「元帥閣下のボディガード4」



「ああぁっあんっ」
 ヤンの自慰が始まった瞬間、カメラをチェックしていたシェーンコップは画面に飛びついた。
 目はらんらんと光り鼻息も荒い。
 それも男としては仕方ないだろう。
 敬愛する閣下の淫らではしたない姿。
 これに興奮しない男はいない。
「ヤン閣下、前にマスターベーションされてからそろそろ一ヶ月、男としては当然の生理現象だな」
 画面に語りかけるシェーンコップに背後から抗議の声がかかった。
「隊長っ興奮するのは勝手ですが見えないので下がってもらえますか」
 背後に控えるのはリンツを筆頭とするローゼンリッター連隊。
「我々にも警備する義務があります。画面を見る権利があります」
 声高に主張するのはブルームハルト。
 ローゼンリッターの成長株である彼はもう前をいきり立たせている。
 無理も無い。
 ブルームハルトは童貞なのだ。
 もっとも他の隊員もすでに前を腫らせている。
 かくいう百戦錬磨のシェーンコップですらスラックスのでっぱりを隠すことは出来ない。
「ああんっあんっ」
 画面からはひっきりなしに可愛い喘ぎ声が聞こえてくる。
「わっ我々は警備担当者として閣下の安全を監視する義務があるのです」
 リンツの言葉にシェーンコップは頷いた。
「悪かったな。つい興奮して独り占めしようとしてしまった。我らはローゼンリッター。帝国亡命諸子として誇り高く汚職や腐敗に屈せず閣下の安全をお守りする義務がある」
「そうです、だから画面の前からどいてください。見えません」
「ああ、そうだな」
 普段の隊員なら連隊長に意見など出来る筈が無い。
 連隊長は隊員の崇拝の対象なのだ。
 しかし今は非常事態。
 目の前の画面が何よりも優先される。
 ぞんざいな言い方をされてもシェーンコップは怒らなかった。
 隊員の気持ちが良く分かるからだ。
 ヤンの自慰は一ヶ月に一度、酷いと半年に一度という時もある。
 そのお宝ショットを見逃しては生涯後悔するだろう。
 隊員の焦りを理解してシェーンコップは椅子に座ると画面に集中した。
「はあぁっあんっもうっ」
 シャワーの飛沫を浴びながら元帥は腰をなまめかしく揺らしている。
 まるで誘っているようだ。
 美しくも妖しいその姿に百戦錬磨のシェーンコップですら漏れそうになる。
 さすがはヤンウェンリー 
 誰にも服従しなかったローゼンリッターを手駒にしただけの事はある。
「あん、ああぁっイっちゃう」
 画面から聞こえてくる甘い吐息
 隊員何人かが背後で野太い吐息を吐くのが聞こえた。
 トイレまで持たず発射してしまったのだろう。
 情けない奴らだ。
 かくいうシェーンコップも限界ぎりぎりまで張り詰めている。
 一瞬シェーンコップは激しい誘惑に襲われた。
 今直ぐ閣下の元へ行き、この張り詰めたトマホークで可愛がってやりたい。
 自慰しかしらない初心な元帥に男の味を教えてやりたい。
「ああぁっ気持ち良い」
 画面の中で揺れる腰、あそこにバズーカを打ち込みたい。
 一瞬シェーンコップは妄想に溺れた。
「ああぁっあんっくぅんっ」
 しかし次の瞬間我に返った。
 画面の中、ヤンは極め美味しそうなミルクを零している。
 警備に集中するあまりシェーンコップも世界に入り込んでいたようだ。
 
視線を落とせば自分のスラックスの中心がうっすらと湿っている。
 男としては少々みっともないかもしれない。
 しかしシェーンコップはそれを恥だと思わなかった。
 敬愛する元帥の魅力がなせる業だからだ。
 バスルームから出てくるヤンを確認した後、シェーンコップは画面から目を離し背後を振り返った。
 皆妙に赤らんだ顔をしている。
 しかも息も荒い。
 そして皆スラックスの前が濡れている。
 お前等の気持ちはよく分かるぞ、シェーンコップは目で語りかけた後、今日の仕事終了を告げた。


 隊員が前を抑えながら退出した後、シェーンコップはまた画面に向かい合った。
 一般の隊員ならば時間と同時に終業することも出来るが彼はローゼンリッター連隊長。
 そしてイゼルローン要塞防御指揮官なのだ。
 二十四時間彼の仕事は終わること無い。 
 だから今日も画面を見ながらそっと囁く。
「自慰の後の閣下の寝顔は格別ですな。目が離せなくなる」
 趣味と実益を兼ねたシェーンコップの天職。
 それは元帥閣下のボディガード・・・と言う名のストーカーであった。