「LOST18」

 華やかな式典。
 卒業生は皆パートナーと共にパーティーを楽しんでいる。
 ダンスに興じるカップルもあればワインを楽しんでいる集団もいる。
 アッテンボローは辺りを見渡した。
 ヤンの姿が見つからない。
 その時、金髪のカップルが目に止まった。
 ジェシカエドワーズと・・・ジャンロベールラップ
 確かラップは次席で・・・ワイドホーンとライバルで、
 もしかしたら自分は取り返しのつかない間違いを犯したのかもしれない。
 アッテンボローが思うより早く、ラップがこちらに気が付き声をかけてくる。
「やあ、アッテンボロー君だね、ヤンから君の噂はよく聞いているよ」
「卒業おめでとうございます、先輩」
 祝辞を言いながらアッテンボローは辺りを見渡した。
「あの・・・ヤン先輩は?」
 隣にいたジェシカが答えてくる。
「ヤンとはさっき会ったわ、つい話し込んでしまったから約束に遅れそうだと焦っていたみたい」
 ジェシカとヤンは友達だ。
 廊下で声をかけられ、無碍に断れず付き合っているうちに約束の時間に遅れそうになってしまった。
「ヤンと話すのもこれが最後と思ったらつい引き止めてしまって、悪かったわ」
 ジェシカの言葉にラップが微笑んだ。
「最後じゃないだろう、俺達の結婚式にはヤンも招待するつもりだよ」
「ラップ」
「君からパートナーに申し出てくれてありがとう、今までずっとデートに誘っても断られていたから今回も諦めていたんだ」
 ラップは笑いながらこっそり教えてくれる。
「ジェシカは実はヤンが好きだったんだ、でもヤンには意中の人がいたからね、そんなジェシカを慰めたのが俺さ 言ってみればヤンは俺達のキューピットだな」
「もうラップったら、意地悪ね」
 ジェシカは頬を染めながら幸せそうにラップに寄り添っている。
 アッテンボローは声がかすれない様に気を使った。
「ヤン先輩はどこにいるんです?」
「さあ、荷造りをするとか言っていたけど」
「ヤンはせっかちだな、いつもはぼんやりしているのに、まあパーティーとかは奴の一番苦手な場所だから無理もない」
 ラップはそれからアッテンボローに握手を求めてきた。
「ヤンは君と付き合ってからとても楽しそうだった。君の事を褒めていたよ、まれに見る逸材だと評価していた」
「・・・そうなんですか」
「これからの君の活躍に期待している。立派に卒業していい軍人になってくれたまえ」
 ラップはそれだけ言うとジェシカを伴ってパーティーの輪に戻っていった。
 アッテンボローは動けなかった。