「アニメ アスターテ会戦」


宇宙暦796年
帝国暦487年


アスターテ会戦は帝国の勝利に終わった。
 しかし勝ちすぎはしなかった。
 同盟はヤンウエンリーの奇策により全滅を逃れた。
 

 

 

「キルヒアイス、どう思う?」
「そろそろ潮時では無いでしょうか」
「お前もそう思うか」
「これ以上戦っても双方ともに損害が増すばかりです。戦略的にも何の意味もありません」
「・・・」
「悔しいとお思いですか?」
「そんなことは無いが、もう少し勝ちたかったな」
「2倍の敵に囲まれて2艦隊を全滅させたのです。これ以上お望みになるのはいささか欲が深いというものです」
「分かっている。後日の楽しみがあるということだな、しかしやはりやるではないか、あの男」
「ヤンウエンリー准将」
「あの男に私の名で電文を送ってくれ」
「どのような文章を?」

 ラインハルトは秀麗な笑みを浮かべ、キルヒアイスに指示を出した。

 

 

同盟軍 第二艦隊
アッテンボローが艦長代理を務めるヤンウエンリーに声をかけた。
「帝国軍から電文が入りましたよ」
「電文か、読んでみてくれ」
「いいんですか?じゃあ」


 貴官の勇戦に敬意を表する。
 再戦の日まで壮健なれ


 アッテンボローはそこまで読み上げて眉を潜めた。
「勇戦と評してくれたのか。恐縮するね」
 ヤンの言葉にうなづきながらも変な顔をしている。
「どうしたんだ?アッテンンボロー」
「この電文と一緒に相手方の敵将のプロフィールと顔写真と・・・・薔薇の花束も贈られてきていますが」
 二人は同時に顔を見合わせた。
「・・・・これはどういう意味だと思う?アッテンボロー?」
「多分、ヤン先輩に自分の事を知ってもらいたいと思っているんじゃないでしょうか?敵将は・・・」
「・・・・・何故?」
「・・・・・さあ」
 しばらく沈黙の後、ヤンはぼりぼりと頭を掻いた。
 そんなヤンにアッテンボローが一応確認を取る
「どうしますか?返信しますか?」
「いやいいさ、ほっておいて。先方もそんなものは期待していないんじゃないかな」
 そしてヤンは敵からの電文+お見合いの釣書+薔薇の花束を引き出しにほおりこむと一言
「それより残兵の収容を急いでくれ」
 一時間後にはすっかりこの事を忘れていたのは言うまでもない。

 一時間後、

 ラインハルト フォン ローエングラムは苛立ちをあらわにしていた。
「相手からの返信はまだか?キルヒアイス」
「果報は寝て待てといいますよ、ラインハルト様」
 そう言われてもラインハルトの気は治まらない。
「ちゃんと私の指図通り一番写りの良い写真をつけておいたのだろうな」
「はい、ご指示通り、写真とプロフィール、それと真紅の薔薇も一緒に贈りました」
 もちろん黄色じゃありませんよ
「さすがだ、キルヒアイス」
「恐縮です。ラインハルト様」
 ラインハルトは満足げに頷いたがすぐ眉を潜める。
「ならば、何故ヤンウエンリーは自分の写真を送り返してこないのだ?」
 怒りに震えるラインハルトをキルヒアイスが諭す。
「きっと照れておいでなのでしょう。ラインハルト様の美丈夫な写真に圧倒されているのですよ」
「・・・・そうか、だが私はヤンウエンリーの写真が欲しい」
 まだごねているラインハルト
「大丈夫です。閣下は宇宙を手に入れるお方です。宇宙を手に入れればヤンウエンリーの写真集も生写真もキャラクターグッズも必然的にラインハルト様の物となります」
「・・・そうか、そうだな」
 段々機嫌がよくなるラインハルト
 ここはもう一押し、キルヒアイスが耳元で囁いた。
「もちろんその時にはヤンウエンリー本人もラインハルト様の物となりましょう」
「本当かっキルヒアイス」
「私は嘘は申しません」
 ラインハルトは立ち上がった。
 その秀麗な美貌は興奮で薔薇色に染まり、豪奢な金髪は決意で逆立っている。
 全身からオーラが滲み出ているラインハルト、さすが宇宙の覇者(予定)
「キルヒアイスっ俺は宇宙を手に入れることが出来ると思うかっ」
「ラインハルト様に出来なくて誰に出来ましょうっ」
「キルヒアイスっ俺は宇宙をっヤンウエンリーを手に入れてみせる」
「ご立派なお覚悟です、ラインハルト様っ」
 横でぱちぱち拍手するキルヒアイス。


 そんな二人を見ながら他の幕僚は肩を落としていた。
「・・・・ローエングラム候は確かに戦略の天才だが」
「どうもあのテンションには付いていけない」
 宇宙の覇者(予定)ラインハルト
 彼につきあえるのは幼馴染のキルヒアイスだけである。

                続く