「MAGIC12」


 自由惑星同盟が滅びた時には自ら最後の民主主義国家を名乗り出た。
 逃亡した魔術師を御輿に乗せて。
 だが魔術師は死んだ。
 栄光は失われ滅亡した同盟。
 帝国の属領として、辺境の地として忘れ去られていくエルファシル。
 今はもう死人を称えるだけの博物館に過ぎない。
 ロイエンタールは纏わり付く名残を振り払うように盛り場へと向った。
 少しは活気のある通りに出ると帝国軍の兵士が大勢いた。
 盛り場といっても小さなストリートだ。
 制圧軍の兵士がそこに群がるのも当然だろう。
 飲み屋からは歓声が聞こえてくる。
 皮肉なものだ。
 寂れた酒場を盛り上げているのは帝国軍
 かつて魔術師の敵であった兵士達の到来はエルファシルを活気付けている。
 ロイエンタールは苦笑しながら通りを見学するべく歩みを進める。
 すぐさま女達が声をかけてきた。
「ハンサムな軍人さん、遊んでいかない?」
「安くしておくわよ。一杯いかが?」
 群がる女がうっとおしい。
 ロイエンタールは人波から逃れようと路地に入った時、ふと目に付いた。
 男が一人、色あせたポスターの前に立っている。
 それだけなら通り過ぎただろう。
 男は自然な仕草で目の前のポスターに手をかけると破ったのだ。