「LOST6」


 終末は月に一度の外出日であった。
 大半の生徒は家へと帰宅する。
 ヤンの様に寄宿舎へ残る生徒はまれだ。
 親のいないヤンは戻る家を持っていない。
 終末はどうするんです?と問いかけるアッテンボローにヤンは笑って答えた。
 ここで本でも読みながら休みを満喫するよ・・・と
 始め家に戻ろうと思っていたアッテンボローだがヤンの返事で帰るのを止めた。
 チャンスだ、アッテンボローは興奮するのを抑え切れなかった。
 何時もは門限を守って帰ってしまう先輩とどうやって一夜を過ごすか?
 それは今のアッテンボローにとって家に帰る事より重要であった。
 人気の無い宿舎、3年で残っているのは他数名。
 その数名も早速夜遊びに繰り出していった。
 きっと朝まで帰ってこないだろう。
 ヤンの部屋がある階には誰も残っていない。
 このチャンスを逃す手は無い。
 アッテンボローはいそいそテイクアウトの夕食を持参してヤンの部屋に乗り込んだ。
 頼まれた本を届けるついでといった顔をして部屋に入り込む。
 一人部屋に男二人というのは窮屈だがこれからその狭さも気にならなくなる。
 始めは他愛も無い会話。
 アッテンボローは酒も用意していた。
 ヤンの好きなブランデー
 顔に似合わずヤンは酒豪であった。
 アッテンボローも親父に鍛えられているので自然と杯がかさむ。
 二人で一本開けた時、アッテンボローは大人しくしていた手を伸ばしてきた。
「どうしたの?アッテンボロー」
 抱き寄せようとする手の意味が分からないのかヤンがきょ
とんとした顔をしている。
 その顔が可愛くて引き寄せるとすかさず唇を重ねた。
 チュッチュッと小さい音を立てて何度も啄ばむと抱きしめているヤンの体温が上がった気がした。
 顔を離すとヤンは真っ赤になっている。
 キスは何度もしたのにまだ慣れない様だ。
 初心な仕草が愛しくてアッテンボローはシャツの下に手を這わした。
「やっアッテンボロー、駄目だよ」
「何でです?キスは許してくれたのに」
「だって、ここは寮で・・・」
「ホテルならいいんですか?」
 意地悪いアッテンボローの言い方にヤンは更に赤くなる。
「でも、誰かくるかもしれないし」
「みんなでかけていますよ。今日は誰も戻ってこない」
 アッテンボローの手腕は巧みであった。
 ラフにシャツを羽織っていただけのヤンは呆気なく前を開かされる。
「駄目だよっこんな事っ」
「なんで?先輩は俺の事嫌いですか?」
 悲しそうに聞いてくる鉄灰色の瞳。
「嫌いじゃないけど、でも」
「嫌いじゃないなら好きですか?」
 俺の事好き?
 何度も聞きながらキスを繰り返す。
 シャツの下で手は動き回っている。
 ヤンの性感帯を探るように丹念に這い回る手。
 キスは優しいのに何時もより少し強引だ。
 何時の間にかヤンは身体の力を抜いてアッテンボローに預けていた。
「俺の事好きなんでしょう、ヤン先輩」
 問いかけは優しい。
 ヤンが小さく頷くとアッテンボローは満面の笑みを浮かべた。
「俺も先輩が好きです、大好きですよ」
 突然キスが深くなった。