「元帥閣下のボディガード3」



 ローゼンリッターの連隊長 ワルター フォン シェーンコップはイゼルローン要塞の防御指揮官である。
 つまりこのイゼルローンの防御は全て彼の肩にかかっているのだ。
 彼等にとって一番大切なのは敬愛する元帥閣下の身辺警護。
 とはいってもこれが楽では無い。
 ヤンウェンリーという稀代の英雄は護衛を嫌う。
 特別扱いの護衛を嫌がるためローゼンリッターは元帥に気付かれぬ様に警備しなければならない。
 当然ローゼンリッターは白兵戦のプロ
 ターゲットに気付かれず行動するのはお手の物だ。
 連隊は影日向となりヤンの身辺警護に当たっていた。
 ヤンウェンリーという人物は最重要人物である。
 イゼルローンの市民達にとっては神にも等しい存在。
 そんな彼からサインを貰おうと、写真を撮ろうと幾多のストーカーが押し寄せてくる。
 民間人だけでは無い。
 元帥であるヤンのスキャンダルを狙ってパパラッチも暗躍している。
 そしてハイネセンの政治家も事有る毎にイゼルローンを訪れヤンを手駒にしようと画策している。
 有象無象の人間から元帥を守り通すこと。
 しかも元帥には知られずに。
 それがローゼンリッターの責任、使命なのだ。
 今日も一日大変であった。
 隠し撮りしようとするパパラッチをダースで排除し、いざ司令官に愛の告白をっと特攻しかけてくる一般兵士を遮り元帥の平和を守り通した。
 しかし当の本人はと言うと、ローゼンリッターの苦労も知らずキャゼルヌからの書類に頭を抱えていた。
「ああ、今日は最悪だ。私の平和はどこへ行ってしまったんだ」
 などとのたまいつつもなんとか仕事を追え帰宅したのが18時。
 普通のボディガードなら官舎に送り届けた時点で仕事は終了だ。
 しかしローゼンリッターはプロ中のプロ
 二十四時間彼等の仕事は終わらない。
 ヤンの官舎は本人には気付かれぬ様にして常に3人の隊員が警備についている。
 しかしそれだけでは足りない。
 内部の情報も掴んでおかなければ真の安全は保たれないのだ。
 元帥は知らぬことだが官舎には幾つもの監視カメラが設置されている。
 もちろん監視するためでは無い。
 元帥の護衛に必要だからだ。
 リビング。キッチン、ベットルーム。シャワールーム、トイレ、いたるところにカメラは仕掛けられている。
 つまりこの官舎に死角は無いという事だ。
 そして今晩もローゼンリッターの護衛は続く。
 本人には気付かれぬ様にこっそりと、監視カメラを除き続ける。