「LOST5」
あれから何度二人で食事をしただろう?
ヤンは不思議だった。
ダスティ アッテンボローという後輩はとても魅力的だ。
鉄灰色の髪を持つハンサムな青年。
会話が上手で飽きさせない。
一緒にいても苦では無い雰囲気。
なによりも悪戯っ子の様に笑う顔に惹かれる。
アッテンボローが一年でも有名な人気者だというのは頷ける。
彼は何時も人に囲まれて楽しそうだ。
そんな人間が何故ヤンに構うのだろう。
自分で言うのもなんだがヤンはやぼったくてさえない男だ。
生まれてこの方異性にも同姓にも特別な告白を受けたことは無い。
母親は幼い時に死別し、父親は仕事人間だったため放置気味で育てられたヤンにとってアッテンボローが向けてくる無条件の好意は驚きの連続だ。
あんなに魅力的なアッテンボローがどうして?
好きなんです。
アッテンボローは言った。
付き合ってください。
そう告白された。
からかわれていると思ったけれど頬が赤くなるのを止められない。
断ってもアッテンボローはヤンを慕ってくる。
目を見れば分かる。
アッテンボローの瞳には愛情が映し出されている。
ヤンの事を好きだと目で、言葉で、全身で表現してくる。
二人で食事している時、どんなに綺麗な女が声をかけてきてもアッテンボローは相手にしなかった。
可愛い子が話しかけてきてもヤンを優先する。
何度か二人で出かけて分かった。
アッテンボローはとてももてる。
知らない女子から声をかけられる事はしょっちゅうある。
逆ナンという言葉知らないヤンであったがアッテンボローの持つ魅力が女を惹き付けている事は分かった。
ヤンがいるのに見向きもせず、アッテンボローに色っぽい視線を送ってくる。
彼はそれを平然と受け流していた。
慣れているのだ。
女の子に騒がれるのも、好意を寄せられるのも当然だと思っている。
だがそれが鼻に突くというのでは無い。
ヤンから見てもアッテンボローは女子に騒がれるだけの魅力を持っている。
そんな彼がヤンに付き合ってくれと言う。
一目惚れだなんて陳腐な事信じられないけれど。
自分はこんなにさえない人間だけど。
三度目に食事をした時にはもうヤンはうっすらと感じていた。
ダスティ アッテンボローというやんちゃで人を惹き付ける後輩に自分も惹かれているのだと。
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