「LOST22」  

 その場から離れた後、ヤンは痛む胸を押さえていた。
 久しぶりに会ったアッテンボローは昔と変わっていなかった。
 いや、子供っぽさが抜けてすっかり男の顔になっていた。
 胸が痛む。
 まだ好きなのだ。
 あんなに酷い事をされたのに忘れられない。
 それは彼が自分にとって初めての人だったから。
 初めて好きだと思い、好きだと言われた。
 最後は辛かったが今ではいい思い出に変わったと思っていたが会ってみて違うと気が付いた。
 まだ好きなのだ。
 だが・・・ヤンは切なげに苦笑した。
 先程アッテンボローはエルファシルの事をしきりに褒めていた。
 あの件から、ヤンの周りにはそういう人間が取り巻くようになった。
 媚を売る人間が増えた。
 アッテンボローもそういう人間と同じだとは思わない。
 思わないけれど・・・
「まだ好きだよ、でも」
 私は君を信用出来ないんだ。

 ヤンの呟きは誰にも聞かれる事無く胸の中に落ちていった。

好きなのに・・・彼を信じることが出来ない。