込んでやる。
 自分を振ってジェシカと楽しんでいるヤンに声をかけてやろう。
 どんな表情をするだろうか。
 暗い想像をしながらアッテンボローは仲間と会場へ向った。