「LOST3」


「からかってなんかいません、最初に言ったでしょう。付き合って欲しいと」
「・・・あれってそう言う意味だったのかい?」
 戸惑うヤンの態度は初心でアッテンボローの興味を駆り立てる。
 今時女だってこんな可愛い反応を返したりしない。
 2歳も先輩の男だというのにその仕草は詐欺だろう。
 アッテンボローは苦笑しながらヤンに囁いた。
「先輩とお付き合いしたい、そう口説いたつもりですけど」
「何故?」
「先輩可愛いから」
「男同士なのに?」
「今時そんな事気にする奴はいませんよ」
 ジャーナリスト志望のアッテンボローはその手の差別意識は持っていない。
 正確に言うと同性愛に対するモラルは低い。
 気に入れば性別は問わない。
 今まで付き合ったのは女ばかりであったが、ヤンとだったら男でもいいかなっとすら考えていた。
「でも、私はこの通りさえないし」
「一目惚れなんです」
 アッテンボローはヤンの耳元で囁く。
「塀の下で、俺を見上げて驚いている先輩に一目惚れしました。俺と付き合ってください」
「でも、私はゲイじゃなくて」
「先輩は同性愛に嫌悪感を持っていますか?」
「・・・いや、別に、それは個人の好みだから」
 アッテンボローはにっこりと笑った。
「俺もです。ホモじゃないけど先輩の事が好きになりました」
「好き?私を?」
 ヤンは真剣に戸惑っている。
「そうですよ、さっきからそう言っているでしょう」
「・・・私にそんな事を言うのは君が始めてだ」
 告白される事に慣れていないヤンはどう対処したらいいのか分からない
 アッテンボローはその隙に付け込んだ。
「今日俺とデートして嫌だった?嫌じゃないでしょう。楽しかったでしょう」
「・・・そうだけど」
「じゃあ俺の事候補に入れてくださいよ」
「候補?」
「ヤン先輩の恋人候補。俺お買い得ですよ、絶対損はさせません」
 軽い口調で断言するとアッテンボローは三度目のキスをした。
 拒まれない事に気を良くしたアッテンボローは少々長めに深いキスを仕掛ける。
 驚いているようだが嫌がっていない。
 これは脈があるな。
 落とすのも時間の問題だ。
 こういう時、アッテンボローの判断は間違いない。
 唇を離した時、ヤンはキスに酔った様な顔を見せた。
 初めての口付けにうっとりしている幼い表情。
「俺、先輩が好きですよ」
 言葉は自然と口から出てきた。
 アッテンボローはヤンを抱きしめて囁いた。
「だから先輩も俺を好きになって」
 ヤンは抵抗しなかった。
 どれ位そうしていただろう。
 塀の前でアッテンボローはヤンを抱きしめてバードキスを繰り返した。
 門限ぎりぎりで、タイムアウトになるまで。